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リーティアの領地経営  作者: 優義
第2章 荒れ果てた故郷
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第14話 メルガルンド商会

 会議か3時間、家臣たちと各ギルドマスターが帰った。彼らは早速今後の計画をそれぞれ持ち帰り、細かく調整していくらしい。

 私はこれからに備えて昼食を取っていたが緊張からかあまり味を楽しめなかった。料理長には悪いことをしたなぁ。


 そうあの会議には一切口を出さずにただひたすら書類を読み続けていた男がいた。

今も応接室で待機しているその男をリリーに頼んで私の執務室に呼び出してもらった。


 さぁて、第2ラウンド開始だ。


 しばらくしてから、ドアが開き侍女のリリーと男が入ってきた。私と同じ赤髪金眼の持った、ダンディーおじさまだ。私の前に跪くと名乗り上げる。


「先ほどはご挨拶が遅れてしまい申し訳ございませんでした。私はアレクサンドラ商会が傘下、メルガルンド商会の商会長、サージェントと申します。つきましては本日呼ばれた訳をお聞かせ願えませんでしょうか」


 サージェント。40という若さでメルガルンド商会の商会長を務める男。私の母の弟の息子、つまり私の従兄弟に当たる人物だ。まぁ、1度も会ったことは無かったが。


「まずはその跪くのやめて、楽にしていいから」


「しかし、前領主は___」


「いいから」


「........分かりました」


 #前領主__クソ野郎__#が出てきたから一瞬殺気を出してしまった。すぐ引っ込めたけど大丈夫か?サージェントのヤツ。

そして昨日と今日とリリーはすまん。


「........では、単刀直入に。魔力循環のポーションの特許権利をメルガルンド商会に戻そうと思ってる」


「っ?!!」


 魔力循環のポーション。本来の使い方は見習い魔術師の鍛錬を補助するものなのだが、魔腐病という流行病を治せるポーションでもある。

かつてメルガルンド商会に所属していた錬金術師が開発したものでメルガルンド商会はこのポーションやレシピを販売することで凄まじい利益を上げていた。しかしそれを疎ましく思った前領主が権力をモノを言わせて強引に傘下に加え権利を奪った。更に人質として母を無理矢理、自分の側室にと嫁がせたらしい。いやー、清々しいまでのクズだねー。もしこっち帰ってきたら幽閉してやる。


「見返りは、ポーションを製造して配給隊の物資に追加すること」


「資金の方はそちらで?」


「あぁ、勿論」


 彼らには沢山働いて貰わなければならない、私ではポーションの権利は手に余るし、現在は製造も販売も出来ない状態だ。


「領主様、先ほどの配給隊に関してですが.......」


「なんだ?」


 え、もしかして穴でもあったか???


「罪滅ぼしや慈善活動をやる暇はないんですよ!!」


 サージェントが叫ぶ。まぁ、そう思われても仕方ないけど。なるほど、そう来るか。別に慈善活動なら慈善活動と言うわ。


「違う、配給隊の目的は3つ。まず1つ目に前領主が行った圧政の清算、2つ目に人員不足解消の足がかり、そして本命の経済の活性化だ」


 圧政のダメージは補填出来るが癒すことは出来ない、領民には清算という形でどうにか納得して貰えるしかない。あとは以前より快適な生活を送れるようにするとかかな。


 次に人員不足、これが1番深刻だ。

現在、我がアレクサンドラ領の農民、商人、職人、全てが不足している。彼らが居ないのは重い税と仕事がないから、まともに商売や生活が出来ないのだから、居なくなっても仕方ないことだ。

 ちなみに今回ポーションの権利をメルガルンド商会に返却する理由の決め手も人員不足。

ポーションを製造しようにも現在、領主直轄のアレクサンドラ商会は人員不足で運営すらままならない状態だ。錬金術師はメルガルンド商会所属のを無理矢理集めていたらしい。商会員は聞いたら税の横領などの違法行為で殆どが帝都へ連行されたらしい。

仕方なく、残った商会員たちは私の命令で財務部門へ出向してもらうことにした。明日の今頃は悲鳴を上げながら仕事をしていることだろう。


 そして配給隊にかこつけてギルドにも仕事振ることと税減で経済活性化を狙う。これが今回の配給隊の真相だ。まぁ、他にもあるけどね。今は内緒だ。


「アレクサンドラ商会で商売は出来ない、人員的にも信用的にも難しい、だがメルガルンド商会は古くから領民に信頼された商会。そんな商会の目玉商品が戻ってきたとなればそちらにもかなりプラスになると思いますが?」


「それなら傘下を抜けることが条件だ」


 一応、メルガルンド商会の立場は現領主の母親の実家かつ、領主直轄の商会の傘下って立場だもんな。

なるほど、確かに信用を得るなら傘下を抜けて貰った方が良いか。


「分かった、要求する数を揃えられたら書類を作りましょう」


「..........分かった。では権利書を」


「えぇ、ジャック。権利書を」


 権利書と権利書の棄却手続きの書類にサインをして、それを渡す。

 サージェントは書き換えられた権利書を持って帰っていった。これで商会が活気を取り戻すことを願いたい。


全ての会議が終わった反動でドッと疲れが襲ってきた、寝たいなぁ。しかし、やるべき雑務がたんまりあるその処理をする仕事が残っていた。


 職務を終えて、遅い夕食を食べ終わり、風呂を上がった頃には夜の12時を過ぎていた。また、倒れるようにベットで寝たのだった。というか、今のところそのような寝方しかしていない。


 でも不思議と体は軽く思えた。


 私の、領主としての戦いはひとまず終わったからだ。

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