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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
天災の誕生
30/74

とりあえずで王城を破壊する悪夢の権化(一部別視点)

評価・ブックマークありがとうございます!

先に謝っておきますが、書きたい内容を詰め込んだ結果、ころころと視点が変わってしまいました。

分かりにくかったらごめんなさい。

へレスに命令を受けたラクネアは、洞窟内を疾走しながらいろいろな考えを巡らせる。


母さん―――ヘレス様は無茶振りがすぎる……。

何で僕がわざわざ人間を助けに行かなきゃダメなのかな。

しかも、生まれたばかりの僕らを殺そうとしたやつらでしょ?

ハァ……。


まぁ、僕にとってヘレス様の命令は絶対だから、言われたからには完遂するけど。

きっと、カローネとバエウスも同じことを言うと思う。



……ヘレス様のスキルのせいか、ヘレス様の考えや意志が僕たちにも伝わっている。

たぶん、これがへレス様が持ってる《女王の支配》の効果なんだと思う。

思考や感情すら支配する異常なスキルだ。


僕たちに伝わっているのは、ヘレス様のドラゴンに対する憎しみや、僕への愛も全て。

言葉は要らない。

種族が違っても、魂で繋がった家族。

これほどまでに僕らのことを想ってくれているんだ。

応えるしか無いだろう。



数分して見えてきたのは、巨大な扉。この迷宮の管理をする人間が備え付けたものらしい。その側には、門番らしき人間が二人。



だから何だという話だ。

《隠密》によって気配を消し、《韋駄天》と《急所撃ち》によって即殺。

二人の人間は、苦しむどころか死んだことに気づかないまま処理された。


そのまま《斬撃波》によって扉の一部を切り裂くと、淡い光に包み込まれた。

『月』というらしいのだが、僕は初めて見た。

『夜』という時間帯の暗さと月明かりの心地よさに、初めて見る僕も好きになれそうだ。


でも、『昼』という時間帯になると、『太陽』が出てきてものすごく眩しいらしい。

そうなる前に、さっさとデリガードとかいう男を連れて帰ろう。


凄まじいスピードで大地を疾走し始めるラクネア。

決して敵対してはならない厄災が、地上へと放たれた。



          ♢♢♢♢



「凄まじい魔力反応が一体! 真っ直ぐ王都へ向かって……いえ、西門突破されました!」

「なんだと!? 門番は何をしているっ!」

「分かりません! ですが、王都の警備を軽々突破するほどの魔物です!」

「クソッ! 緊急出動スクランブル! 迎撃にあたれっ!!」



王宮の一室、警備兵の待機室に怒号が飛ぶ。



「西門、応答せよ! どうした! 何が来ているっ!」

『分かりません! 敵がっ、見えない! 姿が見えないのに仲間が次々と……ぐぁっ!』

「どうした!おいっ、応えろ!」

「魔力解析結果出ます! これは……ひぃっ!」

「なんだ! 早くしろ!」

「え、S+ランクオーバー! ナイトメア・クr」



その名が伝えられる前に、観測員の首が飛ぶ。物理的に、鮮血を撒き散らしながら。

それは、ついさっき王都の西門を突破した魔物が、ほんの数秒で王宮へ到達したことを示している。


今、目の前で仲間が殺されたというのに、敵の姿は未確認。

桁外れに高いAGIと高レベルの隠密スキルによって引き起こされた悪夢だ。



『ナイトメア・クロウラー』―――長い歴史の中に極稀に出現し、その度に壊滅的な被害を刻んできた、まさしく悪夢の権化。

そんな化け物がなぜここに……と考える暇さえなく、衛兵団長の男は意識を永遠の闇の中に落とした。


直後、王宮全体を揺さぶるような衝撃と轟音が駆け抜ける。侵入した魔物が、王宮の一部を破壊した音だ。


もちろん、その音や衝撃は地下牢に幽閉されているデリガードにも届いている。

と言うより、破壊されたのは王宮の床、地下牢の天井部分であり、しかも狙ったかのようにデリガードのすぐ近くだ。



「っ……」



両手足を縛られたまま、飛び散る瓦礫をやり過ごしたデリガードは、直後に感じた肌が泡立つほどの恐怖に身をすくませた。姿を見るまでもない。この気配は、『ヘレス』と名乗った魔物と同類、もしくはその系譜のものである。


明確な死の接近に絶望するデリガードの目の前に、現れた魔物。

姿形は変われど、纏う雰囲気は忘れもしない。

あの時の蜘蛛がゆっくりとその姿を見せた。














そうそう、この人だこの人。

産まれて間もない僕らを殺そうとした人間の一人。


……ふーっ……落ち着け。

ヘレス様のご命令だから……ちゃんと連れて帰ったら、きっと褒めてくれるから。



「俺を殺しに来たのか……?」



違う。本心は殺したいけどね。



「お前の怒りもよく分かる。俺は逃げも隠れもしないから、一思いにやるがいい」



違うって。こういう、人間の変に拘りが強い所とか嫌いだ。


男を拘束している枷を軽々と破壊し、暴れられても困るから糸でぐるぐる巻きにして抱え上げる。

男がなぜかおとなしいのが救いだ。



ん、そろそろ周りが騒がしくなってきたから逃げよう。

……せっかくだから途中でおやつも拾っていっていいよね?



          ♢♢♢♢



あ、おかえり、ラクネア、

ちゃんとナイスガイを連れてきてくれたようね。ありがとう。


褒めて褒めてとすり寄ってくるラクネアを撫でてやると、嬉しそうに耳のような突起をピコピコと動かしてる。


うーん、可愛い……。


で、なんかナイスガイは気絶してるんだけど……『水魔法』、えいっ!


ナイスガイの頭からバシャッと水をかけてやると、ようやく目を覚ましたようだ。酷く咳き込んでるけど、まぁ仕方ないよね。



「ゴホッ……隊長!」



ナイスガイはくっころさんを見て喜色を浮かべたかと思ったら、直後に私やラクネアを見て恐怖に顔を歪めた。


人間は私達と違って表情が変わって面白い。



「そう警戒するな、デリガード。私やお前を救ったのは他でもないヘレス殿なのだぞ?」



くっころさんはそう前置きし、今に至った経緯を説明する。



「なんと……」



くっころさんの説明を聞いたナイスガイさんはそう一言呟くと、眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。どうするべきか、思考を重ねているのだろう。


たっぷり一分ほど経過した後、ようやくナイスガイさんは口を開いた。



「ならば、今ヘレス殿は我々の味方だと考えてもいいのか?」

「私を裏切らない限りは」



くっころさんとも約束はしたからね。利用価値がある限りは、味方だと明言しておいていいだろう。



「ならば私も覚悟を決めなければならないな……私、デリガードもヘレス殿の配下となることを誓おう」

「どうも」



《女王の下賜》が発動し、私のステータスの約一割がナイスガイに加算された。


ナイスガイは予想外のステータス変化に驚いた様子で、自分の身体を確かめている。まぁ、そんな反応になるよねぇ。


ステータスの確認もそこそこに、ナイスガイさんは私の方へ視線を向けて話し始めた。



「そういえばヘレス殿、エリザから聞いてはいると思うが、王国騎士団の件……」


「うん?」


「私がラクネア殿に救い出された時には、すでに王都を発っていた。三日もする頃にはここに到着するだろうな。しかも、第一から第三までの騎士団、合わせて数百人の規模でここを攻めるつもりだ」



数秒の沈黙の後、大きなため息と共にくっころさんが天を仰いだ。



「愚かな……あれほど忠告したというのに……。私の思いが届かず、ただただ歯痒いばかりだ」


「しかしながら相手は数が多い。囲まれればあるいは……」


「無理だろうな。それでどうにかなるステータス差ではない」


「二人は、その騎士団とやらに死んでほしくないのかしら?」



二人の視線が私に集中する。



「……いや、魔物との戦闘で命を落とすことは珍しくないし、覚悟の上だ。仕方のないことだろう。だが、避けられたはずだと考えるとな……」



ナイスガイが首肯でくっころさんに同意する。

うーん、確かにそうかも。私にとってはエサが増えるからいいけど、くっころさんとナイスガイにとっては同僚だもんね。



「じゃあ、これはどうかしら。貴方達は戦いたくないだろうし、もし戦いになったら、こっちで全部やるわ。その前に、貴方達にはその騎士団に最終警告をして欲しい」


「最終警告?」


「ええ、『今すぐ引き返せば命は助ける。けど、戦うのなら容赦はしない』、と」


「ふむ……せめてそれぐらいはやってやれるか。分かった、へレス殿の言う通り警告だけはしよう」


「じゃあお願い。……それと、どうせ戦いになるから、準備は手伝ってくれないかしら?」


「準備? 構わないが、何をすれば?」


「魔物をできるだけたくさん狩ってきてちょうだい」



私がやろうとしてるのは、戦力の増強。そのために、『召喚魔法』を使ってみようと思うのだ。

召喚魔法は、鍛えれば強力なものとなるが、即戦力になるものではない。

しかし、私には《女王の下賜》があり、獲物を狩って食べるほど、配下も強くなる。


私が食べれば食べるほど生みだした配下が強化され、配下はより強い獲物を狩れるようになる。すると、私の強化がさらに加速して、回復したMPでさらに配下を生み出す。そしてさらに大量の魔物を……とループできる。



三日もあれば十分よ。

チート持ちの私が鍛える軍隊相手に、人間の誇る騎士団はどこまで戦えるかな?


誤字報告やコメントもありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラクネアの視点からサラッと《女王の支配》ついてとんでも無い事語られたんだど、思考や感情を支配するってぶっ壊れ効果にも程があるわ、ただでさえ《アナフィラキシーショック》と言うイカレスキル…
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