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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
コンサーヴィア王国編
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あなた達、不甲斐ないですね?(別視点回)

評価・ブックマークありがとうございます!


現れたのは、彼女達の直属の上司であり、へレス様のご兄弟でもあるカローネ様だった。


へレス様の影響か、カローネ様も人間のような二足歩行のお姿で、すでに臨戦態勢なのか4本の腕に備えたナイフのように鋭い爪に黒紫の毒を纏っている。



「何を遊んでいるのかと思えば……人間相手に情けないですね?」


「あっ、貴方は……」

「カローネ様っ!」

「っ……!」


「まったく……魔蜂ともあろう者が、人間ごときに後れを取るなどあってはなりません」


「し、しかし、こいつらは悪魔の力を……」


「黙りなさい。貴女達が人間に負けて醜態を晒しているのは事実。不甲斐ない貴女達に、ヘレス様は大層お怒りですよ?」



まぁ、姉上の怒りはこの5人にではなく、家族を傷付けた人間に対しての怒り、ですが。



「ヘレス様を怒らせるなど言語道断。貴女達はその罪を償う方法を考えていなさい」


「「っ……」」



目を伏せて押し黙る彼女達を尻目に、私は人間どもに向き直る。警戒した面持ちながらも異形の身体を持つ奴らは、確かに彼女達が言うようにただの人間ではないようだ。



「なるほど、貴様が『ヘレス』とやらの腹心というわけか」


「私からすれば『姉上』なのですが……未だに私は子供だと思われているようですね」


「身内か……ならば、貴様を捕らえればヘレスを誘き出せるというわけだ」


「あぁ、残念。貴方達はヘレス様には会えませんよ。……ヘレス様は私に『殺せ』と命令しました。今から貴方達を殺します」



この言葉の裏には、何の感情もありません。姉上が『殺せ』と命じたから、殺す。その事実を伝えたに過ぎないのです。


あ、いえ、何の感情もないとは言い切れませんね。

姉上が私を信用し、頼ってくださった。

それだけで心踊るような歓喜に包まれるのです。



「安心してください。私は今機嫌が良い。できるだけ楽に殺して差し上げましょう」


「俺達を……どうするって?」



声の主は目の前。

転移魔法と見紛うほどのスピードで間合いを詰めた男が、黒く歪に変異した腕を振り被り……パシッと軽い音を立ててカローネに受け止められた。



「殺す、と言ったのです。聴こえましたか? ……あぁ、既に聴こえていませんね」



カローネが受け止めた腕を無造作に横に流すと、異形の男は為すがままに地面に倒れ込み――もう二度と動くことは無かった。



ゾクッと、兵士達の心を恐怖が支配する。


悪魔の力を手に入れ、一人一人が一騎当千という言葉すらも烏滸がましいほどの力を持った兵士だ。現に、メートリス王国を滅ぼした原因とされている『人語を話す魔物』である魔蜂を複数相手に、損害なく追い詰めることができていた。


そんな兵士の一人が一瞬で殺された。

しかも、何をされたのかすら分からないのだ。そんなの、恐怖でしかない。



「貴様……いったい何をした……?」



兵士の一人が、震える身体を押さえながらカローネに話しかける。と同時に、背中に隠して指で合図を送り、密かに極大魔法の準備を始めさせた。


極大魔法の威力は大きいが、準備に時間がかかるのが難点だ。話自体には何の意味はないが、極大魔法の準備時間を稼ぐためにはそれしかない。


それを知らずか、はたまた知った上でなのか……この化け物は話に応じた。



「貴方は『アナフィラキシーショック』というスキルは知っていますね?」


「それぐらい知っている。それがなんだと言うのだ?」


「彼を殺したのは、『アナフィラキシーショック』の派生スキルです」


「なっ、それはあり得ん! ただのスキルなど無効にする加護がついているのだぞ! 第一、悪魔の力を手に入れた我らは死から解き放たれた存在のはずだ!」


「えぇ、分かっていますよ。肉体的に殺したとしても悪魔の力ですぐに復活するぐらい。……フフ、ですから、『アナフィラキシーショック』を進化させました」


「その程度で何ができると―――」


「姉上の力も借りましてね。魂に作用する『魂喰毒』と『アナフィラキシーショック』を掛け合わせた派生スキル、『ソウルフューネラル』です。二回攻撃を受けた相手の魂を滅ぼし、輪廻転生の輪から外してしまう……その男はもう、エリクサーを使おうと復活することはありません」



それが当然だと言わんばかりに言い放つ魔物の様子に、冷たい汗が頬を伝うのが分かった。


この魔物は悪魔の力を得て強化された我々すら殺せるスキルを持っているばかりか、認識できない速さで攻撃できるAGIと、我々のVITを貫通できるほどのSTRを持っているということだ。


まさか、オスの魔蜂の変異体(・・・・・・・・・)がこれほどまでに別格の存在だとは。


だが……



「くくく、貴様が色々と喋ってくれたお蔭で極大魔法の準備が整った! やれっ!」



リーダーの男がそう叫ぶと同時に、複数人の兵士の手によって構築された複雑な魔法陣から、どす黒く濁った魔力撃がレーザーのように放たれた。



「くははは! 貴様がどれだけ強くても、これを喰らえばただでは済まんぞ!」


「「「「カローネ様っ……!」」」」


「これは確かに……受ければ、ですけどね」


「……は?」


この人間どもには残念なお知らせですが……数人の人間が集まってようやく発動したこの魔法でさえ、今の私は一人で、一瞬で発動できてしまう。


私は一瞬で構築した同じ魔法陣から、同じ極大魔法……いや、数段階上の極大魔法を放つ。人間どもに間抜けな声を掻き消し、極大魔法も軽々と押し返して、人間どもは風の前の塵芥のように吹き飛んだ。



轟音。

崩壊。

避けきれずに魔法を受けた何人かの人間は死んだだろう。


……かつて人間に殺されかけたあの時と比べたら、随分成長したものだ。ここまで育ててくれた姉上に感謝を。


そして……人間どもには死の贖罪を。



砂煙が舞う洞窟の中を肉眼では捉えられないスピードで駆け、毒針のように長く伸ばした爪で突き刺していく。声も上げられずに死んでいく人間。


ほんの数秒後、残ったのはリーダーらしき一人のみだ。



「貴様……いったいどこまで……」


「いえいえ、私の兄弟に魔法が得意な子がいましてね。ラクネアというのですが……今の魔法も彼に教えていただいたのです」



人間の顔が絶望に染まった。

私と同じくらいの強さを持つ他の魔物の存在に絶望したのでしょう。



「あぁ、ちなみに、私はこれでもへレス様の足元にも及びませんから。だからまだ子供扱いしてくるのですよ。困ったものですよね……では、さようなら」



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