だんだん病んでいく自分がいる……。
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対峙したカエルは私より一回り大きく、丸々と太っている。
確か、カエルの肉って鶏肉に似てるんだっけ。
そう思うと、結構おいしそうに見える。
さて、戦いの前に相手の戦力の調査は必須。
という訳で、『鑑定』!
名前:無し
種族:パラクレート・フロッグ
Lv:4
名前とレベルしか分からなかったね。そうだったね。
まぁいいでしょう。
機動力はこちらの方が上!
ブンッ!
翅で風を切り、一瞬でカエルの上を取る。
ま、見失うよね。
普通の目は複眼と違って、視力が良い代わりに動体視力がさほど良くない。
はっきり言って、最初の奇襲を失敗した時点で、もうこちらが攻撃を受ける道理が無い。
だって、上空から攻撃し続ければいいもの。
と思ったらこのカエル、口からなんかえげつない色の液体を吐いてきよった!
うおぉっ!緊急回避!
ビシャッと音を立てて液体が地面にまき散らされると、煙を上げながら地面の表面が溶け始める。
ヒェッ……
めっちゃ溶けるやん……あんたも毒?毒ですか?
うへぇ、食べる気無くなってきた。
いやでも、今これ以外に獲物いないっぽいからなぁ。
……狩ってから考えるか。
まずは『超音波』!
ッ―――――――!
スキルを発動した瞬間、私を中心に超音波が衝撃波を伴って放たれた。
うおっ、思ったより強い。
音だけで砂が舞い上がってるし、川に波も立っている。
レベル1でこれって、MPに関係してたり?
ちょっと待っててねカエルさん。『ステータス』!
名前:無し
種族:女王魔蜂
Lv:1
状態:普通
HP:2560/2560
MP:500/580
STR:853
VIT:258
AGI:771
DEX:400
RES:500
スキル:『禁忌の暴食Lv――』、『禁忌の強欲Lv――』、『女王の支配Lv1』、『魅了Lv1』、『過食Lv1』、『猛毒生成Lv1』、『熱感知Lv1』、『飛翔Lv1』、『超音波Lv1』、『鑑定Lv1』、『自動再生Lv1』
称号:《禁忌を犯せし者》、《魔蜂の女王》
おおぅ、結構MP減ってる。維持し続けるのはなかなか消費するのね。
じゃ、早めに倒そう。
あ、待っててくれたのね、カエルさん。
『超音波』で押さえつけられて動けないのか。
じゃ、遠慮なく。『猛毒生成』からの毒針アタ――――――――ック!
ズドンッ!!
凄まじい音が洞窟内に響き、尻の先から突き出た毒針が地面に突き刺さった。
狙ったはずのカエルの首から上を木端微塵に吹き飛ばして。
吹き飛んだカエルの血肉が水しぶきとなって体にかかる。
ちょっ、確かに思いっきり刺したけどさ、ここまでなる!?
もっとこう、プスッとさして毒で殺すのを想像してたのに、パワーで即殺ですか……。
ごめんねカエルさん、虐殺しちゃって。残さず食べるから許して。
『スキル:麻痺毒 を獲得しました。既にスキル:猛毒生成を所持しているため、スキル:麻痺毒 はスキル:猛毒生成 に統合されます』
『スキル:脚力強化 を獲得しました』
お、いつか聞いた天の声さん。
カエルが飛ばしてきた毒、麻痺毒だったようだ。
もしさっきの毒を浴びてたら、身体が動けなくなって溶かされるのかな。
考えただけで背筋がゾワッとするわ……。
まぁ、速攻倒したからいいんだけどね。
返り血を浴びたままじゃちょっと気持ち悪いから、川で体を洗いながら逡巡する。
多分だけど、私のSTRが相手のVITを大きく超えてたのかな。
というか、それしか考えられない。
うーん、カエルさん、レベル4だったよね?それなのに、この戦力差……。
つまり私がかなり強いってことだ。
そうだよ、最初から気付くべきだった。
私があの時食べたのは、百匹にも上る魔蜂の死体だ。
あの時に《暴食》を獲得した訳だから、食べたハチのステータスを加算しているはず。
生きてもいないし、死体もボロボロでステータスがかなり低下していたはずだけど、それでも魔蜂百匹分の合計だ。
弱いはずがない。
くふっ、つい笑いが漏れてしまう。
私最強になるから、くそドラゴンは首洗って待ってな。
さ、戦利品を持って帰ろ!
♢♢♢♢
ただいまぁ!
元気にしてた?相変わらずツヤツヤですなぁ。
卵だから当たり前か。
お母さん今日はカエル捕ってきたよ。
勢い余って頭吹き飛ばしちゃったけど。
みんなはまだ卵だから私だけで食べちゃうね。
…………かなり病んでるなぁ。なんで卵に話しかけてるんだろ。
まぁ、愛情を込めて育てるということで……。
私の精神の平衡を保つ方法でもあるしね。
そういうのを病んでるって言うんだよっ!
まぁいいや、いただきます!
ガブッ!ミチミチッ、ブシュッ!ムシャムシャ……
んっ、確かに鶏肉と言えば鶏肉かも……?
流石に鶏肉を生で食べたことは無いけど、生だったらこんな感じの味なんだろうなって味がする。
あとどことなく泥臭い。
調理とかできないから仕方ないね。それに、食べられない程ではないから今はこれで十分。
さて、この後……来たな!麻痺毒!
口の中ピリピリしてきた。
痛いとかではないけど、歯医者で麻酔を打った後の、口の中の感覚がないあの状態に近い感じがする。
……食べられなくなる前に早く食べ切ろう。お残しはダメだかんね!
ふぅ、食べきった……。
もう麻痺で口の感覚ないし、後で体調崩さないか心配だ。
健康に直ちに影響は無い、は常套句だからね。
しかし……全然足りない。
これも《暴食》のせいだよなぁ。
満たされることの無い飢えというか、もっと食べたい。
麻痺毒が邪魔だし、一寝入りしてからにしよう。
それで、起きて体調がよかったら狩りを再開するかな。今度はなるべくいっぱいね。
蜘蛛が見つかりますように……。
じゃ、卵をしっかり保護してと……おやすみ!