表舞台4
翌日。ミルティは父と共に王宮に向かった。母と兄も付き添いたそうだったが、昨日の今日だ。もしかしたら他の貴族家から事情確認の訪問の可能性もあったため2人にはそちらの対応をお願いした。
名前を名乗って通されたのは王宮にある応接室だった。
そこにはすでにフランソワとその両親である伯爵夫妻、それとミネルバ夫人が着席していた。
フランソワとミネルバ夫人が縮こまっており、伯爵夫妻がミネルバ婦人を睨んでいるので非常に空気が悪い。
ミルティと父が室内に入って来たのに気付いた伯爵夫妻が慌てたように父の元にやって来た。
「この度は愚息が申し訳ございませんでした」
2人は平伏する勢いで頭を下げている。しかしどちらかというと父に頭を下げている感じだ。
「……謝罪は私ではなく娘にではないですか?」
父の静かな声が室内に響く。
それでようやく気付いたように伯爵夫妻がミルティに頭を下げる。そんな様子をミルティと父は白けたように見ていた。
「……それで?当のご子息からの謝罪はないのか?」
父はもう名前も呼びたくないのか立場の名称でフランソワを呼ぶ。
それに伯爵夫妻と名指しされたフランソワが目に見えてびくついた。
「フランソワ!」
伯爵が強く呼びつける。
それに躓きそうになりながらこちらにやってくるフランソワ。
「……そこの女、は?」
父がミネルバ婦人を睨む。
ミネルバ婦人も顔を青ざめさせながらこちらにやって来た。
「申し訳ございませんでした」
2人が揃ってミルティに頭を下げる。
ミルティはどうして良いかわからずため息を吐いた。
ここで許すなどの言葉をかってに言う訳にはいかないからだ。
なんとも言えない沈黙が漂う室内に扉をノックする音が響く。
「陛下、妃殿下が来られました」
内心助かったと思いながら入り口から父と椅子の方に向かう。
伯爵親子とミネルバ婦人も椅子の前に戻っていた。