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おいでよ! おちんちんランド

「おはよう、おまえら。

もう暑くなってきたから、昨日作り置いたカップ麺を食べて腹を壊したりしないように。見覚えがない物体が浮いてたり生えてたりするものは口にしちゃいかんぞ」

「居ねーよそんなヤツ」

「知らねえの? サイバーダイナミズム研の部長が新方式の義手用サーボ開発してて、置き忘れてた昨日のカップラーメン食って入院したんだぞ」

「マジかよ。アホだ」

「まあ本人、便意をコントロールするアイデア思いついたらしいから、人類にとってはプラスなんだろ」


コレが、エニグマが通学する高専のホームルームだ。

新技術の開発や発明の動機がどいつもこいつも頭悪過ぎるのが母校の欠点だが、その自由な校風を謳歌してもいる。

ベトナムみたいに、ロボットコンテストで優勝したら軍と警察の音楽隊付きでパレードが開かれて道路を凱旋できるのも捨て難いし、中国みたいにメカトロニクス系の大学や企業から名刺を貰いまくるのも悪くない。


でも自由だ。そんなものはなくても自由。

ロボティクス一点張りではなく、ロボコンで開発した第三眼や追加指、拡張脳なら既に実用テスト段階に入っている。脳波でコントロール出来るのがミソだ。そりゃ研究にも熱が入るというものだ。

拡張脳は、認知症のサポートギアとしても有効だ。身体拡張技術は応用範囲も無限に近い。

人体に蓄積された脂肪を電源に筋肉や脳を一時的に強化するのも、理論的には実現可能だ。


「騒がしいぞ、おまえら1万までの素数の個数を計算な」

クラスがぴたりと黙る。誰が真っ先に答えられるか、また冴えたやり方を思いつくかどうか競争している。

ガヤガヤと頭の無駄遣いで騒然とするクラスメイトを強制的に黙らせ、担任は続ける。

「こんな時期だが留学生を紹介しよう。

ここのところ大変だったエニグマの家の隣に引っ越してきた、イギリスからの留学生のジャスパー・エゼキエル君だ。自活するそうだから、迷惑にならない程度に仲良くしてあげなさい」

クラスメイトは、こんなムサ苦しい学校によくこんなイケメンが転校してきたな……しかも

「外人か……」

素数を計算するディファレンス・エンジンと化したクラスメイトたちはそれで済ませる。

「いやそれより教師からまでハンドルネーム呼びのがやべえよ」

もっとも集中していないエニグマですら、思考はそこで終わる。海外からの留学生は結構いるので、誰も気にしない。それよりも素数だ。

「1229個ですよ」

ジャスパーは3秒ほど手持ち無沙汰だったので答える。

「イギリスの高専みたいなところで数学を専攻してました」

「ああ! 検算中だったのに!」

「イギリス、パねえ!」

「まさか、俺の素数解析アルゴリズムより早いとは!」

「正直ググるより早い」

「お前らわかったか? コレが本物の数学者だ。仲良くしろよ!」

担任は、ジャスパーに優良コイン/特を進呈する。

教師が持ってる生徒に配る用の、40年の歴史ある非接触タグ入りコインで、要するに購買で使える校内専用通貨だ。優良可が100/50/10で、20年ぐらい前から特/500ポイントコインが追加された。1ポイント=1円の固定相場制になっている。

コインの流れは常時監視されている。

卒業までに100万ポイント貯めたり、ポイントだけで学費を賄ったレジェンドもいたらしい。


「校外での金のあるなしは一切無関係というわけですか」

「コレも学習の一環というのが我が校の方針でね。部活製作のアイテムはまず、優良コイン以外では買えないから覚悟したまえ」

スマートフォンの学生証アプリで、コインの履歴が残るようになっている。

恐喝で巻き上げたりしようとすると、即座に退学だ。たぶん売買春でも退学になる。リッチな学生生活を送るには、金融工学を導入するか。

「銀行みたいなのはありますか?」

「あるぞ、生徒会直営だけどな。生徒会長が頭取」

ジャスパーは考える。すでにコイン貸しの頭取をやってる者もいる。正式に各部活に株を発行させ、運用すればいいのではないか?

校内でヘッジファンドを運用して儲けるヤツが居ないのがなぜかは分からないが、できなくはなさそうだ。

「なんだ? 名探偵、コインなんてどうせ食券かガラクタしか使い道がないけど?」

『独自通貨とか、キッザニアかよ!』

エニグマと、まふゆがツッコむ。


【ジャスパー視点】

とうとうエニグマの高校に潜り込むことに成功した。

名探偵として、真雪まふゆを見つけ出す。それには一片の嘘偽りもない。しかし、見つけてどうするかは何も言っていないはずだ。


さて日本までわざわざ留学したんだ。

趣味と実益を兼ねて、夜になったら毒蜘蛛のローザに散々罵られた(注:罵ってない)通り、女装して童貞を食い散らかして儲ける『汚い陰間の夜鷹』ビッチボーイをやろうと思ったが、どうやら自由恋愛の範囲で金銭やメダル抜きで趣味の範囲で童貞を食うしか無さそうだ。


そうと決まれば、まずは童貞フルコースのオードブルは、エニグマからだ。

絶対にまふゆ本体を見つけ出し、そのうえでエニグマの性癖も歪めてやる。おちんちんランドの住人にしてやる。

そもそも、まふゆと同居して性癖が歪まないとか、有り得ないだろう。

まふゆより先にエニグマの初めてを奪いとったら(注:まふゆにその予定はない)、まふゆはどんな顔をするだろう?(注:かつ家に行き、かつ丼を食べてる間に忘れる)


エニグマはいまだに『普通の高校生』として接し、性癖が歪んでない。一ミリも揺るがず今でも母ちゃんのほうのジェルソミーナのファンだ。

これじゃまるでエニグマ以外が変態みたいじゃないか?

僕がこうなったのは、どう考えてもまふゆとエニグマが悪い。僕のせいじゃない。美味しそうな『普通の高校生』に育ったまふゆと、寄生の宿主である美味しそうな童貞高専生のエニグマが悪い。


エニグマについては存在を認識するはるか前から既にジャスパーはアレだったが……浅黒い肌の日本人の高専生というだけで、とにかくけしからん存在だ。

つまり、そういうことだ。

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