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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
コンサーヴィア王国編
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女王蜂 テレータ(別視点回)

評価・ブックマークありがとうございます!

随分間が空いてしまいました、すみません。

最近コメントがあまりなくて寂しい思いをしている作者です。

襲い掛かる悪魔の衛兵の猛攻を次々と躱しながら、テレータはただ衛兵の様子をじっと見つめていた。


『この人間には、どんな意思があって私と戦っているのだろうか』、と……。



他の仲間から『無口だ』と評されるテレータだが、その内面は非常に頭の回転が速く、そして思慮深い性格の持ち主だ。



相手はどんなつもりでこう言ったのだろうか。

相手が求めている答えは何なのだろうか。

自分がこう返すと、相手はどう思うのだろうか。

ではこう返してはどうか……他に最適な答えは……。


そんな考えが瞬間的に彼女の頭の中を駆け巡り、つい何も言えなくなってしまう。

それがテレータの日常であった。



元々表情に出にくいタイプだからか、何も答えないテレータを『寡黙でクールだ』と周囲が勝手に評価し、そんなキャラが定着してしまった。


彼女自身も、『一生懸命話をしようとしなくていい』と、周囲の評価に甘んじている節はあった。ただその代わり、テレータは他人の感情の変化をよく見てきた。



エルティが、ペットを可愛がるような目で人間を見ているのも知っているし、特に年齢的に小さい人間のオスが好きなのも知っている。


フューラが強い言葉を使うのは彼女の弱さを隠すためだと知ってるし、その裏で他の魔蜂と自分を比べて劣っていると落ち込んでいるのも知っている。


ヘレス様は近寄りがたいように見えて実は冗談の通じる朗らかな性格だと知っているし、家族の存在に異常に執着しているのも知っている。



きっと、そんなことを知っている者は多くないだろう。

だから、自分は口下手なりに行動で示してきたのだ。



我武者羅に襲い掛かる衛兵の剣をいとも簡単に避けながら、テレータの頭の中はフューラへの心配ばかりである。


女王蜂となって衛兵の相手をするとなった時、『ボクは一人で大丈夫だから! ついてこないで!』と、ちょっと強めに言われたのはショックだった……。


もっと上手く言えたら良かったのだろうか?

内緒でついていくべきだっただろうか?

ついていったとして、バレたら何と言われるのだろうか?

自信を持っていそうな目だったから、私が変に手を出さない方がいいのだろうか?


遠くに響く、フューラのものと思われる雷鳴を聞きながら、『これなら本当に大丈夫かも……』と思い直す。



そんな考えに気を取られていると、彼女の動きはついつい鈍ってしまう。

と言っても、もはや戦う必要がないほどに、彼女がいる戦場の状況が変化しているのだが。


ふと足を止めたテレータは、自身に背を見せ虚空に向けて(・・・・・・)剣を振り続ける衛兵の姿を見て、またついつい考えてしまう。


———この人間は今、どんな夢を見ているのだろうか、と。



          ♢♢♢♢



ある衛兵は、何もない空中に向けてひたすらに剣を振っている。

ある衛兵は、立ち尽くしたまま笑っている。

ある衛兵同士は、互いを憎むべき敵だとばかりに殺し合っている。


テレータの周囲では、他の場所とはまた違った混沌が広がっていた。



精神魔法———『幻想の女王(パンドラ)』。

テレータを中心にある一定範囲以内の対象に、様々な幻影を見せる魔法である。


ただし、ただ幻を見せるだけの魔法ではない。

視覚はもちろんのこと、聴覚や嗅覚、触覚に至るまで……対象となった相手にとっては、本物としか思えない超精密な幻影である。


悪魔の力で洗脳されていようと関係ない。

相手の五感は全て、テレータの掌の上にあるのだから。

テレータの魔法の効果が及ぶ範囲に入った時点で、すでに勝負は決まっていたのだ。



衛兵にとって剣を向けるべき敵が目の前にいるのに、誰もそのことに気づけない。

それを起こした張本人は、誰にも邪魔されることなく悠々と戦場を歩き、趣味である人間観察に興じている。



息を切らしながらも剣を振り続けるこの衛兵は、自分にしか見えない敵と激闘を繰り広げているのだろう。


白目を剥きながら立ち尽くしケラケラと笑うこっちの衛兵は……きっと幻想の敵を打ち倒して悦にっているようだ。



そうだ、ここで敵を増やしたらどうなるのだろうか?


思い立ったテレータは、さらに魔力を込めて『幻想の女王(パンドラ)』を発動する。

すると、さっきまでケラケラと笑っていた衛兵が途端に険しい表情となり、虚空に向かって剣を振り始めた。



なるほど……たとえ悪魔に呑まれていたとしても、根はどんな相手にも果敢に立ち向かう勇敢な兵士だったのだろう。


けど、残念。

その相手は、いくら斬っても倒すことのできない幻影の敵だ。


剣を振り続ける衛兵の表情が、徐々に恐怖に染まっていく。

今はきっと、何度も何度も復活してくる敵に襲われ続けているのだろう。

そういう幻影を見せるようにしたのだ。



しかし、健闘していたのも数分のこと。

全力で剣を振り続けた疲労からか、それとも何度斬っても倒れない敵に絶望したのか。

カランッと音を立てて剣を取り落としたその衛兵は、絶望の表情で膝から崩れ落ちた。


……限界か。

悪魔の力を手に入れても、精神力は普通の人間……いや、それ以下なのかもしれない。

力に溺れ、それしか頼るものがない者は、その力が通用しない相手に出会った時すぐに瓦解する。


その結果が、今目の前で膝から崩れてブツブツと何かを呟いている人間だ。



色々な表情を見せてくれてありがとう。

じゃあ、さようなら。



ゆっくりと首を斬り落とされたその衛兵は、最期の瞬間を迎えてもなお、本来の敵を見失ったままであった。


お読みくださってありがとうございます。

結構ネタ切れがががが……シフルさんの魔法が思いつきません。

助けて……

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