表舞台6
フランソワとの婚約破棄が王宮で成立してから早1週間。
ミルティは自宅の応接室で緊張するはめになっていた。
目の前には以前は花園でたびたび会う友人のボルフであり、実際は1週間前に13歳になったこの国の第3王子ボルフス殿下が座っていた。
金髪碧眼の麗しい顔を今は申し訳なさそうに歪めてミルティを見ている。
「ミルティ僕のせいでごめんね。大丈夫だった?」
王子だとわかってからもボルフスは偉ぶる事はなく以前までの物腰柔らかな口調で謝罪する。
「……ボルフ…ス殿下が謝罪する事はございません。
こちらこそ、お気遣いいただきありがとうございます」
ボルフスの今までと変わらない口調にうっかりボルフと言いかけ、少し緊張しながら言葉を続ける。
「でも、僕が君の元婚約者の不貞を目撃してしまったから騒ぎが大きくなってしまったから」
たしかに会場中に知られる事になったのは13歳と歳の若い王族が目撃したためだ。
他の自国民が目撃したのであれば内々で騒ぎはおさめただろう。
ミルティはなおも申し訳なさそうにしているボルフスに彼が本当に申し訳なく思っているのはミルティにとっても騒ぎが大きくなったせいで当分夜会に行けなくなった事なのかもしれない。
婚約者のいないミルティは新しい出会いを探さないといけない。でも今は噂の中心に近いミルティは夜会など表には出られないので出会いを探せないのだ。
「……ミルティ。それで、傷心中な事はわかってるんだけど、僕との結婚を考えてもらえないだろうか?」
「…………え?結婚!」
シリアスな気分でいたミルティの耳に届いたのは予想外の求婚だった。
少し下を向いていた顔を驚いてボルフスに合わせるとほんのり顔を赤らめたボルフスの瞳と目が合う。
まだ13歳だというのにほんのり色気の様なものを漂わせるボルフスにミルティも知らず顔が赤くなる。
「ボ、ルフス殿下。殿下が責任を感じる必要はないのですよ。殿下も知っていると思いますが私は5歳も年上です。殿下ならよりどりみどりなんですから」
そうだ、ボルフスは私の婚期が遅れる事を心配して言ってくれたんだろうと、混乱する頭で考え慌てて説得する。
「ミルティ。僕は貴女と花園で話をするのがずっと楽しかった。貴女となら幸せに暮らしていけると思ったのです。
……貴女は僕との話は楽しくなかったですか?」
少し悲しげに小首を傾げる姿に庇護欲を掻き立てられる。すぐさま貴方の良いように!と言ってしまいそうになる。
「私もボルフくんと話をしているのは楽しかったです」
「良かった。では、すぐに侯爵に婚約の打診をしてきます」
今の言葉のどこをどう取ったら了承したことになるのかわからないままさっさと父のところに向かったボルフスを呆然と見送ることしか出来なかった。
表舞台編は終わりです。
次編に続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。
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