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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 強い者イジメ
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第十節 人生最初の地獄

「!? ――」




『終わった……』




イブサンは瞬時にそう悟った。


(Hは噂と陰口が大好きで、常に人をイジメていなければ気が済まない、イジメ体質――。僕は今日からアイツにイジメられる……)


頭の中が真っ白になっていた頃、追い打ちをかけるようにMがこちらを見ていた。




「……。サイテー」




「!」


普通の女子に言われるならまだしも、その辺の芸能人よりも顔立ちが整ったMから掛けられた言葉には破壊力があった。


(最低……さいてい……サイテー……確かに……、な)


それまでは真面目に勉強し、成績が常にトップの優等生。


しかし今では一転してアダルトサイトを閲覧するヘンタイ。


イブサンの評価は正に天から地に落ちたと、言った具合だった。




「イブサン!」




「!」


気付けば、K君が真剣な表情をしていた。


「Aはあんなだけど、『僕もアダルトサイトを見た』ってHちゃんの前で言っておいたよ」


「!」


イブサンは感動した。


涙が溢れ出すかと思った。


こんなにも友情を大切にする人が、この世に居たんだ……。女子との会話のネタが欲しいから友達を売るクズ(しかも恐らくアダルトサイトも見てる)よりも、自らの立場を失おうとも友情を優先するこのK君に一生ついて行こう……。イブサンはそう、心から思った。


「K君! ……それで、Hは……何て?」


「特に何も。イブサンも気にしないコトだよ。じゃ」


K君はそう言うと、軽く手を振り自分の席に歩いて行った。


(気にしないコト……そうか……)


イブサンは少しだけ目の前の靄が晴れた気がした。


しかし――、


翌日以降、イブサンは人生最初の地獄を見るコトとなる。




「あっ、エロサイトの子だ」


「うわっ、変態が登校してきたよ」




アダルトサイトを見たという噂話が、Hの手(口?)によって瞬く間に広がっていき、学校中に知れ渡った。イブサンは日が経つにつれて元気を失っていった。


(死にたい……。若しくは、どこか遠くへ逃げたい……)


顔色は暗く澱んでいった。




「今日も居るよ、エロサイト小僧」


「早く死ねば良いのにねー」




教室にはHをはじめとした、陰口女子集団が居り、イブサンを罵倒していた。


「……」


イブサンはある日、Aの元へと歩いて行った。


「!」


K君は、危機を感じ、イブサンの傍に行き、肩を掴んだ。


「イブサン!」


「大丈夫、だから……」


「!」


イブサンは薄ら笑いを浮かべながら、K君に答えていた。K君の制止を振り切り、イブサンはAの元に辿り着いた。


「A君……」


「な……、何?」




「A君がバラした件は僕、恨んでないから」




「!?」


「!」


その発言にAはおろか、K君でさえ虚を突かれていた。




『喧嘩になるのでは……!?』




K君の心配は杞憂に終わった。




――、


『人が慣れる』という性質を持つのは、恐ろしいコトで――。春、イブサンは平然と中学生に通っていた。


(あの冬、僕は地獄に落ちた。もうあれ以上の試練は無いだろう。何でも来い!)


イブサンは強さを手に入れていた。と、同時に……


「あー、人の不幸でしか笑えなくなったわー」


中学二年の春、教室でそう呟くイブサン。心が汚れてしまっていた。




“あれ以上の試練は無いだろう”




イブサンはそう確信していたが、これから様々な年代、時代において、彼は地獄と言う地獄に遭遇するコトとなる。



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