第6話 懐かしい顔と慌ただしい仕度
「.............疲れた」
「仕方ありますまい、私も驚いておりますよ」
弾劾裁判が終わり、やって来たのはディリド公爵の屋敷。城の一室を借りることも出来たらしいが私のメンタルが持たないのでディリド公爵の世話になることにした。ちなみに実家が所有していた屋敷は既に差し押さえられて使えなかった。
速めに領主として領地に赴きたいが手続きが手間取っているらしく、出立は1週間後になるそうだ。
落ち着く為にお茶を啜っているとドアがノックされた。公爵の従者のようだ。
「失礼します。旦那様、アレクサンドラ様」
「うむ、どうした」
「アレクサンドラ様の迎えが到着なさったようです」
「え?迎え??」
「分かった、すぐこちらへ」
「畏まりました」
しばらくしてまたドアノックがされる、公爵の従者がドアを開けると見覚えのある老夫婦と知らない娘が入って来た。3人が一斉に頭を下げる。
「お初にお目にかかりますディリド公爵、そしてご無沙汰しております、リーティア様。この老いぼれなど覚えてないかもしれませんが、かつてアレクサンドラ家で執事をやっていたジャックでございます」
「ジャックの妻でアレクサンドラ家のお屋敷の元メイドでリーティア様のお世話係だった、アメリアでございます」
「アレクサンドラ領主の屋敷でアメリア様の指導の元、雑役メイドをしております、ソフィーと申します」
老夫婦に関してはすぐに分かった。懐かしい気持ちになる、実家で味方をしてくれた2人だ。そしてソフィーは知らないたぶん今後のお世話係かなぁ、レディースメイドと言ったか。
「なるほど、良い従者がおるようで安心しましたわい。ジャック殿、こちらで仕立屋を呼んでおいた。服の仕立てはこちらで任せて貰おう、彼女の祝いじゃ」
「ありがとうございます、ディリド公爵」
待って、仕立屋???初耳ですよ??
「リーティア様。貴女はこれから領主となるのですよ、その服ではいけません!!」
私の服は冒険者用に仕立てた動きやすいものだ、着替えは勿論あるが貴族とは思われないだろう。意見はごもっともである。初っ端からアメリアに叱られるとは思わなかったが。
そしてその数分後には仕立屋がやって来た。何でも王室御用達らしい、流石公爵人脈が違うわ~。
「髪の色に合わせた赤となりますとこちらですね」
「しかしこれは2つほど流行が遅れて居ますのでこちらの方が」
色を決めてからデザインの打ち合わせ、そして素材も重要とかで時間が掛かりまくった。発注するのは執務用に10着、礼装用が7着になった。多すぎる気もするが仕立屋とアメリア曰く最低限らしい。いつまで経っても貴族の感覚には慣れないなぁ。
あ、冒険者ギルドに退会手続きしないと。
作者の優義です。
リーティアの領主経営の表紙を書いてみました。
いつか挿し絵とか書いてみたいです。
なろうでも出せるんですかね。