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リーティアの領地経営  作者: 優義
第2章 荒れ果てた故郷
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第13話 各人の回想

別サイド回です

sideオルテ

 私はオルテ・ハーメル、アレクサンドラ領の商業ギルドマスターにして#帝国に仕える密偵の1人__・__#、辺境伯爵のクーデターを察知し連絡したのも私である。

今は新領主との会議が終わり、商業ギルドの幹部やアレクサンドラ中の商人を集めている最中の休憩時間だ。


「あの辺境伯爵は随分とまぁ、勿体ないことをしてたのね」


 ワイングラスを傾けながら、おもいふける。


 あの#辺境伯爵__バカ__#が国家転覆未遂で捕まって処刑されることになったと知った時は随分スカッとしたわ、話してるだけで頭が痛くなるぐらいバカでむかつく男だった、まさかあの王国と手を組んで帝国に仇なそうとしたんだもの。

そして次の領主がその娘だという通知を聞いたときはかなりびっくりした、娘と聞いててっきりあの飛車高姉妹のどっちかと思ったらまさか追い出した方の娘を呼び出して任命するとは.........皇帝も思い切ったことをしてたものね。


「ギフト持ちで高名な冒険者を紐付きにするにしても急過ぎる気がするわね」


 あの子のことは情報のみだが知っていた。


リーティア・アレクサンドラ。アレクサンドラ家の亡き側室の娘。最もあの#辺境伯爵__バカ__#やその家族は彼女のことを邪魔扱いしていたようだ、まともな生活費を渡さずボロボロの離れに住まわれていたらしい。

ギフト持ちだって分かってのに嫌がらせを続けたのは彼女の母親が平民出身で気に入らなかった商会長の娘だからだろう。

そうした嫌がらせから逃げるために彼女は帝国立学園ではなく学術院へ入学し、それと同時に家を出た。入学試験は筆記実技共に歴代トップを収め。その後も首位を独占し続けた。学術院を首席で卒業してからは冒険者として本格的に活動を始め、ソロ冒険者として名を上げたが突如、【失墜の騎士団】を結成しそのリーダーになった。そしてパーティーで#ガレリアの悲劇__・__#を止めたことで国の英雄と呼ばれるまで有名になった。


「英雄だから良い統治者、とは限らないけれど彼女の考えは中々良かったわ。あの知識やアイデア、皇帝はこれをご存じだから派遣したのかしら?」


 複式簿記といい、グラフといい、人1人が考えつくのかと考えるものばかりだ。まるで別の所から仕入れてきたような.............

 王国かとも思ったが密偵内で共有される情報には、王国でそのようなものが作られたとは聞かない。出国歴にも王国を出入りしたというのはないし、もしや王国出身の仲間だろうか.............


「考えても仕方ないわね、とりあえず監視を続けないと」


 諜報部からは彼女の行動を逐一報告するよう伝達が来ている。反逆を恐れているのだろうか。

 諜報部に情報を送るために文をしたためなければ、とワインを飲み干してペンを取る。


「帝国に栄光をもたらす者か、それともその逆か。全ては皇帝の御心のままに」

──────────────────────

sideジョナサン


 ワシは先祖代々漁師をしていた家系の生まれで、そして血のにじむような努力でアレクサンドラ領の漁業ギルドのマスターにまでのし上がった男だ。

しかしギルドマスターになった矢先、税がドンドン引き上がられた。そのせいでまともな収入が無く、妻も無理に針子や洗濯女として家計を支えてくれていたせいで妻は寝たきりになってしまった。

4人の可愛い子供たちも学術院へ入れる前に流行病で3人も命を落とした。生き残ったのは倅のトールだけだ。


全ては無理に税を上げた辺境伯爵のせいだった、流行病だってポーションを買えば助けられたのにポーションの特許を持っていた商会が無理矢理、辺境伯爵の商会の傘下に加えられポーションの特許を奪い取ったために庶民には手の届かない金額に釣り上げられてしまい買えなかった。


 そして、その辺境伯爵が国家転覆とかで帝都の兵士に連行されてようやくまともな生活が望めると思った矢先、新しい領主について知らされた。

それがあの辺境伯爵の娘だと聞いたときは屋敷へ殴り込もうと思った。しかし倅のトールに止められ拳を収めた、下手したらトールの新しい家族にまでとばっちりが飛ぶかもしれなかったからだ。


 悶々とした日々を過ごしていると、その領主から手紙が届いた。会議するため来て欲しいとのことだった。

ただ税を納めろというだけでここまでするのかと呆れたが1発殴れるかも知れないと思い、参加することを決めた。

 屋敷の会議室で待っていると、商業ギルドのギルドマスターが「彼女ならこの領地を持ち直してくれるかもね」などと言い出した。そんなわけがないとワシは怒り、暴言を吐いまくった。怒りにまかせていたが、不意に会議室のドアが相手2人の執事とその新しい領主だという娘がやって来た。40代という話だったがかなり若く見えた、下手したらトールより年下かも知れない(その後、商業ギルドのギルドマスターに不老のギフト持ちだということを知らされる)と思った。


 そして領主が挨拶をし出す。

何が「皇帝陛下に任ぜられて」だ、何が「この領に住まう全ての民の為に最善を尽します」だ。イライラで堪えきれなくなったワシは領主を怒鳴りつけた。衛兵や傍に居た老執事が捕らえに行こうとするが領主自身がそれを止める。

しめたと思い挑発する言葉を何度も言うが目立った反応はなかった。そしてとうとうワシの方が堪えきれなくなり出された紅茶をそのまま投げつけた。


その顔に当たると思ったが防がれた、魔術かもしれないと勘ぐったが唱えてる素振りは無かった。


あの領主は砕け散ったあの指輪で無効化したらしいが、いくら何でも身動ぎぐらいするだろ。どんな肝っ玉してるんだ。


 その後のことは衝撃の連続だった。まさかあの男は実の娘すら追放してたとはな、胸クソ悪いというものではない。そしてワシには故郷をどうにかしたいという考えに嘘が無いと思えた、決して領主の身の上話に同情したわけではない、決っして、決っっっっしてだ!!!


 そして領主が打ち出した減税や配給隊の派遣。そしてグラフだの複式簿記だのの開発。

本当に領民のための政治を行う気のようだ。


 安心しきった訳ではないが、少しなら手助けしてやっても良いかもしれないな。


「まぁ、まずはギルドの皆を説得する所からか」

2人の回想が終わりました。リーティアsideに戻ってとある交渉に進みます。

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