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イブサン  作者: 時田総司(いぶさん)
第一章 幼少期~小学低学年まで
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第一節 生い立ち

イブサン――。




彼は、キモいから、死んだ。




『イブサン』――。


彼は、カタカナだから、キモい。


『いぶさん』と、平仮名なら、少々可愛げがあっただろうに――。




イブサン――、


彼は、『おはよう』は言っても、『サヨナラ』は言わなかった。『頂きます』は言っても、『ごちそうさまでした』は言わなかった。


始めよければ終わりよしと、いうコトだろうか? 若しくは、『終わり悪くてすべて悪い』のだろうか?


今回は彼、イブサンの生前を実話と記録を基に、彼の意志を受け継いだ、『いぶさん』が紐解いていこう。



イブサン――。




彼は、1月生まれと、戸籍謄本には書かれてある。


ところが、これが本当のコトかは、今や誰も知らない。


彼のひいばあちゃんに当たる、マサ子(仮名)。彼女がイブサンの生誕後、こう言い、戸籍謄本に1月生まれと、名が刻まれるコトとなる。


「1でも2でも近いからどうせ同じじゃろう(広島弁)! どうせなら1! 1等賞!! 1番が良い!!!!」


かつてチャカを片手に戦後の広島を渡り歩いていた、マサ子。一家の大黒柱だった彼女はイブサンの戸籍謄本登録の決定権を遺憾なく発揮していた。そして、二度目になるが、彼は、1月生まれと、戸籍謄本には書かれるコトとなった。生後、父の実家に行く機会があった。マサ子は、溢れんばかりの愛情をもってイブサンの口周りを舐め回した。よっぽど、長男が生まれると喜ぶ、昔の田舎の様な家庭環境だったのだろう。そしてイブサンは死ぬまでヘルペスが唇にポツポツとあり、治ることは無かった。


生後1年内――、


彼はネグレクトと言った虐待を受ける。


実家から離れた社宅――、父は三交代のハードな勤務をしており、母はイブサンの姉の腹を蹴るなどの虐待をおこない、姉弟家庭の弟、イブサンにはホコリまみれの部屋に放置するといった虐待をおこなっていた。姉は家事をしない母の代わりに、ぐしゃぐしゃのおにぎりを、離乳食が食べられるか食べられないかくらいのイブサンに食べさせようとしていた。ホコリを食べてしまい、小児喘息になりぐったりとしていたイブサンを目にした父は、直ぐに彼を病院に連れて行った。




『父さんが居なければ僕は死んでいた。父さんは命の恩人だ』




そう小学1年生のころから胸に刻んで生きていたイブサンだったが、よく考えると疑問点が上がる。




父はせわしく仕事から帰り、直ぐに食事を済まし寝る生活をしていたのか?


イブサンの様子を見てあげなかったのか?




ぐったりするまで放っておいたのか?




イブサンの父――、


彼の異常性は、この物語の半ばより少し前くらいには書き綴るコトになるだろう。




病院に連れて行かれたイブサンは、大きなビニール袋の中に入ったベッドで生活する様になった。袋の中は特殊な空気が流れていた。喘息で、傷んだ気管支を考えての処置であろう。


イブサンは幼年期の3分の1を病院で過ごしており、通うはずだった幼稚園に、満足に通えなかった。幼稚園の習い事の様なモノで、ノリとハサミで作る本があった。その本も、殆どが入院生活で習えなかったため、『はなさかじいさん』の腕のノリしろの部分がピンク色で腕ナシ。


(腕がもげたように見える)


イブサンは、自身の本が見るに堪えないモノになってしまい、泣くに泣けなかった。




さて、イブサンは後述する様に、何か頭の上の方から声が聞こえると、いう特殊体質だった。


それがタダの病気なのか、霊感などがあってのモノか、誰もがそれを証明できない――。




幼稚園児にもイジメがある。


イブサンの通っていた幼稚園で、園児の一人が滑り台に登っていた。すると、後ろから登ってきた。後ろから登ってきた園児は、何と先に登っていた園児の下の制服をパンツごと下げてしまった。下半身があらわになる園児。周りはケタケタとその園児を指さし、笑っていた。


イブサンは――、


下半身あらわになる園児の方を見つめた。


「――!」


園児は、笑っていた。


イブサンも一緒になって笑った。




その時――、




『本当にそれでいいの?』




頭の上から声が聞こえた。


『本当に、それで――』


イブサンは下を向き、俯いてしまった。

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