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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第三章 逃げ
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第十七節 二日目以降

精神病棟二日目――、イブサンは診察を受ける事となる。


「調子はどうですか?」


主治医の先生が話し掛けてくる。


「……普通です」


「そうですか。学校、行きたくなりませんか?」


「! …………」


イブサンは考える。


(そうだ。学校……監視されるかも知れないけど、ここよりはマシかも知れない。ここは僕が来るべき場所じゃあないのでは……?)


「学校に行きたいです」


「良かった」


笑みを見せる主治医。続けて言う。


「どんなことが嫌で、ここに入院になったのかな?」


「頭で考えた事が読み取られる何かを使われて、監視されました……」


顔をしかめる主治医。


「妄想、幻覚と……」


その小声を聞き逃さなかったイブサンは必死になった。


(本当なんです、本当にそんなモノが存在するんです……なんて、言えない……)


「ご飯をしっかり食べて、お薬を飲んで、ぐっすり眠りましょうね」


診察は終わった。


「…………」


イブサンは当然納得いかなかった。しかし、




(どうあがいても分かってもらえない)




そんな言葉が脳裏をよぎるのだった。




その日は、父が面会に来た。お菓子を少々と、ゲームを持ってきてくれた。これで、口が寂しい時や、暇な時間をやり過ごせる。


「ありがとう」


「大丈夫か?」


「――――」


とりとめのない話を交わして、面会は終わった。


実はゲームっ子のイブサンは、まだクリアしていなかったfather1+2を心おきなく楽しんだ。


(ここ難しいな、攻略本あればなぁー)


ゲームをしていればいいだけになったので驚くほど時間は早く過ぎ去って行った。




入院して3日目か4日目には学校の担任と、保健室の先生が面会に来た。


「こんにちは」


「元気でしょうったか?」


挨拶を交わす。色々な話をしただろうが、イブサンはその内容をあまり覚えていない。唯一覚えているのは、こんなところに一人で生活するなんてすごい、と保健室の先生が言った事。それと担任も、ようこんなところじゃワシは生活できんぞ、といった感じの話をしていた事くらいだ。こんなところ、ねぇ。


「じゃあ、帰るわ。元気にな」


「はい、さようなら」


面会は終わった。




一つ、困った事がある。お菓子を少々持っていたのを見かけた患者さんが居た。その患者さんは、何かくれ、とイブサンにせがんできた。今回だけですよとグミをあげた。すると、その日のうちにまた、何かくれ、とせがんでくる。流石にしつこいのでナースステーションに言いに行った。看護師さんはすぐに対応してくれた。そして、


「イブサン君は優しいから……。でも、もうお菓子あげたらいけませんよ」


と、一言。優しい? イブサンは自分の事を優しいと思ったことは無い。普通だ。至って普通の性格をしていると思う。だから、“何か”を使われた時は相手を攻撃したし、自分から折れることは無かった。




でも、それで良かったのだろうか?




“何か”の使用は、同級生が始めた事では無く、同級生の保護者が始めた事だ。善悪の判断がつかない中学生は、大人に言われるがまま、監視を始めたのかも知れない。同級生も、保護者の被害者では……? イブサンは分からなくなった。自分が、当然と思ってした事を少しだけ後悔した。


(MとK君に……いつか謝ろうか……? ……いや、逆効果か)


イブサンは少し考えてから、床に就いた。

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