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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
天災の誕生
31/74

地獄の入り口1(別視点回)

評価・ブックマークありがとうございます!

今回は別視点回となっています。

というか、しばらく主人公が出てこないかと思います……

「これはこれは、反逆者・・・のエリザじゃないか。魔物の巣でいったい何を?」



ダンジョンを進む騎士団一行の前に現れたのは、数日前に魔物との繋がりを暴露し、逃亡した騎士、エリザであった。


知性のある魔物との取引は、王国全体を危険にさらす行為であり、まず間違いなく極刑。それも背後関係を調べるために、数日、もしくは数ヶ月に渡って拷問してからの極刑である。


そんな大罪人に対する第一騎士団団長ラインハルトの口調も相当なもので、罪人であることをこれでもかと強調した物言いであった。



一方、エリザはそんな扱いも気にしない様子で、淡々と言葉を告げる。



「今さら何をしようというわけではない。ただ、警告をしに来たのだ」


「何を言い出すかと思えば……」


「このまま何もせず、今すぐダンジョンを出るが良い。でなければ、戦うことになるぞ」


「まさか、お前だけで俺を相手にできると?」


「私達は何もするつもりはないと言っただろう。このまま進行すれば、私ではなくヘレス殿の逆鱗に触れることになる」


「またその名か。お前達、もはや救うことはできないようだな」



エリザの忠告も知ったことかと、この場で切り捨てるつもりでラインハルトは剣を抜く。

人間としては最高峰、5000にすら届くステータスの威圧感は半端なものではない。


それもそのはず。《勇者》の称号を持ち、『人類最強』と名高い騎士こそ、このラインハルトなのだ。



しかし不思議なことに、エリザは格上であるはずのラインハルトの威圧を受けてなお、表情一つ変えず言葉を紡ぐ。



「……これが最後になるな。幸運を祈る」


「逃がすかっ!」



突然、エリザの背後に現れる魔法陣。それが、空間転移の魔法陣であることを一瞬で見抜いたラインハルトは、剣を抜き放ち斬りかかる……が、何処からか突如現れた魔物によって阻まれてしまった。


魔物の正体はゴブリン。

通常、ステータスの低い冒険者でも討伐できるような弱い魔物であるが、このゴブリンは普通ではないことは明らかであった。


身を包む装備や握る剣が、ゴブリンには到底用意できないほど精巧なものであった。

何より、纏う雰囲気や立ち居振舞いが、ベテランの冒険者を思わせるほど洗練されたものである。



本気ではないとは言え、ラインハルトの一撃を弾いたことから、おそらくステータスもかなり高い。突如現れた脅威に騎士団員達は揃って息を飲んだ。


そんなゴブリンの威圧に騎士達が気圧されている間にエリザは転移を完了し、奥へと続く3つの分かれ道が口を開けるのみ。



「ちっ、逃がしたか……このゴブリンは手練れのようだが一体だ。囲めば……」


「正々堂々、一対一での戦いを望むがな」



剣を正眼に構え、一切隙の無い佇まいのゴブリンから、そんな言葉が放たれた。

ザワッと、騎士団員の間に動揺が走る。


魔物が人間の言葉を操るなどあり得ないのだ。もっと高位の魔物ならいざ知らず、ゴブリンなどという蛮族は意思の疎通すら難しいというのが通常の認識だ。


それが、言葉を理解するどころか不自由無く操るとは……それはまるで、あの二人の反逆者の報告にあったような……。



「と言うと思ったか? さすがにこの人数に囲まれて戦いに挑むほどバカじゃねぇよ」



そんな一言が聴こえると同時に、目の前のゴブリンは振り返って真ん中の通路へと飛び込んだ。


騎士団が狙いに気付いた時にはもう遅い。

騎士団からすれば、強力な魔物を倒すチャンスを逃し、無傷のまま逃がしたことになる。魔物の討伐を目的として来た彼らにとってはこれ以上無いほどの失態だろう。


人間を手玉にとったゴブリンの行動に、ラインハルトのこめかみに青筋が浮かぶ。

それを窘めるのは、第三騎士団総長でもある魔法使いの老人、ダグリスである。



「くそっ、バカにしやがって!」


「落ち着くのじゃ、ラインハルトよ。これも知性ある魔物の策。冷静さを欠いては、彼奴らの思う壺じゃ」


「でもさー、私も結構ムカついたよ? あんたは何も思わない訳?」


「儂はお主らより客観的に物事を見ているだけじゃ。ほれ、道は丁度三つある。手分けして件の魔物を探すとしようぞ」


「チッ……」



ラインハルトは舌打ちしながらもダグリスの指示に従う。

騎士団の中では、王侯貴族の守護を行う第一騎士団が最も権力を持っており、第三騎士団の権力は弱いという風潮がある。


しかし、ダグリスに限り、それは当てはまらない。

それは、彼が単純に強いから。

王国どころか、世界中を探しても右に出る者は無しと言われるほどの魔法の使い手であり、ステータスこそラインハルトには劣るものの、知識も経験も若いラインハルトやサリエリよりも遥かに豊富である。


何より、ダグリスこそがラインハルトの戦いの師であり、いつまでたっても頭が上がらないのである。



「儂の『魔力感知』には幾つか強力な気配がかかっておる。油断せずに行くがよい」



ダグリスはそう言うと、ラインハルトとサリエリに強化魔法バフをかける。人類でも最高峰のステータスがさらに強化され、その実力はまさしく一騎当千と言えるだろう。



「次は確実に仕留める。第一騎士団、ついてこい!」


「さぁ第一騎士団よりも手柄を上げるよ!」



強力な魔物の出現に落ちかけていた士気が、三人の総隊長の声によって再び上がり始める。彼らについていけば何も心配はいらないと、三つの通路へと進んでいく各団員。



彼らが本当の地獄を知ることになるのは、もう間もなく―――


誤字報告ありがとうございます!

ストックがなくなってきてそろそろやばいかも……


7/6 一部修正しました。

ナイスガイさんの存在を消すことで矛盾を解消する力業。

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[気になる点] 王城に囚われているハズのデリガードが居ることには反応なし? [一言] 『人類最強』と名高い騎士に、世界中を探しても右に出る者は無しと言われるほどの魔法の使い手。 こんな二人を抱えてるこ…
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