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転生したらまさかの蜂の魔物って、噓でしょ……?  作者: 風遊ひばり
天災の誕生
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貧乏くじ騎士団団長・エリザ(別視点回)

評価・ブックマークありがとうございます!

今回は別視点回となります。

はぁ……本当に運がない。

もう少し遅く帰っていれば私に回ってくることも無かったのに。



多くの人々が賑わうメートリス王国の街中を、鎧を装備して歩く男女が一組。

その片方の女性、エリザは一人ため息をついた。


彼女は王国が誇る第三騎士団の隊長である。

と言っても、たくさんある分隊のうち一つを纏めるだけの隊長であるが。


王侯貴族の身辺警護を主とする実力者揃いの第一騎士団、人口約5百万人を誇る王国の治安を守る第二騎士団に次ぎ、魔物の討伐を主とするのが、第三騎士団である。


そう言えばてい良く聞こえるのだが、裏を返せば冒険者ギルドで対応しきれなかった魔物を押し付けられる貧乏くじ騎士団でもあるのだ。



つい先日、押し付けられた魔物を討伐して帰ってきたばかりだというのに、再び依頼だとギルドマスターに呼び出された。


手に負えない魔物に手を出すの、本当に止めてもらえないかな。

冒険者も、いざという時に自分で何とかできないのなら冒険者なんかやめなさい。


なんて、軋轢を生むから口が裂けても言えないけどね。



さて、気持ちを切り替えねば。

私が弱気では、団員にも伝播してしまう。

団長として、メンタルのコントロールはしっかりしなければ。



「第三騎士分隊隊長エリザ、参上致した!」


「おぉ、おぉっ!来てくれたか!」


「ど、どうしたというのだ……」



ギルドマスターが出迎えてくれたのだが、少々目が血走りすぎている。

ちょっと怖いのだが……。

引き攣った表情が出ていないが心配だ。



「エリザ殿も察しておることだろうが、少々……いや、かなり厄介な魔物が発生したようなのだ」



はぁ、やっぱり。

手を出さなければいいと言うのに。

まぁ、住民に危険が及ぶようであれば、私も全力を尽くすが。



「して、その魔物というのは?」


「『深緑の狩人』が記録石によって鑑定した結果がある。まずはそれを見てくれ」



そう言ってギルドマスターが持つ『記録石』が鑑定結果を表示した。



名前:無し

種族:女王魔蜂ディアボロヴェスパ・カラリエーヴァ(変異体)

Lv:5

状態:激昂

HP:6950/6950

MP:2758/2758

STR:3988

VIT:1882

AGI:3460

DEX:3428

RES:2260



絶句した。

HPが約7千!?

私でもHPは2千を少し超えた程度だというのに、三倍だと!?

しかも、それ以外のステータスも半分が3千を超えている……こんな、こんな魔物が……。



「隊長、どうされました?」



副隊長であるデリガードに声をかけられ、ハッと意識を取り戻す。

あまりの衝撃に呆然としていたようだ。



「これを見てくれ」


「これはっ……凄まじいですな」



眉間に皺を寄せて鑑定結果を睨むデリガードに声をかける。

彼は私が信頼を置く、隊のタンクとして優秀な人物だ。


不退転で知られる彼も、あまりに異常なステータスに言葉を失っているようだ。


装備をしっかりと整えれば、私のSTRも3千を超える。

この魔物のVITが低めなのが救いか……それでも千八百あるのだが……。

だが心配なのが……



「デリガード、お前ならこの魔物の攻撃を受けられるか?」


「約4千か……装備を完璧にして、HPが満タンの状態なら二回は受けられるか。回復要員が必要になるが、それだけ隊員の数も必要になるが……」


「いや、構わん。鑑定によると、この魔物のレベルは5しかない。つまり、まだ成長するということだ」


「一刻も早く討伐するべきだな」


「うむ、討伐に出向くからには、必ず討伐しなければならない」



これは紛れもない本心である。

我ながら、なかなか難儀な性格なものだ。

ここに来る前は不運だの面倒くさいだのと考えていたにもかかわらず、今は如何に被害を出さず、確実に討伐できるかを考えている。


こういう性格だから貧乏くじを引き寄せるのだ。

『貧乏くじ騎士団』なんて呼ばれるのも私のせいかもしれないな。



「デリガード、頼りにしているぞ。……では、討伐依頼承った。早速取り掛かる故、失礼する」


「あぁ、頼んだぞ……」



ギルドマスターに礼をし、私とデリガードはギルドを後にする。

さて、大事が起こらなければいいのだが……。



          ♢♢♢♢



「集まったな?お前達に、新しい依頼が来ている」



第三騎士団の集合場所に、私とデリガードを含め13人の騎士が集まっていた。

フルプレートで武装した彼らの前に立ち、ギルドから借り受けた例の魔物の鑑定結果を表示する。


その結果を見た瞬間に、隊員の間でざわめきが広がった。



「見ての通り、今回の依頼の魔物は強い。そして、この鑑定結果はおよそ3日ほど前のものだ。つまり、現在の魔物は更に強くなっている可能性がある」



私の声を聞き、隊員達の表情が引き締まる。

やはり、私の隊員は頼りになる。

不安を煽るような言い方をしても、むしろ闘志が宿るほどだからな。


私には勿体ない部下達だ。



「しかしながら、お前らも前回の依頼から帰ったばかりでモチベーションも上がらないだろう。そこで、依頼を達成した暁には私から報酬をやろう。なんでも良いぞ(・・・・・・・)



うおっ、何故そこで歓声が上がるのだ。

ふむ……ならば良いものを用意しなければな。



「明日の早朝から出発する。各自、今日一日でしっかりと準備をしておくように。では、解散!」



士気も上々。

普段の依頼よりも強い魔物だが、これなら問題あるまい。



と、この時は軽く考えていた。


再び誤字報告をしてくださった方、ありがとうございました!


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