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リーティアの領地経営  作者: 優義
第2章 荒れ果てた故郷
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第12話 会議(後編)

長っ?!

「だから、税を3割程度削ると言いました」


「領主様!聞き逃した訳ではありません!あまりにも暴挙過ぎるのではないのでしょうか!」


 長細い男(確か農業部門の長)が叫ぶが、気にしない。理由はあるのだ、文句ならその後言え。


「いいえ、ここまでやる根拠はあります。まず始めに1枚目の資料の絵、折れ線グラフというのですがそちらをお読みください。現在、アレクサンドラ領にいる領民は減少の一途を辿っており、これから徴収する税も少ないと見込めます」


 最初の資料には30年前から現在に掛けての人口の推移を表した折れ線グラフだ。今世でグラフを見たことは無い、新しい技術かもしれないものを出すのはリスクが高いが今回は出し惜しみ無しで行く。


「なるほど、これは分かりやすい」


「此処まで少なくなっていたのか」


 よし、現状について少しは分かって貰えたようだ。


 この領についての資料を漁ると二十数年前から領民の人口が少なくなっていた。原因は前領主の圧政や凶作が続いたせいで領民たちが堪えきれずに死亡したり、逃げ出したり、借金奴隷になってしまったからだ。

人が少なくなれば取り立てられる税が少なくなる、そしたら贅沢が出来ないからと更に徴収する税を重くする、また人が少なくなる、そんな負のスパイラルをあのバカはやらかしていた。


 今やるべきことは領民を死なせないこと、逃走を阻止すること、借金奴隷を作らせないことだ。

 領の帳簿から贅沢に使っていた金額を調べ上げた。その結果、贅沢に使った金額が税の7割を占めたことを突き止めた(この時キレそうになったが何とか抑えた)。


 そこから本来使うべき所に予算を充てたり、他の所で削減出来ないかと試行錯誤した。その結果、今の税から3割ほど削っても問題ないと判断した。


「まさか、ここまで税に手を付けていたとは」


 ダンディーな男(服飾ギルドのマスター)が顎に手を当てながら考え込む。そりゃここまで圧政するのは想像できないよねぇ、よく反乱が起きなかったな。


「では2枚目をご覧ください、我が領の予算案です」


「う、うちの部門にこんな予算が。3倍近くなってる!!」


 若い男が嬉しそうにしている、3倍ぐらい予算割り当てたのは確か軍部門の治安部隊だったな。

治安部隊にはこれから頑張って貰わねば困るのだ。


「その分、やるべき仕事は沢山ありますのでキチンと働くように」 


「は、はい!!」


 やる気充分って顔だな、是非とも頑張ってくれ。


「なるほど、これなら何とか運営は可能ですな。しかし我々財務部門はこの計算をしていませんが........もしやジャック殿が?」


「いえ、これは領主リーティア様が自ら計算を行い予算草案をお作りになられたのです」


 うん、まぁ。そうだよね、財務部門ぐらいあるよね。失念してた。手伝いに来てもらうべきだったわ。そして結構ザワついてるな。早足に財務部門の老人が私の近くまでやって来る。どうしたのだろうか?


「リーティア様こちらの予算表、とても見やすいです。学術院や商会で見たことがないのですがこれはどちらで?もしや自作ですか?!!」


 流石、財務部門。目ざとい。

 私が作った予算案は前世の複式簿記を使ったものだ。これは一目で支出などが分かる優れもので確認しやすい。

今世では私が初めて書いたものなのかも知れないが、誰かやってる可能性ありそうだなぁ。とも思ったが皆初めて見たというなら新しい技術として公開して大丈夫そうだけど、保険は掛けておこう。


「こちらの複式簿記といって以前(前世)、本(簿記の教科書)で見たのを参考に開発したものです。商業ギルドに申請をして販売したいと思っております」


「なるほど、我々商業ギルドに恩を売ると?」


「はい、その通りです」


 初老の女性(アレクサンドラ領内の商業ギルドマスター)が嬉しそうにこちらを見つめる。


 アレクサンドラ家は商業ギルドに多額の借金がある(もう何の為に作ったかは考えたくもない)。この複式簿記があれば商業ギルドもかなり助かるだろう、そして利益の何割かを借金返済に充てるつもりだ。


 あとは私が考えた冬越え政策を発表するのみだ。


「そして2ヶ月後に配給隊を各地に派遣したいと思っております」


 この配給隊は各地に冬越えの為の衣服や食料を無償で配る部隊だ。これで領民の信頼の回復と生命を守ることを狙っている。


「しかしこの軍資金は何処から??」


「あぁ、この屋敷にあった要らないものから費用を集めます」


 実はジャックから領地に向かう途中、美術品の目録を貰っていたのだ。これと余計な宝石や貴金属と合わせて売ればかなりの金になるだろう。足りなかったら私のポケットマネーから出すことになるがたぶん大丈夫だろう。


「どうせ領民から絞り上げて買っていたものなんだ、パァ~と売って領民に還元してしまおうと思う」


「「「おぉ~」」」


 実際こんなものがあっても手持ちだし。還元して今も牢獄にいるアイツらへの嫌がらせにしてしまおう。


 さて、ここからは配給隊の簡単な打ち合わせだ。

商業ギルドには美術品や宝石、貴金属が売れるように、そして食品を仕入れてもらえるように口添えして貰う、貴族が無理を言うより商業ギルドの口添えがあればやりやすいと思う。


漁業ギルドには魚の保存食の加工を頼んだ。取られる税がかなり多かったらしいからこれで仕事しやすくなったと願いたい。


服飾ギルドには領民たちに配る衣服や毛布の仕入れを頼んだ。針子達も潤うと喜んでたな、あのギルドマスター。


あと配給隊の護衛には冒険者ギルドから人員を出して貰うことにした。ギルドマスターが他の支部からも呼び寄せるとのらしい、私の名前を使うことになるそうだがどうぞどうぞ。


 さらに細かい調整は後日となり、家臣たちと各ギルドマスターたちは持ち場へ帰っていった。


唯1人を除いて_______


 実は配給隊で配りたい物品があと1つある、それが可能かは私の交渉に全て掛かっているだろう。

 さて、待ってろメルガルンド商会。

次回は別視点sideからです。

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