第十五節 落書き
夏休みが終わり、数日が経過した。イブサンが教室を出る度に、相変わらず“何か”を使用した彼への監視が行われている。
そんな中、夏休み中にから始まった異変が、イブサンを襲っていた。頭痛、体からの異臭――。最近では目の付近も鈍痛がするようになってきた。
おかしい。
イブサンは徐にトイレに行った。その間も監視されるだろうと感じながら――。
鏡を見てみる。そこには明らかに生気の無い自分の顔が映っていた。
(おいおい、これじゃあ百歩譲って、犯罪者扱いされても無理はないかもな)
次にイブサンは、自分の目をよく見た。光を失っている。しかし、今知りたいのはそんな情報ではない。
目の痛みだ。
目の奥から鈍痛がして止まないのでイブサンは目蓋を引っ張って、目の奥を見ることとした。下の目蓋をグッと引っ張った。
! ! !! !?
そこには多量の目やに……いや、膿の様なモノが存在していた。
(“何か”の影響か? 変な電波でも浴びて、体がおかしくなっているのか?)
イブサンは疑問を浮かべながらも膿の様なモノを指で掻き出した。ずよっとした調子で出てくるそれは、明らかに自身の体調の異変を現していた。無限に出てくるのではないかと思うくらい、それは幾つも幾つも出て来た。
数分間かかっただろうか? その膿の様なものは、重さも体積も、丁度一円玉4枚分の量くらい出て来た。
おかしい。
それが出て来た原因が、“何か”によるものなのか、ストレスによるものなのか分からない。しかし、今の環境が続く事でイブサンの体は確実に異常を来たしていた。
――、
“あの日”から1カ月経つ。イブサンの精神は限界を迎えていた。
家に帰ってからも何者かに監視されていると感じ、心の休まる暇が無い。夜、眠れない日々が続く。
また、明日が来る――。
眠ってしまえば、もう地獄は終わると考えていても、また、明日が来て、朝日は昇ってしまう。
(終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ。終われ!)
――、
イブサンは夜、眠ろうと思って眠るのではなく、午前3時頃、体力の限界を感じ、ブラックアウトするように眠りについていた。
朝――、
学校へ行く為、イブサンは6時半頃起床する。睡眠時間が極めて少ない日々が続く。
鏡を見てみる。鏡に映る“それ”は、人でも殺しそうな顔をしていた。
「フフッ。あはははは!」
精神が限界を超えると、人は笑いだすらしい。おっと、学校へ行く時間になった。
また、“何か”による監視を受ける学校へと足を進めるしかない。
「また来たよ、アイツ」
「あーあ、早く死なないかなー」
教室には心無い言葉を吐く女子達が――。
(…………死にたい)
そう切に思うイブサンは、机の上に鉛筆で何か文字を書き始めた。
『死にたい』
『ピストルを用意しろ』
『霊媒師を呼べ』
といった文字を書き連ねていった。
その文字は、放課後教員達により、発見された。




