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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 強い者イジメ
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第七節 中学生になって

一年くらい経った、四月――。


イブサンは部活動の選択欄に野球部と、書くコトになった。


理由は、地元の中学が、卓球部か野球部しかなかったからである。そして、卓球は得意ではなかったし、野球を始めたら、有名人の様に成れるかもと、いうゆとり世代特有の根拠のない自信があったからである。


早速、体験入部をしに、グラウンドへ向かった。


しかし――、


他の一年生で、少年野球をしていたAはおろか、U君すらグラウンドには居なかった。何故か――? 春に大会があり、邪魔してはいけないと、他の一年生達は遠慮していたからである。後でそれを知ったイブサンは恥ずかしい思いをするコトとなった。しかし野球部の先輩方は、イブサンを温かく迎え入れてくれた。何故か、バッティング練習に参加させてもらえたのだ。マンガの知識しか野球を語れないイブサンは右打席に立った。


初球を――、


「キン!」


レフトへ――。


油断しきっていたレフトは頭を越されていった。おおおおおと、イブサンは拍手を浴びた。


(頑張れば、プロとかになれるのかも……)


イブサンの中の根拠のない自信は膨れ上がった。


しかしその後――、


キャッチボール、ノックを受けているうちに、


(アレ……?)


体が上手く動かないコトに気付く。そして――、




「ゴシャァァアア」




イブサンは鼻に打球(軟球)を食らった。鼻血がだらだらと流れ出した。


(僕、野球向いてないかも……)


イブサンは人生初の野球を、開始30分で諦めた。腕力には自信があった。小学校三年生から剣道を始めたイブサンは、片手で素振りを何度も繰り返し、力こぶが膨らんでいた。我慢強さも自信があった。剣道で脱水症状になるまで稽古を続け、小手を打たれ続けて剥離骨折しても、ずる休みなどしなかった。


しかし――、


縦横無尽に跳ねる球を、捕球し切れない。暴投をしてしまう。おまけに、鼻に打球を――。


夜中に目が開くサルの人形――、


それを実家で見ても決してビビらない精神だけは立派で、打球にビビらずにキッチリと鼻で受け止めた。


(内野は絶対無理!!)


自身の運動神経の悪さに、ほとほとウンザリするのだった。




さて、中学生になったというコトは、テストが小学生の時よりも難しくなってしまうと、いう宿命がある。定期試験が1学期に二回、2学期に二回、3学期に一回あるというのは、皆さん周知の事実だろう。


イブサンは、五月の1学期中間試験の試験期間前に、短い休憩時間、バスケットをして遊んでいた。桜木花〇の真似をして、隅っこでドリブルの練習をしていたのだった。


そこへ、Hの弟が、スティールを仕掛けてきた。イブサンは、取られたと、思い右手がこわばった。しかし、ボールはイブサンの右手の下にあり――、


「ガッ!!」


イブサンは靭帯損傷クラスの突き指をした。病院に行き、社長出勤の外科医に診てもらうと、


「切開しないと、このレントゲン写真じゃあ分からないですねぇ」


曖昧に外科医は無責任なコトを言ってきた。その頃の医療技術では、仕方なかったのだろうか? イブサンの父は、流石に切らせられないですと、切開を拒んだ。そして、イブサンの利き手は包帯をグルグル巻いた状態で、試験期間を迎えた。試験期間、イブサンは左腕で勉強を開始した。


1時間半、勉強して15分休憩、また1時間半、勉強して15分休憩を入れるの繰り返しだった。好きだったゲームは試験期間中、一切しなかった。テレビもニュース以外見ない様にしていた。漫画だけ、読んでいいコトにしたのは、甘えだろうか? さて、勉強1時間半といっても、正確には机に向かっていると、いう状態だった。問題集を解き、時間が1時間半流れなければ苦行の様に机に向かって意味不明な時間を過ごしていた。休憩した方が、良いのでは? 更にストレスになったのは、やはり左腕での勉強だ。慣れない手ではひらがなを書くのも精一杯だった。

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