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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
コンサーヴィア王国編
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男の子に好かれるなら悪くない……かな?

評価・ブックマークありがとうございます!


「神獣様、どうかお納めください!」


「ぜひこちらも! うちの村で穫れた出来の良い果物です」


「「「神獣様!」」」



おぉう、どうしてこうなった……。



私は今、薄幸皇子の下を離れて辺境の村の近くに開く、パラクレート大迷宮の入り口付近に居る。


ミネルヴァが、『時々姿を出せ』ってさ。


怖がるんじゃないかと思ってたけど、姿を現した結果がこれだ。

私はただそこに居るだけなのに、人々が群がっては果物や何やらを納め物とばかりに献上してくる。



いや、まぁそうなるように色々と手を出したんだけどね?

それにしても私魔物なのよ?

あなた達単純過ぎない?



ありがたやありがたやと手を合わせて頭を下げる人々に、果たして人間との交流が上手くいってるのかと首を傾げる。



そんな時、けたたましい音を立てて一台の馬車が迫ってきた。


ちょっ、危なっ、村人轢くつもり?

事故が起きないように、軽く風魔法を使って村人を避難させる。



私の目の前に止まった馬車は、二頭立てで豪奢な作りのものだ。側面には貴族家のものと思われる家紋が……あー、なんか嫌な予感がするな。


馬車から降りてきたのは、チビデブ……おっと、身長が低い代わりに横に大きい、如何にもな貴族であった。



「お前が神獣とやらだな? 一緒に来い! お前はこのポルコ様が飼ってやる」



やっぱりね。



こいつ、新手の自殺志願者か?

冒険者の目の前でSランク超えの魔物も狩ってるし、その話が届いていればこんな上から来れないと思うのだけど……



「聞こえなかったか? このポルコ様のために働けるんだ、光栄に思うがいい!」



こいつの中では、私が断るとは思っていないらしい。

大迷宮の攻略とかなんとか、とにかく金儲けの計画を聞いてもいないのに語ってくれている。


薄幸王子もミネルヴァもまともだったから実感無かったけど、やっぱり貴族ってこんな感じなのね。呆れを通り越してもはや感心しちゃう。



「おい、何をしている! ボケッとしていないでとっとと馬車に乗れ!」


「やめろっ!」



ポカンとポルコ……豚貴族を眺めていた私にいい加減痺れを切らしたのか、自ら私を掴もうと前に出———たところで、一人の男の子が豚貴族の前に立ちはだかった。


あ、この子、前に私が助けた子の一人ね。食べ物が少ないせいで痩せてはいるが、初めて見た時と比べれば随分元気になったものだ。



「あ? なんだこのガキ」


「神獣様は俺たちを助けてくれるんだ! 無理矢理連れてこうなんて許さないぞ!」


「ふんっ」


「ぅあっ!」



っ!?

こいつ、子供を殴りやがった!

体格の差かステータスの差か、男の子は軽く吹き飛ばされ地面を転がる。



「おいガキ。貴様、俺がシュバルツ男爵家のポルコ様だと知らないのか?」


「っ……知るかよそんなの」



殴られた男の子は、ペッと血を吐き捨てながら身体を起こし、豚貴族を睨み付けた。その様子に、豚貴族は明らかに激昂して青筋を浮かべている。



「き、貴様! もういい、不敬罪だ! 今この場で叩き斬ってしまえ!」

「はっ」



豚貴族の後ろに控えていた護衛の一人が、剣を抜きながら倒れた男の子へと近付く。

いやぁ、これはさすがに看過できないかな。


倒れた男の子に迫る護衛の男をサクッと無視して、私は男の子に膝枕しながら殴られた頬に触れる。



ちょっ、なんで顔赤くしながら固まってるのよ。私魔物なんだけど?

もしかして性癖歪ませた?



まぁいいや、『ヒール』!


男の子の頬に触れる私の手を中心に、淡い光が放たれてその効果を発揮する。打撲も、口の中の切った場所も元通りだ。



「お、おぉ、その凄まじい治癒魔法……やはりお前はこのポルコ様に相応しい!」


「……あなたは敵? それとも、人間が敵(・・・・)?」



男の子を降ろし、立ち上がった私は豚貴族へ一言。押し黙って事の顛末を見ていた周囲の村人にざわめきが広がった。



「お、お待ちください、神獣様!」


「この男は我々がなんとかします! どうか気をお静めください!」


「この男とはなんだ! 貴様も不敬罪で手打ちにしてやる!」


「えぇい黙れ! それ以上神獣様を侮辱するなら許さんぞ!」


「たかが平民風情が舐めた口を利くな!」



ただの村人が、貴族家当主相手にこの物言いである。敬意などあったものではない。しかし、そこまでしなければならない理由があるのだ。


彼らが畏怖と敬意を向けるこの神獣様は、その気になれば人間など容易く滅ぼすことができると知っているから。


不敬罪だなんだと罵られて村人数人の首が斬られる程度で済むのであれば重畳である。



「ハァ……」


「「「っ……」」」



思わず溜め息が漏れる。その瞬間、豚貴族も村人も全員が息を潜めて私へと目を向けた。


そんなに見つめても、悪態しか出てこないわよ?



「不愉快」



そう一言だけ言い残し、私はきびすを返してパラクレート大迷宮へと帰っていく。シンと静まり返ったその場で、私を引き留めるものは誰もいない。



誤字報告等もありがとうございます!

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