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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
天災の誕生
29/74

えっ、まさかの再会……!?

評価・ブックマークありがとうございます!

今回はちょっと長めです。

ただいま――っ!


私が住処に戻ってきた途端、ゴブリンだけでなく我が子も驚愕するのが分かった。

それもそうか。

自分の何十倍もある巨大な大蛇を仕留めて戻ってきたのだ。

それも、無傷で。


今のカローネとラクネアとバエウスだったら三匹がかりで勝てるかどうかといったところだろう。


うふふ、お母さん強いんだよ。



「へレス様……これはいったい……」



ゴブリンの一匹がゆっくりと近づき、大蛇を見上げながらボソリと呟く。

しばらく様子見していたゴブリンも、私が近くにいたことと、大蛇が全く動かないことから、大蛇が死んでいると分かったのだろう。


ゴブリンが驚くのも仕方がない。

ゴブリンからしたらアンタッチャブルな敵だろう。

ふふ、そろそろ私の強さが分かってきたかしらね。


さて、大蛇をそのまま食べてもいいけど、ゴブリンには調理の概念があるみたいだし、いろいろな料理を作ってもらおう。


じゃ、一先ず大蛇はゴブリンに預けておいて、また狩りに行こっと!



          ♢♢♢♢



「ヘレス殿……!」


私がカローネとラクネアを連れて獲物を探していると、薄暗い洞窟の中によく通る凛とした声が響き渡った。


ぅおっ、ビックリした。

あれ? いつかのくっころさん?

どうしてこんなところに?


ぁっ、待って、カローネ、ラクネア。

あなた達の気持ちは分かるけど、いきなり殺そうとしちゃダメだよ。


どうやら、くっころさんは私に用があるみたいだから。



疲労困憊といった表情で私の前に現れたくっころさんは、以前よりもさらに威圧感が増した私に及び腰になりながらも、意を決した表情ではっきりと言葉を紡いだ。



「私を生かす代わりに課された、我々人間がこの迷宮に侵攻しないように手を回す件について。あなたの望むようにならなかったこと、誠に申し訳ない……!」



んんっ? どういうこと?


一人で盛り上がって勢いよく頭を下げるくっころさんからよくよく話を聞くと、私と初めて遭遇した後、隊が全滅した責任を問いだたされたらしい。

まぁ、それは仕方ないだろう……全滅させたのは私だけど。


それで、国の軍事顧問や各騎士団の団長が居る前で、私に敵対してはいけないと言ってくれたらしい。

でもそれが裏目に出て、魔物と取引をしたとして罪人扱い。

ナイスガイが囮となってくっころさんを逃がしてくれたというのだ。


ここに向かう途中、他の騎士との戦闘をしながらも洞窟に逃げ込んだようだ。



くっころさんが裏切っていたら子蜘蛛が殺していたはず。でも生きているということは、くっころさんは私との約束を守ってくれたのだ。

その結果追われる身になったわけで……あれ、これ私のせい?



「とにかく、奴らはすぐにでも兵を挙げて貴女を殺そうと洞窟に侵攻を開始するだろう。それも、私の時のような数人の規模ではない。数百、下手したら千以上の兵で攻めてくるだろう」


「強いの?」


「……少なくとも、私より強い者が大勢いる。特に第一騎士団長など、貴女はともかく、貴女が大切にしている魔虫を殺せるほどの強さを有している」


「そう……ならもう少し戦力を整えておくわ。あなたはどうするの?」


「私は、おそらく捕まっているデリガードを助けに行く。流石に、すぐに殺されることは無いだろう」


「罠でしょう。あなたを誘き寄せるための」


「だとしてもだ! 私を逃がしてくれたデリガードを見殺しにできる訳がない!」


「そんな疲れ切った状態で? 間違いなく殺されるでしょうね」


「貴女の気遣いには感謝する。が、私が決めたことなのだ」



くっころさんの決心は強い様子。

うーん、私のせいでこうなったとすると、このまま放っておくこともできないなぁ。

いっそのこと、くっころさんをこっち側に取り込んじゃう?



「あなたの決意が固いのは分かったわ。でも、今はとりあえず休みましょう。住処に案内するわ」


「えっ……」



戸惑うくっころさんを無理やり抱えてその場を後にする。

悪いようにはしないから。

気まぐれだけど、あなたの出方次第でちょっとだけ協力してあげる。



          ♢♢♢♢



「ななななっ!」



鬱蒼とした森の中に、くっころさんの声が響き渡る。

くっころさんの目の前には、大勢のゴブリンと、バカみたいに巨大な蛇の死体。

そして、何かの肉の串焼きである。


もちろん、肉の正体は大蛇のものである。

ゴブリンが大蛇を捌き、焼いてくれたのだ。塩がないから少し味気ないが、数種類のハーブらしき植物によって臭みが消え、かなり美味しく仕上がっている。


人間であるくっころさんでも食べられるだろう。現に、こんなに驚いてくれたのだから。



「こんな化物みたいな大蛇すら狩るとはっ! いや、ここにいるゴブリンからしておかしい! こんなっ、こんなことがっ」



美味しさに驚いた訳ではないようだ。

まぁ確かに、ここにいるゴブリンはくっころさんが知っているゴブリンとは全く別物だろう。


ゴブリンは私の配下になったことで、《女王の下賜》によりステータス上昇の恩恵を受けている。それも、私のステータスの1割だけ上昇するため、ゴブリン一匹一匹のステータスは全て5000超え、下手したら1万に届くほどの強さである。


そんなゴブリンが数十匹。圧倒されるに決まっている。



「まぁ落ち着けよ、姉ちゃん。ヘレス様の客人だろ? 取って喰やしねぇよ」


「なっ、魔物が喋った!?」



ゴブリンの一匹がそんな台詞を喋りながら、焼き上がった追加の蛇肉を葉の皿に乗せくっころさんの前に置いてやる。


そう、このゴブリン達も人間の言葉を話せるのだ。

元々人間に近い身体の構造をしていたので、私が《言語理解》を与えてやったらすぐに話せるようになった。


一方で、知識を与えた私を神様のように崇めだしたのは別のお話である。



良かれと思って美味しい食事を用意したのに、くっころさんにとって非常識の連続で、なかなか落ち着かないようだ。

本題に入るまではまだまだかかりそうだ。



「提案なのだけど……あなた、私達側に来てくれない?」


「なっ……それは、王国を出て魔物側につけ、ということか?」


「そうよ。……王国には、もう戻る場所はないでしょう?」


「それはそうだが……」



串焼きを頬張りながら、渋い顔をするくっころさん。

まぁ、そりゃ迷うよね。

私にとっても、くっころさんを仲間に引き入れたい理由ができた。


くっころさんは王国の騎士団員のようだし、人からの信用はあるだろう。

以後王国に戻ることができなくても、他国に帰属することはできるのではないかと考えた。



そうしたら、私も色々な国の情報を仕入れることができる。


そして何より、くっころさんを仲間に引き入れたい一番の理由。

それは、くっころさんのステータスに記された、《傲慢の種》というスキル。


私は《暴食》、《強欲》、《憤怒》を持ってるから分かるが、あれは確実にその類いのスキルだ。敵に回したくはないし、できれば私が欲しい。



くっころさんを殺してしまえば奪えるが、それもどうかと思う。


私の子ども達を傷付けた前科はあるが、それは水に流したし、くっころさんの今の追い詰められた状況は間接的に私が招いた結果だ。


さすがの私も心までは人間を止めるつもりはない。

そんなわけで、ぜひとも仲間に引き入れたいのだ。


くっころさんの心が揺れるのが分かる。

もう一押しかな?



「なら、そのデリガードって人も一緒にどうかしら? あなたの代わりに助けに行ってあげるわよ?」


「なっ、本当か!?」



おぉう、すごい食いつき。

やっぱり、くっころさんにとってナイスガイは大切な人なのかな?



「約束するわよ? すでに死んでいたらあれだけど、もし生きていたらここまで連れてきてあげるわ」


「っ……」



目を伏せて葛藤するくっころさん。随分迷っているようだ。

騎士団に入った時から、もしかしたらそれよりもっと以前から、『魔物は敵』と認識して生きてきたのだから当然だ。けど、そんな彼女は一度死んだと言っても良いだろう。魔物に命を救われ、逆に人間には敵視され追われる身となった。


今までの自分が全て崩れていく感覚。

分かるよ。私も経験した。

そして、自分のために生きていくのだと誓ったのだろう? それ故の『傲慢』だ。


何者にも囚われず、あなた自身の考えを見せてほしい。



「……分かった。第三騎士団分隊……いや、そんな肩書きは必要ないな。私、エリザ・マーガレットは貴女に忠誠を誓う」



腰に提げていた剣を鞘ごと抜いて自分の前に置き、私に向かって膝をついてそう宣言した。

とても絵になる、まさに物語の一節といった光景であった。


そしてその直後、《女王の支配》によってくっころさんのスキルのステータスが私にも加算され、逆に《女王の下賜》によって私のステータスの1割がくっころさんに付与される。


これによって。くっころさんのステータスは1万近くまで上がっただろう。



「これは……凄まじいな。しかし、これほどのステータスを手にしても尚、貴女の足元にも及ばないことに戦慄を禁じ得ない」



そうでしょうね。

くっころさんのステータスはすでに、人間の域を超えている。

でも、それは私のほんの1割だ。むしろ、差がはっきりとした分絶望するかも。



「さて、約束ね……ラクネア、悪いけどナイスガイ……デリガード?って人、連れてきてくれない?」



突然私に声をかけられたラクネアの獣耳っぽい突起がピコッと立つ。うーん、可愛い……。


というか、私の指示の内容に驚いてるんだよね。

そりゃそうだ。

ナイスガイはこの子達を殺そうとした張本人。それを助けてこいだなんて、普段から冷静で頭のいいラクネアもビックリだろう。


でもなぁ、建物の中だとカローネの機動力は激減だし、バエウスだとそもそも遅い。入り組んだ中だとラクネアが適任なんだよね。



「ね、お願い」



私がそう言うと、渋々といった様子でラクネアは背を向け、地上へ向けて疾走しだした。《女王の下賜》によって《韋駄天》を与えたからか、とんでもないスピードだ。


数秒もしないうちに、私の《熱感知》の範囲外に消えていった。


じゃ、私は私で、戦闘に向けて準備をしようかな。


誤字報告等もよろしくお願いしますー!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラクネアって蜘蛛の子だよね、蜘蛛に獣耳っぽいものあったっけむしろ触覚ぐらいしかないような、それとも異世界ならではなのか?
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