悪魔アガレス(別視点回)
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かなり間が空いてしまい、すみません(_ _)
「なるほど、女王になるだけでこれほど……」
戦いの最中、悪魔の衛兵をノイン達が次々と撃破していく様子を眺め、カローネは感心したように呟いた。
その声には素直な驚きの色が混ざっており、予想以上に彼女達が強くなったことを示していた。
「さて、ご自慢の軍勢は使えませんが、お次は?」
「な、何なのだ貴様らはっ! 悪魔の力を得た兵士達なのだぞっ!」
地面を転がりながらそう声を上げるのは、第一王子付き補佐官のエルドリスであった。
彼こそがこの騒動の元凶、悪魔『アガレス』と取引をし、多くの魂と引き換えに力を得た張本人である。
王国内の内戦を止められないと悟った彼は、国王を殺した上で悪魔の力を解放することで一気に『共存派』を排除し、自身にとって都合のいい国を作り上げることを画策した。
しかしそれは、5体の新たな女王蜂の誕生により失敗に終わり、ついにはこうしてカローネに追い詰められることとなったのだ。
「貴方は馬鹿でしょう。悪魔の力を得た者は、その再生能力こそが一番の武器。それを削ってまで破壊力を得たところで、こうなることは目に見えていたでしょう」
冷めた目で背後に視線を送るカローネ。
その視線の先には、すでに絶命した衛兵の亡骸が山のように積み重なっていた。
当然、全てカローネが仕留めたものだ。
「いくら力を増そうと、私や彼女達『女王蜂』には届かなかった……ということですね」
「くそっ、くそっ!」
追い詰められ、悪態をつくことしかできないエルドリスは、起き上がると同時にカローネに魔力砲を放つ。悪魔由来の黒紫色の魔力を含むそれは、地面を削りながらカローネに向け一直線に迫る。
が、何でもないと言わんばかりに涼しい顔のカローネは、その魔力砲を無造作に手のひらで受け、そのまま握りつぶした。
「貴方、それほど魔法が得意ではないのでしょう? 元々が弱ければ、たとえ悪魔の力を得たとしても、この程度です」
「馬鹿なっ……! 悪魔の力だぞっ、私はっ、人間を遥かに超えた力を手に入れたのだぞっ!」
「えぇ、確かに人間の力を遥かに超えているでしょう。しかし、それだけの力の代償は相当なもの。あなたはいったいどうするつもりで?」
「ふんっ、そんなもの、この国のどこにでもあるだろう!」
「……つまり、コンサーヴィア王国の国民を悪魔の供物にする、ということですか?」
「あぁそうだ! そうやってこの力を得てきた。私は世界を支配する力を得たというのに……それを貴様はっ……!」
「……だそうですよ? コンサーヴィアの皆さん」
カローネが徐に腕を振り上げると、カローネを中心に十mほど離れた周囲の空間がぐにゃりと曲がり、取り囲むコンサーヴィア王国の民の姿が現れた。
驚愕を隠せないエルドリスを取り囲む民衆のざわめきは広がっていく。
「エルドリス様が……?」
「悪魔に魂を売ったって……」
「俺らを悪魔の供物にするだと!?」
「それって、王族は悪魔と……」
「でもあの姿……嘘は言ってなさそうだぞ!」
「ひっ……エルドリス様が私たちを殺そうとしていたなんて……!」
「貴様っ、どうやって!」
「簡単な幻影魔法ですよ。やはり、貴方には見抜けなかったようですね? さて、コンサーヴィア王国の皆さん」
カローネが民衆を振り返り、話しかける。
コンサーヴィア王国の伝説を信じる信心深い国民は、神獣であるカローネの言葉を聞き逃すまいと、視線を集中させた。
「今聞いた通り、この国の上流層はすでに悪魔に魂を売っています。あなた達はどうしますか? このまま静かに悪魔に食われるのを待つか、それとも我々と協力して抗うか」
カローネの言葉には、初めから選択肢などなかった。
このまま抵抗をしなければ、カローネの言う通りに悪魔の供物となるだろう。
であれば、神獣と協力するしかない。
その後、神獣が人間を相手にどう出るかが分からないとしても。
「お、俺は神獣様につくぞ!」
「どっちにしろ神獣様が居なければ死んでたんだ、神獣様に協力できるならなんだってやってやる!」
声を上げたのは民衆の一部。
中には悪魔と同じように神獣を恐れている者もいただろう。
しかし、『神獣側に付く』流れができた以上、この場にいる民衆の間には神獣に従う空気が出来上がってしまった。
民衆の意識操作が上手くいったと、カローネは満足そうに頷く。
当然、それを許容できない人物が一人。
「貴様っ……!」
「おっと、動かないでください?」
「ぅぐっ!」
強力な圧力がエルドリスの身体を襲い、うつ伏せにその場に押さえつけられる。
『引斥の呪眼』による重力操作だ。
「な、なぜっ」
「私の幻影魔法を見抜けなかった時点で分かるでしょう? 私と貴方の間には、隔絶した実力の差があるということに」
「そんなっ、私はこんなところで死ぬ人物ではっ……!」
「我々に手を出したことだけが間違いでしたね。……では、さようなら」
「カッ……!」
一瞬のうちに間合いを詰めたカローネが、エルドリスの頭に触れる。
そしてその手を離すと同時、淡い光を放つ白い靄のようなものがエルドリスの身体から抜けていく。
それは、エルドリスの魂であった。
カローネの魔法、『ソウルテイカー』の効果によって魂を抜き取られたのだ。
当然エルドリスが抵抗できるわけもない。
カローネは容赦なくその魂を握りつぶすと、エルドリスの魂は霧散して消え、身体は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「他愛もないですね……」
『貴様が我の邪魔をする者か』
「っ……!」
突如として頭上から迫った魔力撃に、カローネは咄嗟に身を翻す。
直後、その魔力撃は地面を抉り、轟音と共に地面に底が見えないほどに深い穴を作り出した。
それを成した者……死んだはずのエルドリスの身体から漏れ出た黒い煙が徐々に人の形を象り、実体となって現れた。
黒い身体に蝙蝠のような一対の翼、曲がった角、裂けた口に覗く鋭い牙。
そして、脚の先は蹄になっており、先の尖った長い尻尾も備えている。
誰がどう見ても『悪魔』と判断できる容姿を持ったそれは、悪魔『アガレス』。
エルドリスを利用し、大量の人間の魂と国を手に入れようと画策した悪魔であった。
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