表舞台2
やがて王族への挨拶が終わりダンスの時間がやってきた。
ここでのファーストダンスは親兄弟親類または婚約者が踊るのが普通。
フランソワはミルティの体調がどうなのか横目で窺ってきた。
「フランソワ、私はもう大丈夫だから踊りましょう」
ミルティの言葉に了承したフランソワは座っているミルティに手を差し出してくる。
これを優雅に受けてミルティとフランソワもダンス場所に向かった。
フランソワはダンスも上手い。ボルフス殿下の件で少々上の空なミルティを華麗に舞わせていた。
フランソワと踊った後、知り合い何人かと踊り少々疲れたなと思っていた頃。
「ミルティ疲れた顔をしているよ。休むかい?」
フランソワに言われてそれに頷きソファまでエスコートしてもらう。
「僕はまだ挨拶があるんだけど、1人で大丈夫?」
「……えぇ。ここで待ってるわ」
これがフランソワとの最後の会話になった。
◆◆◆
「ミルティ! 今すぐ帰るぞ」
フランソワと別れてソファで休憩していたミルティの元に慌てた様子の兄が現れた。
「えっ?お兄様? ですが、フランソワがまだ来ておりません」
「フランソワだって! ……あいつの事は良いんだよ。早く帰ろう」
「え?」
ミルティが何が何だかわからないうちに兄に腕を取られて立ち上がったが、兄の行動は間に合わなかった。
フランソワとミネルバ婦人が部屋で密会しておりそれを第3王子のボルフス殿下が目撃したとして会場が騒然となったのだ。
それを、耳にして、周りから同情や憐憫、嘲笑の視線がミルティに向けられる。
兄が舌打ちしてミルティからその視線を隠すように立ち位置を変えたことで兄の行動がようやく府に落ちた。
兄はこの情報を先に入手しておりミルティを庇うためにとんで来たのだと。
「ミルティさっさと行くぞ」
今度は兄の言葉に素直に頷いてミルティは会場を後にした。