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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
コンサーヴィア王国編
42/74

死の間際にて、英雄を見た(別視点回)

二か月経ったのか……。

もし、もしもだよ?

一度完結したやつの続きを書いたとしたら、読んでくれますか?

「はっ! はっ!」



強い日差しが降り注ぐ砂漠の真ん中を、一心不乱に走る青年が一人。

水が足りず、喉が張り付く。

呼吸すらままならない。

細かな砂が厚く積み重なった砂漠の上は、走りにくいことこの上ない。



それでも足を止めないのは、すぐ後ろに『死』が迫っているから。


ドウッ!


背後で鈍い音を立てて、何かが地面から飛び出るのを感じた。振り返って確かめる暇など無い。というより、振り返らずとも、自分を覆う巨大な影を見ればその正体は一目瞭然だ。


砂漠の悪魔『サンドワーム』。

数十mはくだらない巨体と人間すら一飲みにできる口を持つ、大型の魔物である。


見た目は巨大なミミズなのだが、ポッカリと開いた口にびっしりと並ぶ牙と、その貪欲さから、砂漠付近に住む人々から『悪魔』と恐れられる魔物である。



「っ!!」



足がもつれたのか、青年が砂を巻き上げながら倒れ込む。

日差しが強烈な砂漠では、熱くとも直射日光を防ぐことのできるよう、頭から手首、足首までをすっぽりと覆うことのできる衣装を着るのが一般的だ。


青年のような、身分が高い者ならばなおさら。

しかし、それが今の切迫した状況では邪魔でしかない。



「くそっ、くそがっ!」



ついその口から漏れた悪態は、ここで命尽きることへの悔いか。

それとも、この『悪魔』をけしかけた人物への恨みか。

どちらにせよ、万事休す。


襲いかかるサンドワームを前に、青年は思わず目を固く閉ざした———



「デリガード!」

「おうっ!」



バゴンッ!!


「―――――――――!」



突如として聴こえた、二人の男女の声。

その直後、何かが爆発するような轟音とともに、サンドワームの巨体が揺らいだ。


視界に映ったのは体格の良い男と、彼が持つ大盾。

男が盾によってサンドワームを弾き返したのだと察したのだが———



いや、それは不可能だろう。

サンドワームの重量に人間が耐えられる訳がない。重さだけを見てもそれなのだ。

足元が不安定な砂の上で、超重量のサンドワームの突進を弾き返すなど、人間離れしすぎている。


青年の脳内がそんな思考に覆われる中、剣の切っ先のように鋭い声が耳に届いた。



付加術エンチャント・ウィンド!」



声と同時に、音もなく振り抜かれた剣。

その剣には、風の付加魔法が荒ぶるように巻き付いており、緑色の淡い光を発している。


お手本のような、綺麗で丁寧な付加術。

あまりに鋭く、真っ直ぐで、迷いの無い剣筋。


何事も、ある境目を越えると『美しさ』を纏うものだ。


彼女の剣に感じたのは、まさしくそれ(・・)

その身が置かれた状況も忘れて見惚れていた青年は、身体の中半から両断されたサンドワームが地面に落ちる音で意識を現実へと引き戻した。



「まだだっ! サンドワームは一匹だけじゃない!」


「なるほど……ならば!」



大盾の男が地面を踏み鳴らし、何らかのスキルを発動する。

恐らくは、『激震』。

周囲に衝撃波を与える普遍的なスキルだ。



普遍的なスキル、のはずだが……なんだこの規模は。

パッと見100mは離れている砂上からも砂が吹き上がるのを見ると、彼を中心に100m以上の距離にまで届いているのだろう。


水や固い地面の上ならともかく、砂の上でこの攻撃範囲はあり得ない!

先程のサンドワームを弾き返したパワーも含めて、本当に人間か!?


しかしこれだけの威力の『激震』……砂の上にいる私はともかく、全身に直接浴びたサンドワームは堪らないだろうな。



「「ッ――――――!」」



案の定、悲鳴のような声にならない声とともに2体のサンドワームが地面から姿を現した。合計3体のサンドワームがいたようだ。



「流石はデリガード。後は私に任せておいてくれ。……ちょうど試し撃ちがしたかったところだ」



そう言いながら手を上に掲げる女性の手のひらに、複雑な魔法陣が描かれていく。それは———



「まさか、雷轟魔法!?」



———それは、雷系魔法の最上位に位置する魔法であった。

魔力によって発生させた雷で攻撃するような、下位の雷系魔法とは訳が違う。

天候を操り本物の雷を降らせる、まさに神の如き御業。


晴天の空に突如として発生した暗雲から、二条の雷が降り注ぐ。


空が哭く。

空気が震える。

世界を白に染め上げる。


そう表現すべき雷轟は、巨大なサンドワームを容易く飲み込み、塵すら残さずに消滅させた。

後に残っているのは、クレーターのように抉れた地面と、砂が解けてできたガラス状の物質だけであった。



雷轟魔法が収まった後、パキンッと何かが割れるような音とともに、目の前で光の破片が消えていった。どうやら、いつの間にか魔法壁のようなものが張ってあったらしい。



「エリザ、流石に威力が高すぎる。俺が守らなければこの方にも被害が出ていたぞ」


「む……そうだな。これは申し訳ないことをした」


「い、いやいやいやっ! 助けていただいたことに感謝こそすれ、責めようなどという気はっ……!」



剣を納め、律儀に頭を下げてくる女性に向け、ブンブンと頭を横に振る。


しかし、今がチャンス。

この好機を逃してなるものかと、ここぞとばかりに畳み掛ける。



「お二方は名のある冒険者だとお見受けする。どうか、暫しの間私にご助力願えないだろうか!」



          ♢♢♢♢



流石にこのままではまともに話し合いなどできないからと、デリガードが『収納』の中に用意していたテントを張り、その中で日差しと砂を凌ぐこととした。


たいして大きいテントではないが、詰めれば何とか……といった具合である。

脱水症状も出始めていた青年に水を飲ませ、ようやくまともに話ができる状態となったのであった。



「水まで頂いて、重ね重ねかたじけない!」


「それぐらい、当たり前です。改めまして、私はエリザ、こちらはデリガードと言います」


「すまない、名乗り遅れたな。私は———」


「コンサーヴィア王国第2王子、アーノルド・コンサーヴィア殿下では?」


「むっ……バレていたか」


「はい。以前、魔物の大発生(スタンピード)の際、印象に残る演説をされていましたでしょう」


「スタンピードの時と言えば、貴殿はメートリス王国の出身で? それはまた難儀な……」



アーノルドの言葉にどこか引っ掛かるエリザであったが、今は気にしている場合ではない。王家の者が砂漠の真ん中で死にかけている方が一大事だ。



「しかし、アーノルド殿下は何故こんなところへ? 護衛の者などは……」


「護衛は皆死んだよ」



アーノルドの口から漏れた言葉に、エリザは返す言葉を失う。



「貴殿も見ただろう、あのサンドワームを。元々が少ない人数ではあったが、私を逃がすために全員が犠牲になった。そして、私もやつの餌になるところだった」


「なるほど……犠牲になった者は残念です」


「それで、理由だったな……簡単にいうと、継承権争いだな」



エリザ、デリガードの予想通り、玉座を争う者同士の競り合いなのだとか。



「くそっ、このままではコンサーヴィア王国が滅亡する! だというのに、兄上は私の言葉に耳を貸そうとすらしない! その上サンドワームまで……」


「まさか……先程のサンドワームは殿下の御兄弟が……」


「っ……あぁ。向こうには魔物を操る『モンスターテイマー』なる人物がいるらしくてな。いや、大方脅迫して従わせているのだと思うが……。魔物との共存(・・・・・・)を謳う私がどうしても邪魔らしい」



『魔物との共存』。

その言葉に、エリザとデリガードは大きく反応した。安寧の地を探しているかの化け物を知っているから。



「アーノルド殿下、詳しく話していただけないだろうか」


書いたといっても最後までできていないので、第1章ほどの高頻度で投稿はできません。

それでも良ければよろしくお願いします。


蛇足と感じる人にはごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます!本当に楽しみにしておりました。この作品が1番好きです。これからも応援してます。
[一言] すみません今復帰してるのを気づきました!お帰りなさいです‼️いや〜この作品が一旦完結してからの間は自分は他の人外ファンタジー作品を読みまくりましたがやはりあなたの作品の人外が一番人外度が高い…
[一言] 待っていました
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