表舞台1
「ミルティ僕のせいでごめんね。大丈夫だった?」
今、ミルティの真正面のソファに座っている申し訳なさそうな表情をしている美少年をぼんやり眺める。
ミルティは一週間前の怒涛の展開に今現在も頭がついていかないでいた。
目の前の美少年ことボルフス殿下は一週間前に正体がわかるまで、ミルティにとってよく行く花園で会う弟のような友人ボルフ君だった。
それが、この国の第3王子の13歳の誕生日の夜会にて第3王子ボルフスとして、いつも着ている少し良い服からその服で庶民が何年暮らしていけるのかというような煌びやかな衣装を見事に着こなして国王の隣に佇んでいた。
「……ミルティ大丈夫?疲れたのかい?」
隣でエスコートしてくれている婚約者のフランソワを見上げた。
彼はすらりとした美丈夫で並んで歩くと多くの令嬢の視線を感じる。
フランソワと婚約する事になった理由は他の多くの貴族家と同じように当主が決めたものだった。我が侯爵家とフランソワの伯爵家は繋がりが出きると双方都合が良いのだ。
フランソワとの婚約が決まった時周りの友人たちは皆羨ましがった。
あんな素敵な人と結婚できるなんて羨ましいと。
ミルティも市井に溢れる恋愛小説のような恋に憧れたこともあったけど、今は折り合いをつけている。
皆も言うように彼は容姿も良くて優しい素敵な婚約者だ。
王族の入場を知らせる鐘がなり、場は賑やかになる。
今日一番の注目は本日お披露目の第3王子のボルフス殿下の事だ。
最初に国王、王妃、第1王子、第2王子、第1王女、そして最後に第3王子が歩いて来る。
その第3王子を見て、ミルティは飛び上がるように驚いた。外見には出さず内心とても混乱していた。
何せ第3王子はミルティがよく行く花園で会う友人のボルフくんその人だったからだ。
「大丈夫かい?少し休みなよ」
ミルティが呆然としているのを疲れたからだと判断したらしいフランソワに促されてソファに誘導される。
今は王族への挨拶の時間だから時間があるのだ。
ミルティも侯爵家だが、侯爵家の当主ではなく、婚約者もいて今は婚約者がエスコートしているから挨拶には行く必要がないのだ。
これが婚約者のいない令嬢だったら顔を売るために当主について挨拶に行く事になっただろう。
また、フランソワも嫡男ではあるが伯爵家なのでわざわざ伯爵程度の嫡男が挨拶に行くことはない。