第２６話 帰り道
盗賊団【黒い牙】は壊滅した。盗賊団５８名の内２５名死亡、残り３３名を拘束。さらに洞窟内を調べると王国側の情報が残っていた。全部皇帝の方に引き渡しておかないとな。
正規の契約がなされていた奴隷たちは奴隷商に引き渡される予定だ。奴隷商は他の商いもしている者が多いから恩を売って損はないだろう。
そもそも最近の奴隷商は大商人が行う慈善活動である。帝国で許可されているのはギルドや商会で金を借りて返せなくなった者からなる借金奴隷と殺人などの重犯罪を行った者からなる犯罪奴隷だ。
一方、主力で正当な理由がなく、強引な方法で奴隷契約を行い、法律違反の事をやらせるように仕向けられた者たちは違法奴隷と呼ばれる。
帝国の法律で、彼らを保護した際はは速やかに中央に連絡して手厚い保護を行うことが決められている。
私も中央に連絡後、身元が判明次第移送する予定だ。
「あ、あの～。本当に雇って貰えるんですか？」
「えぇ、頼れる親族も居ないのでしょ？ならあなたたちを奴隷に落とした商会の長として、責任を取ることが私のやるべきことです」
あの洞窟で知り合ったガドフ、タマリム、ベアトリーチェ３兄妹は私が預かる予定だ。探索中に契約書を見つけて内容を読んだら借金先がアレクサンドラ商会だったのだ、借金そのものは闇金レベルの悪質なものだが正式に書類が受理されていた。こうなると彼らはれっきとした借金奴隷である。
しかし原因はアレクサンドラ商会のポーション独占だった、ならここは私が責任を取るしか無いだろう。
「契約解除の問題だけど、今の所は月のお給料を貰ってからどのぐらい返済するかで各自で決めた額にしようと思ってる。あ、食事や仕事服はこっちで支給するから生活費は気にしなくていいからね」
「あ、ありがとうございます！！」
「わ、わたし！裁縫と料理が得意です！」
「わ、わたしは魔術、が得意、です、領主様に比べたらまだまだだけど........」
うん、我ながら思うが私と比べるという大人げない事はしない。それにベアトリーチェの年齢からすれば彼女の使える魔術はかなり豊富だ。
ベアトリーチェが掛かっていた魔腐病は基本的に子供か魔力の高い人が掛かりやすい。恐らく彼女は両方の理由で掛かったために重症化したのだろう、そんな状況下で彼女を助けた彼らの父親はさぞかし腕の良い医者だったのだろう、是非とも#アレクサンドラ領__ウチ__#に欲しい人材だった。
「そうだね、希望があるなら少し魔力の扱いぐらいは教えてあげられるよ」
「ありがとうございます！！」
「あとガドフは将来的に医者を目指す気なんだよね？」
「はい、父の後を継ごうと」
「それなら学費を私の方で工面するから医者になって借金返済するまでで構わないからこの領で仕事をして欲しいんだが構わないかしら？」
「はい！むしろお願いします！！！」
「よかった、ありがとう。タマリムは今キッチンメイドが足りてないらしいからそこで仕事をして貰いながら適性を見つつ適した職に就いて貰おう」
「分かりました！！！」
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屋敷に戻ると炊き出しが行われてた、事前に頼んで置いたスープの配給は問題無さそうだ。
すぐにアメリヤや他の使用人達がやってきた。
「お帰りなさいませ、領主様。その子たちは？」
「ウチで面倒を見ることになった。アメリア、悪いけどこの子たちの面倒頼める？」
「畏まりました。さぁさぁ、スープを飲んだら着替えましょうね」
あ、大丈夫かな。着せ替え人形にされなきゃ良いが.................。心配しているとルーカスとエルメスがやって来た。
「治安維持部隊隊長、ルーカス！捕虜、奴隷、人質の護衛完了致しました！！」
「騎士団団長、エルメス！ご命令通り盗賊団を拘束したまま地下牢入れておきました」
「お疲れさま。各部隊は交替を取りつつ休むように」
「「は！！」」
さぁて、これから帝都に連絡しないと＿＿＿＿ん？
何か冷たいものが鼻についた、雪だ。初雪が降り始めた。思ってたより早いなぁ。というかこんな雪は初めてだ、アレクサンドラの雪は吹雪が殆どで、これではまるでまるで荒れた土地の復興を祝福するかのような＿＿＿＿＿＿＿＿
「いや、その前に炊き出しを中にさせないと風邪引く人が出るわ」
屋敷内への案内で昼は過ぎていった。
そして、アレクサンドラの長い冬が始まったのだった。
