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蟻地獄  作者: 揚羽蝶
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第二話

 虫の描写が出てきます。苦手な方はご遠慮ください。

 アリジゴク。ウスバカゲロウの幼虫。雨の当たらない軒下などの乾いた砂地にすり鉢状の巣を作り、獲物を待ち構える。

 獲物が迷い込んできたら、巣穴から這い上がれないように大アゴで砂を搔き出し獲物にぶつけ、ズルズルと巣に引きずり込む。

 成功したら猛毒のある消化液を獲物の体内に注入してそいつを仕留める。

 獲物の体液を吸い尽くすと、外骨格は用済みとなり、巣の外に放り出される。

 狩りの方法はタナボタ式で、成功率は思ったほど高くないようだ。一週間に一匹しか獲物を捕らえることができないときもあるとか。だからアリジゴクは飢餓に対して非常に強い耐性がある。


 家に現れたアリのせいで、こんなものまで知識として取り入れるようになってしまった。


 それにしてもアリジゴクなんて名前がついているのだから、アリを捕まえたら絶対に逃さないかと思いきや、アリばかり捕食するわけではないし、大きなアリはよく取り逃してしまうらしい。結構名前負けしてるじゃん。

 

 そうか、アリジゴクでもアリの狩りは難しいのか。

 ならば家のキッチンに現れるあいつらはどう駆除したらいい?

 元よりアリジゴクに駆除してもらおうとは思っていないけれど。


 今日は家の中でアリを見ていない。

 たまたま数匹が迷い込んできただけかな。


 今日は安心して寝られそうだ。

 

 


 翌日はよく晴れて朝から暑かった。こんな日は涼しいエアコンの効いたオフィスにさっさと行くに限る。

 簡単に朝食を摂ろうとキッチンに行くと、いた。


 アリだ。


 しかも食べようと思っていた食パンに(たか)ろうとしている。


 「…やめてよ…」



 まだ行列と呼べるほどの数ではないけれど、確実に数が増えている。見たところ10匹ほどいるようだ。


 私はアリを手で大雑把にシンクへ追い払い、勢いよく水を流す。

 そして食パンの袋を開けて中身を確認する。


 よかった。中身は無事だった。


 少しほっとしたけれど、他にもいないかキッチン周りを隈なく見回る。

 さっきシンクに流したアリがまた復活したら困るからと、シンクに熱湯を回しかける。


 まったく、排水溝は熱湯に弱いのに。


 そんなところに気をかけて、朝食を食べようと時計を見るといつもと同じ時間になってしまった。


 アリのせいだ。

 アリは嫌だ。本当に嫌だ。

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