強者ムーブもだんだん板についてきたな?
評価・ブックマークありがとうございます!
あっさり進んで行きますよ。
腕が二本千切られ、腹に穴を空けられ、目の前には私より遥かに大きなカマキリが一匹。
まさに必死。頭を過るのは『絶望』の二文字。
それでも心が折れないのは、偏にドラゴンへの恨みがあるから。
既にHPは少なく、『自動回復』があってなお怪我によってHPが徐々に減っている。
一歩間違えれば即死。
だから、考える。
いかにしてこの場を乗り切るか。
ただひたすらに、『生』を求めて頭を使う。
とりあえず、カマキリは動いてる生物しか獲物と認識しないはず。
このままじっとしていれば、そのうちカマキリが去ってくれるかもしれない。
懸念があるとしたら、カマキリが蜘蛛の巣を切り裂いたこと。
あの頑丈な糸を切り裂くのも脅威だけど、そこじゃない。
カマキリは蜘蛛の巣を煩わしいものと認識していたように感じた。
まさか、蜘蛛の巣を食べるために襲ったわけでは無いだろう。
だとしたら、倒れてる私を見て獲物だと認識する可能性も……
ゆっくりとした動作で降ろされたカマキリの鎌が、私の胸に食い込む。
ちょっ、女の子の胸に触れるなんてセクハラよ!
もう、生まれ変わってからモテちゃって辛……っ!
グッと力を入れて振り下ろされたカマキリの鎌が地面を穿つ。
そこには既に私の姿は無い。
『飛翔』によって急発進し、一瞬で後ろを取った。
カマキリのおかげで翅は解放されたが、糸が絡みついてまだ重い。
考え抜いた結果、私が選んだのは戦うこと。
ドラゴンに襲われて、私は何もできなかった。
意識を失って、ただ身を隠して震えていただけだ。
もし今、また逃げたら、この繰り返しになってしまう。
何としても、それを変えたい。
真後ろからなら……ヒィッ!
顔を上に曲げて後ろを向いたカマキリと目が合った。
ホラーかよ!エク○シストかよ!
緊急回避!
真後ろに振られた鎌を回避するものの、機動力の低下した翅では避けきれず、胸部には更なる裂傷が刻まれる。
痛っ……対空戦力強すぎ……。
というか、今の私にできることはあんまりないんだよね。
荒れ狂うように振るわれる鎌を私はひたすらに逃げた。
そこらの石や砂、果ては千切られた自分の腕でさえ投げつけ、少しでも時間を稼ぐ。
その間に距離を空け、また追い詰められていく。その繰り返し。
ついに壁に背をぶつけた私は、もし表情があるのなら、悔恨に歪んだ表情になっていたことだろう。
壁を背にした私に、カマキリがじりじりと近寄る。
追いつめたと思った?
私が弱った獲物に見えた?
いや、弱ってるのは事実だけどね……
ほら、仕留められると思ったの?大振りになったよ。
残りのMPのほとんどをつぎ込んだ『超音波』。
触覚で空気の流れを感じて周りを把握するカマキリにとっては、『超音波』によって放たれた衝撃波は、突然出現した壁に見えたことだろう。
処理しきれない事象は簡単に混乱を起こす。
特に、自分が優位だと高を括っていた時には。
順番があるんだから、少し待っていてね、カマキリさん。
混乱するカマキリの横を抜け、その勢いのままに毒針を倒れている蜘蛛に突き刺す。
高STRに勢いが合わさり、頭を打ち砕いて深々と突き刺さった針は、蜘蛛の命を奪った。
『魔蜂女王のレベルが3に上がりました』
『スキル:蜘蛛糸生成Lv3を獲得しました』
『スキル:操糸Lv3を獲得しました』
『スキル:隠密Lv1を獲得しました』
『スキル:遠見Lv1を獲得しました』
頭の中に次々と天の声が響くが、今はどうでもいい。
カマキリが来る前に、この蜘蛛を捕食する。
ドロッとした液体が噴き出る蜘蛛の身体に構わず、一心不乱に齧り付く。
生きるために。ただ、その一心で。
ゴリゴリと外骨格を噛み砕き、硬い筋繊維を咀嚼し、体液を啜る。
《暴食》と《過食》のおかげか、大きいはずの蜘蛛の身体がみるみる減っていく。
っと、もうカマキリが来たか。
流石に食べきれなかった。
でも、多分もう心配ない。
《過食》の効果で随分HPは回復した。
それに、八つの目がカマキリの動きを完全にと捉えている。
《禁忌の暴食》―――捕食した相手の身体的能力を得る―――
八つの目でカマキリを捉えると、カマキリは硬直したように動きを止める。
あれ、どうしたの?
さっきみたいに襲ってこないの?
ほら、私はもうこんなにボロボロなんだから、簡単に死んじゃうよ。
くふふ、なんて……カマキリさんの気持ち、よく分かるよ。
怖いんでしょ?私が。
ドラゴンに恐怖した私だから、圧倒的な強さの相手と対峙する恐怖はよく分かる。
《暴食》と《強欲》によるステータスの二重取りで、一気に跳ね上がったもんね。
でも、それで行動を止めてしまったら、それは『死』だよ。
勝てるならば戦うがいい。勝てぬなら一目散に逃げればいい。
どちらもしないあなたは、ただのエサ。
刹那。カマキリの背後を取った私の毒針が、カマキリさんの背中を貫く。
ほら、こうなる。
生きたいと思うのならば、考えることを止めちゃダメだ。
私は強くそう思う。
カマキリさんはどうかな?今の私に鎌を向けるのも、それが最善だと判断した?
背中に鎌を回して私を引き剥がそうとする鎌を《蜘蛛糸生成》と《操糸》で縛り上げ、完全に固定する。
成体になって初めて死ぬかと思ったよ。
蜘蛛もカマキリさんも強かった。
でも、私は生き残った。考えて考えて、意地汚く『生』にすがった結果。
カマキリさんも全部食べるから安心してね。
じゃあ、さようなら。
私の牙がカマキリの首を断ち、ボトリと音を立てて地面に落下した。
『魔蜂女王のレベルが5に上がりました』
『スキル:斬撃波Lv3を獲得しました』
『スキル:空間把握Lv1を獲得しました』
『スキル:威圧Lv1を獲得しました』
『エネルギーが一定値に到達しました。これより進化を開始します』
んんっ。なんか物凄い空腹が襲ってきた。
食べ物……カマキリさんと蜘蛛を食べてしまおう。
とにかく何か食べないと死んでしまいそうな空腹感。
残さず食べるって約束だからね、いただきます。
自分よりも体が大きい魔物を二匹もペロリと完食。
すると、前に一度見たことのある、淡く輝く白い靄のようなものが溢れだし、身体を覆っていく。
そして、強烈な眠気に襲われた。
まさか、進化?
もう成体なのに?
まぁ、いいや。
どちらにせよ、この眠気には抗えない……。
強烈な眠気に誘われるがままに、意識を闇に落とした。
昨日は諸事情により更新できなかったので、朝から投下。
昨日の分も含めて今日のうちに何話か更新していきますよー