いやいやいやいや……え、嘘でしょ?
評価・ブックマークありがとうございます!
先に謝っておきます。
パクりました。これしか思い浮かばなかったのです。
すみません!
「さて、ここには私とお前しかいない。単刀直入に聞く、お前はただの人間ではないな?」
「……なぜそう思うのです?」
「理由はいくつもある。まず、私の『鑑定』が弾かれたこと。互いに鑑定スキルを持っていれば、自身よりレベルが高い相手には鑑定が失敗することがあるのだが……私のレベルは65だぞ。私よりレベルが高い者は、この世界に数えるほどしかいないはずだ」
「……」
「2つ目、私ははじめからコンサーヴィアの公用語ではなくフラメル語で話していた。この国どころか、周囲の国でも使う者はいないはずだが、お前は随分流暢に話していたな? つまり、『言語理解』を持っているのではないか?」
「ぅ……」
ちょ、嵌められた……。
この人マジで何者?
一瞬で機転を利かせて、私が言い逃れのできないように追いつめるなんて。
大して話してもないのにバレそうなんだけど?何かのスキル?『鑑定』!
名前:黒崎 裕也
種族:人間
Lv:65
状態:普通
HP:7460/7460
MP:10622/10822
STR:3245
VIT:2864
AGI:2339
DEX:4845
RES:6276
スキル:『成長補正Lv――』、『魅了Lv2』、『鑑定Lv7』、『身体強化Lv4』、『状態異常耐性Lv5』、『空間把握Lv7』、『威圧Lv5』、『遠見Lv5』、『火炎魔法Lv5』、『地裂魔法Lv4』、『瀑流魔法Lv3』、『疾風魔法Lv3』、『閃光魔法Lv4』、『危険察知Lv5』
称号:《転生者》、《コンサーヴィア王国王女》、《魔導王》
《転生者》? テンセイ……転生!?
はぁっ!?
待て待て待て、ツッコミどころが多すぎるっ!
転生ってあれだよね? 私がこの世界に生まれたのと同じで、前世の記憶をそのままに異世界へ……
しかも、名前!
『ミネルヴァ・コンサーヴィア』って名前と『黒崎 裕也』って名前が重なってるんだけど!?
しかも黒崎って、あ~~……居たわ。私のクラスに。勉強よりはスポーツが得意な脳筋男子だったけど、確かに覚えてる。
もう確定でしょ。
まさか、私以外にこの世界に転生しているクラスメイトがいるなんて考えもしなかった。
今思えば確かに、あの地震に巻き込まれたのは私だけじゃないし。
それにしても……なんで女性になってんの?
しかも物凄い美人だし! 王女だし!
そのうえ『成長補正』と《魔導王》なんて、チートありTS転生かよっ!!
私なんて虫なんだが? なんだが?
ハァッハァッ……あ――――っ、『憤怒』が発動しそう。
いや、この場合は嫉妬か。持ってないけど。
「私の鑑定を行なったのか? フフ、理解も及ばぬだろうが、私は強いぞ」
カッチ――――ンッ
チートを貰ったからと言って調子に乗りやがって。
なら私も爆弾を投下してやろうかな。
『随分調子に乗ってるみたいじゃない。黒崎君』
もちろん日本語で。
おおう、鳩が豆鉄砲を食ったような表情って、このことを言うんだなぁ。
『な、何故お前が日本語を知っている……』
『なんでって……私もあんたと同じだからよ』
『まさか……』
『蜂須賀 綾乃……って言えば思い出してくれるかしら?』
『蜂須賀さんって、あの美人だけど窓際で読書に耽る地雷系女子で有名な?』
『誰が地雷系女子だファンキーモンキー』
『俺は猿じゃねぇ!! ……でもそんな渾名を知ってるのなら本物なんだな……』
感極まったのか、ファンキーモンキーことミネルヴァ王女の目尻に涙が浮かぶ。
『それにしてもTS転生に王女でチート持ちだって? 属性詰め込み過ぎじゃない?』
『ははは、すごいだろ? こっちの世界では《魔導王》として有名なんだぜ? ついでに言うならこの見た目もいいからさ、たまに戦いながら愛想よくしておけば楽して暮らせるからな』
『あんたらしい……』
『蜂須賀さんも転生だろ? 村でアーノルドと会ったってことは、普通の人間にでも転生したのか?』
『あ――――――っと……』
どうしよう……正直に言うべきかどうか……。
『あぁ、確かにこっちの世界では初対面だからな。いきなり信頼しろと言っても無理があるか』
と思ったら、こっちの気持ちを察してくれたようだ。
『それはまぁ……元クラスメイトだから譲歩したい気もあるけど、内容が内容なのよ』
『クラスメイトに会ったのは蜂須賀さんが初めてだからね。つい嬉しくて舞い上がっちゃったよ』
『他のクラスメイトもこの世界に?』
『……それは分からない。蜂須賀さんとは本当に偶然出会っただけで、他のクラスメイトの情報は何も無いよ』
『そう……それは残念ね』
『あぁ、残念だ』
……なんかしんみりしちゃったなぁ。クラスメイトがチート持ち転生してると知ったときはキレそうだったけど、今思えば見知らぬ世界に一人放り出されたのはモンキーも同じよね。
『無理に全て明かせとは言わないさ。だから、これはミネルヴァとしての忠告だ。近い内に王座が交代して、恐らくマルクスになる。そうなるとメートリス王国の土地を求めた国々と戦争になる可能性があるから、早めにこの国から出ていくことをおすすめするよ』
『戦争って……あそこには魔物が潜んでるでしょ?』
『あぁ、それは……』
伝説によると、コンサーヴィア王国が建国される遥か昔、この地では『勇者』と『魔王』による激しい戦いがあったらしい。
マンガかよ! とツッコみたくなる話だけど、この世界ではありえそう。
結局、勇者と魔王は三日三晩の激しい戦闘の末相打ちとなり、世界に平和が訪れたというのだ。
ただし、戦いの地となったその場所へのダメージも相当なもので、ろくに草木も生えない不毛の大地となったらしい。それがこの大砂漠である。
それが千年以上も前の話。
『所詮は伝説、と言いたいことろだが……半年前、この砂漠で『聖剣』が見つかったんだよ』
「!!」
マジですか?
ミネルヴァが言うには、聖剣は『勇者』にしか扱えないが、魔物に対して絶大な効果を発揮するらしい。
そんな切り札を持っているからこそ、『メートリス王国を滅ぼした魔物を倒せるのはコンサーヴィアだけだ』と吹聴して他国を牽制しているというのだ。
コンサーヴィア王国が『魔物との共存』ではなく『武力国家』へと舵を切ったのも、この時期らしい。
『勇者がいないからどうにもできないけどね。メートリス王国の土地を手に入れるためには魔物をなんとかするしかないし……周辺の国はそれができる可能性があるコンサーヴィア王国と手を組む方向で動いているけど、魔物の討伐後にコンサーヴィアの一強を阻止するために裏で手を組んでいるという情報もある。下手したら数ヵ国入り乱れた戦争になるかもね』
『……あんたさ、本当にあの黒崎? いつから国際情勢なんて語るようになったの?』
『うるせぇ。今の俺は王女だから色々あんだよ』
『ふーん……で、聖剣とか情勢とか、私に話して良かったの?』
『別に蜂須賀さんはどっちの味方ってわけでもないしね。クラスメイトに対するできる限りの手助け、ってところか』
なるほど、黒崎君は信頼してくれてるってことか。
『あんたは王座を狙う気はないのかしら?』
『全然無いね。TS転生と言ったらのんびりスローライフだろ?』
本当、変わんないなぁこの人……。
どこまでも真っ直ぐな性格で、友達がヤンキーに絡まれたらとにかく助けに入るような、そんな人物だ。
……信頼してもいいかも?
『黒崎君……いえ、ミネルヴァさん。最初に一つ言っておくと、私の目的は、魔物と人間が共存できる国を作ることよ。それ以上のことは……もしあなたが極秘にしてくれて、なおかつ私達に協力を誓ってくれるのであれば、私は全てを明かしてもいいと思ってるわ』
『ミネルヴァさん、ね……ゴホンッ。ふむ、魔物との共存か……奇しくもアーノルドと同じだったから奴に協力しているわけか。しかし、今の世論を覆して実現させる算段があると?』
『もちろん』
『ふっ……ならば迷うことはない。ミネルヴァ・コンサーヴィアの名に懸けて、そなたの秘密の厳守と協力を誓おう』
絶対にそう言うと思ってた。
ちょっと芝居掛かった振る舞いではあるけど、嘘は言わないやつだから。
『……いきなり襲いかかったりしないでね?』
そう一言断って……人化の魔法を解除した。
48話にしてようやく主人公の本名が出た小説があるらしい。
誤字報告等もありがとうございます!




