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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 強い者イジメ
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第九節 性の目覚め

1学期、2学期と、月は矢の様に過ぎて――、


イブサンの住む地方は、ちらほらと雪の舞う冬を迎えた。相変わらず、定期試験はしんどいが、充実感もあった。Iがいつもの様に話し掛けてきた。


「さっすが天才! 今回もトップだったね。どうやったらそんなに勉強ができるの?」


来た――! 


イブサンは少し視線を逸らしながら、言った。


「頑張って一杯勉強したら、皆だっていい点とれるよ」


「それができないんよー、困ったコトに」


「!」


理想と現実は嚙み合わない様で――、




パソコンを動かす授業が始まった。


ブラウン管の分厚いデスクトップパソコンで、現在の様な薄型が信じられないほどスペックが低いモノだった。


「因みにこのパソコンは職員室と繋がってるから、いかがわしいサイト見に行ったらばれっからな?」


教師は生徒全員にくぎを刺していた。


しかし――、


カタカタカタカタと、キーボードを叩く者が……。K君だった。オープンスケベだったK君が取った行動は――? 




「イブサン、ちょっと……」




「?」


K君はイブサンの肩をちょいちょいと叩き、自分のパソコンの方へ連れて行った。K君が見せた、そのディスプレイには――、○○や○○○がおっぴろげで映っていた。


「! ! ! !?」


イブサンは体の一部が大きくなりそうになった。


(け……K君! コレはまずいんじゃあ……?)


(大丈夫だよ。この人達は仕事でやってるんだ)


ひそひそと周りに聞こえない様に、イブサンとK君は会話を交わした。


「! ……」


教師がこちらを向き、歩いてきた。


(先生が……! 来た来た来た来た!!)




(大丈夫)




K君はそう言うと、右上の×を颯爽とクリックして全てを消してのけた。


(!?)


K君は自分が思っているよりも、ずっとスゴイ人なのかも知れない、そうイブサンは思った。


(これだけじゃないよ?)


(?)


はてな顔のイブサンをよそにK君はマウスを動かす。


(右上の……ちょっと下! 履歴、これを消しとけば完璧さ!)


(よ……、用意周到だね……)


イブサンは只々、たじろぐばかりだった。そんな授業があった後の、放課後――、


自宅にて。


イブサンの自宅にも、パソコンはある。ネット環境もある。


「……!」


気付けばパソコンの電源を入れていた。ネットも、古くさいジージーという音が鳴った後、漸く繋がった。


「……」


イブサンは、検索エンジンに、『巨〇』と、打ち込みそこに広がる光景を、目に焼き付けていた。


「も……、モザイクが無い……」




『これを皆に教えてあげよう!』




イブサンは、善意(?)で、ノー〇ザサイトをクラスの男子に教えてあげるコトとした。


翌日――、まずは、


「K君! おはよう! 昨日、凄いサイト見つけちゃってさ」


「F君! おはよう! ……」


「T君! ……」


「A……」


これが、迂闊だった。無償で、情報を、男のロマンを皆に知らせて回ったのだが、その恩を仇で返す者も居て――。


「おーっす! Hちゃん、イブサンがさー」


K君がある日、イブサンに話し掛けてきた。


「イブサン、この前言ってたサイト、凄かったよ。何て検索したんだい?」




「きょ……、『巨〇』」




「ぶっは!」


「フフッ!」


「僕も何か見つけたら教えるよ。じゃ」


イブサンはK君に手を振りながら思うのであった。


(こればかりは、男にしか分からないよなぁ。




“皆に知らせて良かった”)


“皆に知らせるんじゃなかった”




この数週間後、イブサンは考えを180度一転させるコトとなる。アダルトサイトを見たコトを、女子に口添えする男子が現れたのだ。


「ざわっ」


ある日の朝、学校へ行くとクラスメイトの女子達がイブサンを白い目で見てくるのが分かった。


「?」


特に気にもせずに自分の椅子に座ったイブサンだったが、K君の言葉で心境が一転した。




「イブサン、AがHちゃんに、アダルトサイトを見てたコト、話したみたい」





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