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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 強い者イジメ
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第四節 小学校との別れと出会い

姉と口喧嘩し、歯も磨かず月日は矢の様に過ぎていき――、


イブサン小学五年生の春。


「この小学校は休校するコトになりました」




「は!?」


「え!」


「うぇ!?」




校長の一声で体育館は静まり返った。小三から小五まで、恐らく人生で一番幸せだったイブサンだったが、ここに来て重大な事態が迫ってきた。


(学校、編入? しないといけないの……?)


「休校と言っても、この町の子達が増えたら、またこの学校は再開します。安心してください」


(『安心して』って、あと一年の僕らは、最後の小学校時代を他の学校で過ごすコトになるんだろうが……)


もう一人の同級生と、イブサンは顔を合わせ、しかめっ面になった。


その年に、小学校の窓に絵の具で文字を書き、小学校の思い出を綴った。


『思い出いっぱい』


『ありがとう』


言葉はそう書くコトとし、あとは絵を描いた。さて、この小学校では過疎の進んだ地域の為、『1・2年学級』『3・4年学級』『5・6年学級』という3学年で授業をおこなっていた。算数以外は、それぞれの学級で同じ内容の授業をおこなっていたのだ。二年に一度、仲の良かった一つ上の歳の子と、イブサンは同じ学級になれた。同じ学級で勉強を教えてもらったり、同じ教室で暮らしていけた為、同じ学級の年は、もっと仲良くなれた。『5・6年学級』は、修学旅行にも行けたが、運の悪いコトにイブサンの修学旅行の年は、六年生の時だった為一つ上の子とは行けなかった。イブサンはそれを酷く残念がっていたが、小学校が休校する年の、最後の年に同じ学級になれたコトを何かの縁だと思い、少しだけ嬉しかった。


小学生しか笑わないくらいのギャグを言い合ったり、体育館で鬼ごっこをしたり――。その小学校最後の年は、ありきたりで特別な日々だった。




――、


三月になり、一つ上の子は卒業を迎えた。在校生全員でやる、例のアレ。


「ありがとうございました」




『ありがとうございました!!』




送辞を合唱の様に言い、一つ上の子を含めた六年生達を送り出した。


(×××君も、中学生か……。×××君の一つ上の人達も、中学校に上がってからめっきり遊んだりしなくなったな。×××君とも遊べなくなるのかな……。僕が中学生になる1年後、学校で関われたらいいな……)


イブサンは、僅かで純粋無垢な希望を抱き、その日を終えた。




四月――、


イブサンは通い慣れた小学校から、別の小学校へと転入した。同級生は2人から13人になった。


「同級生の……女子?」


先述したA子ちゃん。彼女は『1・2年学級』の時に一緒だった、歳は一つ下の女子だった。その為、正真正銘の同級生の女子は、イブサンの中では初めての存在だった。


(そもそも、13人なんて、名前すぐに覚えられるのか……?)


一抹の不安をもって、新しい小学校に、イブサンは登校していた。


教室に着くと、Iが話し掛けてきた。


「おはよー。君、何が趣味なの?」


「あの! ……えっと……何ちゃん?」


「えー、名前覚えてくれてないのー? ショックー」


「あっ……、ゴメン……」


イブサンはこんな調子だったが、元・たった一人の同級生は違った。




「一年生から六年生まで、全員顔と名前覚えた」




「!?」


イブサンは雷に打たれた様な衝撃を受けた。




勉強苦手なハズなのに……、


そんなに覚えて、意味あるの……? 


どうやってこの人数を……? 




疑問は尽きなかったが、『勉強ができるだけのヤツよりも、人の名前を覚えられるヤツの方が、社会に認められる』と、のちに思い知らされるコトになる、イブサンだった。




新しい小学校は、イブサンにとって劣悪な環境だった。生徒同士で口喧嘩が絶えない。イジメがある。言葉遣いが悪いヤツばかり。何でこんなにガキが多いのか? 精神年齢が高めのイブサンはいつも疑問に感じていた。


特に嫌気がしていたのが、女子四人だ。


四人で集まって話をしている。すると、そのうちの一人がトイレに行く。そうなればその一人の陰口を言う。その一人がトイレから帰ってくると、『やっほー』とか『おかえりー』とか言った後、別の陰口を言う。また、別の一人がトイレに行く。そうなればその別の一人の陰口を言う。その別の一人がトイレから帰ってくると、『やっほー』とか『おかえりー』とか言った後、別の陰口を言う。そんな陰湿な陰口を言う習慣が、小学校の時点で身に付いているのだ。イブサンは毎日、嫌気がさしていた。

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