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蟻地獄  作者: 揚羽蝶
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第三話

 虫の描写が出てきます。苦手な方はご遠慮ください。

 アリの天敵は、鳥や蜘蛛ということだ。それはアリを食するという意味での天敵だが、実際は大動物も天敵と言っていいらしい。

 犬とかその他の野生動物だってアリにとっては自分の数十倍も大きいからかなりの脅威だ。

 つまり食べられるというより、踏みつけられるという意味でアリの天敵だ。ゾウなんかに踏まれたら、一度にやられる数は相当数だ。

 もちろん人間だってそうだ。知らず知らずのうちにアリを踏みつけていることなんて数知れずだろう。


 けれど、そんなに小さくて弱いアリは、世界中に蔓延っている。何しろ絶対数がすごいのだ。

 ちょっとやそっとじゃ滅びやしない。


 …とすると、家に出てきたアリを滅ぼすのも一筋縄ではいかないのだろうか。

 少なくとも自然の摂理に任せている限りは無理な話のような気がする。

 今はいろいろ便利なものが売ってるからな。それで何とかするしかないか。明日の仕事帰りにドラッグストアに寄って物色してみようかな。


 アリはここ2日出てきていない。このまま出てこなかったらアリを駆除するものも別に買ってこなくてもいいんだけど。無駄な出費は控えたい。


 今日も安心して眠れそう。よかった。

 電気を消して布団に潜り込む。至福の時間。


 翌日もアリは現れなかった。それはそれでいい。逆にどうしてあの数匹はあのとき出てきたのか?

 本当にいないよね?調味料ラックの中の砂糖や乾物を覗いて見る。

 アリの影はない。


 ドラッグストアに行くまでもなかったか。


 アリが出なくてよかったはずなのに、なぜかアリのことが気になって仕方ない。アリのことなんて考えたくもないのに、どうやら思考がアリに蝕まれているようだ。


 職場に行って仕事に集中しよう。そうしたらアリのことなんて、きっとすぐに忘れる。

 つまらない仕事だけど、アリのことを考えるよりはるかにマシだ。

 

 仕事に行く道すがらだった。

 職場までは電車で一本で、30分ほどの時間がかかる。家から駅まではおよそ10分。各駅停車しか停まらない最寄り駅までの道はとてものどかで、私はとても気に入っている。


 ふと、アスファルトの地面の端を見やる。


 アリの行列だ。


 せっかくアリから逃れるためにさっさと職場に行こうと思っていたのに、こんなにも大量のアリを見せつけられるなんて。

 不快極まりない。


 見るとその行列は延々続いていて、私が目で追えただけでも数百メートルはあった。

 その先も続く行列。一体どこへ行くのだろう。獲物を捕まえるだけの行列で、こんなにも大量でこんなにも長い行列は見たことがない。


 「嫌だなぁ、アリ」


 そう呟きながらも、やっぱりアリを気にしてしまう。

 そんな思いを払拭するかのように、私は駅への道を急ぐ。

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