舞台裏1
視点変更してます。
下世話な噂話というのは同性同士で広まるというのは12年しか生きていないボルフスでも知っていた。
年上の友人であるミルティの婚約者が表向きは好青年だが、実は遊び人だというのは紳士界隈ではまことしやかに囁かれていた。
僕がその情報を入手した時、ミルティのために確かめようと思った。
調査したところ婚約者であるフランソワはたしかに女癖の悪い男だった。
現在の奴は婚約者がいるにもかかわらず未亡人のミネルバ男爵夫人と恋人関係にあるらしい。
それをあらためて確認して、ボルフスの心の中には憎しみが溢れてきた。
ミルティを裏切って放蕩三昧な阿呆にミルティはやらない。
ボルフスはあいつを嵌める事にした。
◆◆◆
ベルギフ伯爵邸のパーティーにフランソワとミネルバ男爵婦人が参加するという情報を入手した僕は王子という身分を隠して変装してパーティーに潜り込んだ。
そんなボルフスが現在いるのは休憩用の部屋の一つのクローゼットの中だ。
フランソワとミネルバ男爵が逢い引きに休憩室を使っていることを掴んだボルフスは乳兄弟でもある従者協力の元空いている休憩室をボルフスが潜んでいるこの部屋のみにして、クローゼットに隠れて待機していた。従者は何かあってもフォロー出来るように廊下に隠れている。
しばらくして、扉が開く音と2人分の足音が聞こえてきた。
話し声とベッドに倒れ込む音が聞こえ、そっと隙間からベッドの様子を窺う。
そこには男女が睦み合っていた。
男の方は以前確認したフランソワで間違いない。
女性の方はミネルバ婦人かわからなかったが、フランソワより少し年かさなようだった。
正直いうとフランソワが不貞をしていれば誰だろうと構わない。
それにしても閨について実地で見る機会は早々ないのでそれに関しては勉強になるがその対象がミルティの婚約者なのは普通に不快だ。ボルフスが実践したい相手がミルティなので尚更。
本当は念のために何度か不貞を確認しようと考えていたが、密室に男女がいれば十分醜聞になるだろうと確認は今回だけにする事にした。
◆◆◆
コンコンコン。
フランソワたちが去ってから少しして、従者と決めていた合図のノック音の後扉が開く音がした。
ボルフスはそっとクローゼットの扉を開いて従者の姿を確認するとすぐさまクローゼットから出た。
「ボルフス様大丈夫でしたか?」
ボルフスが何を見たのか多少なりとも予想出来ていただろう従者から心配そうな声がかかる。
「あぁ、大丈夫だ。流石に恋敵の不貞現場は不愉快だったがな。グレイもご苦労。何かあったか?」
「フランソワとミネルバ婦人はそれぞれそ知らぬ振りをして別れて会場に戻ったのを確認したぐらいです」
「そうか。では、我々も撤収する事にしよう」
「かしこまりました」
2人はすぐに侯爵邸を後にした。