第7話 別れ
仕立屋やジャック夫妻がやって来て2日後、アメリアとジャックを連れて冒険者ギルドに来ていた。退会手続きとパーティーメンバーへの連絡を頼むためだ。
ドアを開けると荒くれ者が酒を飲んでたり、真面目そうな剣士がクエストボードを見ている。フロントに行こうとすると5人の荒くれ冒険者が道を塞ぐ。あぁ~懐かしい、駆け出しの頃を思い出す、良く絡まれたもんだ。
「お嬢ちゃん、依頼ならこの【蜥蜴の目】に頼みな!」
「今なら条件付きで格安だぜ」
うーん、こんなテンプレがあるからだから冒険者続けてきたのよ。とりあえずコイツらには
「ぐへっ」
「ぐおっ」
とりあえず2人腹パンで沈めておく。隠れて触ろうとしたのバレバレだからね?
「このアマ!人が下手に出てりゃあ」
「痛い目に.........」
バコーンッ!「ギャァッ!!」
「お前ら!騒ぎを起こしやがって!散れ散れ!!Aランク冒険者を怒らせるな!!」
上から椅子を荒くれ冒険者に投げつけるハ__頭が寂しそうな中年男がやって来た、ギルドマスターか。
絡んできた冒険者は職員に引き摺られる形でギルドから立ち去っていった。
「すまねぇな、うちのもんが。用ならこっちだ着いてきてくれ」
「あ、あぁ」
ギルドマスターの部屋に案内されようとしたときにバンッ!とドアが乱暴に開かれた音がする、振り返ると見覚えのある顔があった。
ジャンヌ、モーリス、ジョフ、エルリック。パーティーを組んでいた仲間たちだった。
ギルドから4人に待機命令が出てたはずだ。解除されたのが2日前でも普通はここまで1週間かかるはずだが..................え、まさか強行軍してきた?
「「「「リーダー!!!」」」」
抱きつかれた。メッチャ苦しい。とりあえず落ち着け皆!!モーリスやめろ骨折れるから!!!
ギルドマスターが気を利かせて会議室を貸してくれた。
そこで私は仲間に裁判で領主をしなければいけないことを伝えた。
「じゃあ冒険者は引退ってことか?」
「そうだね、いつまで領主続けるかは分からないけどたぶん皆引退がするまでは続けることになると思う」
「なるほど。それならパーティーは解散かしら?」
「そうだな、リーダーが居てこその【失墜の騎士団】だからなんだな」
「仕方ねぇよ、神に逆らうってことになるし。ちょうど良い機会だ」
「え、皆パーティー解散って事で良いの?いくら私が引退するからって」
私が居てこそっていうのは嬉しいが流石に解散は........
「リーティア?モーリスの言ったように貴女居てこその【失墜の騎士団】よ、それに私たちもいい歳よ?」
「あっ................」
私のギフトは【不老】。その名の通り老いることがなく寿命という概念すら無くしてしまう力らしい。私の場合、20歳ほどで肉体年齢が止まったから見た目こそ若いが実年齢は43歳だ。
そうだ、もうパーティーを結成して20年経っていた。もう皆歳をとってる、忘れていた。皆結構老け始めていた。
ちょうど良い機会、確かに引退するならこの年齢だ。世話になった先輩たちもそうだった。
私も皆が無理に冒険を続けて命を落とすよりも、冒険者をやめて第2の人生を送る選択肢の方を選んで欲しい気持ちはある。
それに私もそうだが皆、頑固者だ。1度決めたのなら曲げないだろう。
そうなれば、解散の手続きもしなければいけないか。
「解散した後は皆どうするの?」
「俺は別の所で働こうと思う」
「俺は実家に帰るかな、最近魔物の被害が酷いらしくて」
「おらは治療院か教会で働こうと思うんだな」
「私は物見遊山かしら、フリーの踊り子も良いけどね」
皆ずっと考えてたのかな、なのに私はずっと冒険者を続けていくものかと.............。
「リーティア、気にするな」
「俺達は楽しいセカンドライフを送るからよ」
「たまには連絡してちょうだい」
「俺達も頑張るんだな」
「皆..........ありがとう」
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「ではAランク冒険者パーティー【失墜の騎士団】の皆さまのパーティー解散及び冒険者を引退の手続き、完了致しました。今まで尽くしてくださった皆さまにギルドを代表して感謝を申し上げます」
こうして国の英雄と讃えられた、Aランク冒険者パーティー【失墜の騎士団】は解散した。結成当初からメンバーの離脱が無かったパーティーは私たちぐらいだろう。
この夜は近くのレストランの個室を借りて宴会をした。今までの冒険や失敗談などに華を咲かせた。
そして_______
ジョフは冒険者ギルドに職員や教官ではなく、ティカレスという街のギルドマスターとして就職することが決まり。
エルリックは実家のセルフィス家で騎士団の教官として招かれた。
モーリスはこの国の国教であるリシャ教が運営する治療院で働くことになったという。
ジャンヌは学術院や学園などから芸術の講師としてスカウトされたらしい、彼女の性格なら学術院だろう。
そして私は領主の務めを果たすため、アレクサンドラ領土に向けて出発した。
第1章はこれで終わりです。
次から本格的に物語が動くと思います。←