天災の再誕(一部別視点回)
評価・ブックマークありがとうございます!
今回は途中から別視点回となっています。支店の移動で分かりにくくなっていたらごめんなさい。
いやぁ、子供達強すぎるでしょ。
大勢居た団員はともかく、隊長格の三人はかなりの強さを持っていたはず。
私が強化したゴブリンとも互角以上に戦ってたしね。
でも、子供達が出た後は一瞬だった。
あのラインハルトとかいう、インスタ番長みたいな男のステータスは、私が強化したゴブリンのそれを確実に上回っていたはずだ。
それをワンパンて。
AGIが高いツインテロリと魔法のイケイケおじに至ってはカローネやラクネアを私だと勘違いしてたからね。
せっかく戦力増強したのに、召喚した蟲たちはただの荷物運びになっちゃった。
子供達は後でご褒美あげないとね。
何あげたら喜ぶかなぁ……。
あ、私がいろいろ知ってる理由は、『遠見』と『空間魔法』を使って住処からずっと見てたから。
まだ『空間魔法』のレベルが低いからこれぐらいしかできないけど、そのうち空間転移とかできるようになるのかな。
ちなみにツインテロリとイケおじとインスタ番長さんは殺してないよ。
ちょっとやりたいことがあって、それに利用しようかなって。
他の団員はどうしたかって?
……ふふふ。
何を、とは言わないけど、私が『召喚魔法』で生み出した蟲たちがジャンジャン運んできてくれてる。既にほとんど食べちゃったけどね。
今回子供達には悪いけど、人間を倒して得られる経験値の半分は『魔虫の女王』の効果で私が貰ってる。
できるか分からないけど、この後のことも考えてもう一度進化はしておきたいなって。
それにしても……レベル上がらなすぎ!
レベルが10ぐらいの時は人間一人の経験値で1ずつ上がるぐらいだったのに、50超えたあたりから一気に上がらなくなってきた。
400人分ぐらいの経験値を集めて、ようやくレベル80を超えたよ。
一応次の進化は50レベルあればいいみたいだったから、条件は満たしたようだ。
50に到達したところで天の声さんの囁きが聞こえたからね。
でもなんか、進化に必要なエネルギーが足りなくて、すぐに進化する態勢に入れなくて……気付いたら80超えてた。
600人ぐらいだったかな?
『禁忌の暴食』と『過食』の上位派生スキル、『飽食』の効果か、それだけ全部食べ切っちゃった。しかも、満腹じゃない。
流石に血は零れちゃうけど、それ以外は骨すら残してないよ。
お残しは許さないかんね!
流石にグロい捕食シーンは見れなかったのか、くっころさんとナイスガイは森林エリアを散歩している。二人は常識人なんだし、人間が次々と食べられていく場面なんか見たくないもんね。
ゴブリン達でさえ目を逸らしてたし。
大蛇みたいな化け物みたいなのも時々現れるエリアだけど、問題ないでしょ。
『女王の下賜』でステータスがぶっ飛んでるうえ、食べるほどに『禁忌の暴食』で私のステータスが上がって、それが還元されていくんだし。
魔物の配下になって1万超えるステータスを持ってる人間は常識人じゃないとか、そんなツッコミは受け付けないよ。
レベルは足りてる。エネルギーは十分。
さぁ、子供達が隊長格の三人を連れてくる間に、サクッと進化しちゃいましょうか。
♢♢♢♢
ラインハルトがふと意識を取り戻すと、まず目に入ったのは巨大な樹木。
そこは森林エリアとも呼ばれ、準備を整えて挑まなければ王国の第三騎士団でも危なくなるような強力な魔物も発生する、屈指の難易度を誇る【パラクレート大迷宮】の第五層であった。
「サリエリ、ダグリス、無事か?」
「っ……ひっ!」
「…………」
連れてこられていたのは他二人の団長も同様で、サリエリとダグリスの安否を確認する。
二人とも目につく外傷は無さそうである。
が、サリエリは頭を抱え怯えた様子でガタガタと震えるばかり。
ダグリスはというと、気が触れたのか焦点の合わない目でブツブツと独り言を漏らしてばかりいる。
この二人がここまでになるとは、いったい何と戦ったのだというのだろうか。
「ゴブリンどもが、俺達をいったい……」
「黙って歩け」
ゴブリンが引っ張る縄に応じて、手首や首が締まる。
ゴブリンでは到底あり得ない程のSTRの高さに、思わず顔を顰めるラインハルト。
『限界突破』の反動も相まって、身体が思うように動かないでいた。
ゴブリンどもが作ったものだろう。縄張を主張する木の柵に囲まれた場所へと足を踏み入れ、その中央へと引っ張られていく。
そこにあったものは、純白の繭。
人間が一人や二人は入れそうな大きなものだ。
モス種の魔物でもこれよりもう少し小さいはず。
初めて見る、全く未知の魔物。
「控えろ。そして光栄に思うが良い。へレス様の再誕をその眼に焼き付けられるのだからな」
へレス様の再誕? 何を言って……
ビキッ!
突然、目の前にある純白の繭が音を立てて割れ始める。
その隙間から漏れ出た気配は、ほんの一雫。
しかし、その一雫で、王国トップに君臨する実力者三人を絶望に叩き込むのには十分過ぎた。
繭の隙間からしなやかな指が現れ、繭を割り崩していく。
その光景を、三人の騎士団長はただぼんやりと眺めていた。
眺めることしかできなかったのだ。
荒れ狂う大海原や炎を噴き上げる火山を前に、どうすることもできないように。
繭が大きく崩れ、次第にその姿が現れる。
それはもはや、魔物とは到底呼べる者ではなかった。
あぁ、なんと美しく、そしてなんと醜く歪んでいるのだろうか。
あぁ、なんと純真無垢で、そしてなんと大罪に満ちているのだろうか。
その聖母のような微笑みを浮かべる瞳には、我らの姿は映っているのだろうか。
いや、映っていないだろう。次元が違うのだから。
それは神の生誕か、はたまた魔王の再来か。
どちらにせよ、人類にとっては『天災』。
倒すとか退けるとか、そんな概念は通用しない。
「初めまして、人間さん」
神託と紛うばかりの、鈴の鳴るような透き通る声に、ただただ平伏する。
そうせずにはいられなかった。
誤字報告等もありがとうございます!
第2話の『天災』と比較して、言葉は同じでも対象が違うあたりに注目していただければと……




