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甘い物と甘いお出かけと甘い再会。

ラックとヴェインのルームシェア生活が始まってから数日ほど経過した。最初の頃はお互いが快適に過ごせるよう色々と話し合ったりしてお互い手探りの状態で生活を送っていたが、2人ともこの生活にはすぐに慣れた。

話し合いの結果、家事はそれぞれ分担する事に決めたが必ず守れるとはお互い思っていないので片方が忙しい日はもう片方が家事を代わる事になっている。


だが、料理だけはヴェインがする事になっている。

理由は3つ。

1つ目はラックはこれまで料理をした事がないから。

2つ目は外食は高いためなるべく費用を抑えたいから。

3つ目はヴェインの作る料理がとても美味しいから。


ヴェインは戦いだけでなく料理の知識も相当あるようで作れる料理の種類は豊富だ。加えて栄養のある献立を考えてくれる上ラックの好き嫌いを把握した上で料理を作ってくれるためヴェインが作る料理はどれもこれも美味しいものばかり。

毎日食事の時間になるのを楽しみに待つほどラックはヴェインの作る料理が大好きだ。


特に好きなのは朝食だ。


「おはよー。」

「おはよう。ちょうど朝飯ができたところだぞ。」


すでに座っているヴェインに促されたラックも席につき2人揃って食前の祈りをする。仕事が長引いて野宿する日を除いては毎朝欠かさず行っている。


食卓にはまだ温かい朝食の他にパンに塗るために用意された赤と黄色の2種類のジャムが置かれている。

ラックは迷わずベリーで作られた赤いジャムを手に取りパンにたっぷりと塗っていく。ヴェインは残された柑橘系の果物で作られた黄色のジャムを手に取る。


「おい。塗りすぎじゃないか?」

「だってヴェインが作るジャムすっごく美味いんだもん。」

「だからって前みたいに1日で食べ切るなよ。」

「はーい。」


いつもよりゆっくりと朝食を食べる2人。今日の仕事は休み。今日はそれぞれ休日を楽しむ事になっている。


「今日はどこか出かける予定はあるのか?」

「うん。この後ミリーと待ち合わせ。晩御飯前には帰ってくるつもり。」

「おっ。デートか。」

「そんなんじゃないよ。ごちそうさま。」


ヴェインにこれ以上追及されないようラックは食器を持って台所へと逃げるよう向かっていく。



◆◇◆◇◆



今回の外出を提案したのはミリーの方だ。

仕事が終わり、ヴェインが仕事の報告をしにい行った隙にラックに今度一緒に街で買い物に行きませんかと誘い、ラックはこれを快く了承した。


予定よりも少し早く待ち合わせ場所に到着したラックだったが、待ち合わせ場所にはすでにミリーが来ていて遅れてしまったと慌てて早足でミリーに駆け寄る。


「ごめん! 遅刻しちゃったかな?」

「あ、いえ。私が早く来ちゃっただけです。」


今日のミリーの服装は冒険者としていつも来ている動きやすく丈夫な装備ではない。年頃の少女が好きそうな可愛らしい服。服に合わせて髪型を変えている。

いつもと違う服装についつい見てしまうラックの視線に気がついたミリーは勇気を出した。


「どう、ですか? この服、似合っていますか?」

「すっごく似合ってるよ。とってもかわいい!」


ラックの言葉にミリーは顔を赤らめながら口元を緩めてしまうが途端に恥ずかしくなってしまい思わずラックに背を向けてしまう。


「さ、早速お店に行きませんか?!」

「? もちろんいいよ。」


いきなり後ろを向き、照れ隠しにいつもよりも大きな声が出ているミリーを見て少し変だなと思いながらラックはミリーと一緒に歩いていく。


以前武器を買いに来た時よりもゆっくりと街の中を見て回る。気になった店を見かけたら立ち寄り、買い物をしているとあっという間に昼過ぎの時刻となった。

2人は評判のいい飲食店に立ち寄り昼食をとることにした。注文を済ませ料理が来るまで待つ間、ミリーは勇気を出した。


「あの、ラックさん。今日は付き合ってくれてありがとうございます。」

「このくらい全然いいよ。荷物運びくらいまたいつでも誘ってくれ。」

「あ、いえ。荷物運びを頼みたくて誘ったわけじゃあ…」

「お待たせしましたー。」

「おっ。来た来た。」


話の途中で料理が運ばれてきたため話は中断されてしまった。料理は美味しかったが伝えたい事を伝えきれなかったためミリーは少し落ち込んだ。

 

料理を食べ終えた2人は店を出ると街の様子がおかしい事に気がつく。先ほどよりも騒がしい。


「おい。さっき騎士様達が走っているのを見かけたけど何か事件でもあったのか?」

「そんな話は聞いてないなぁ。」


そんな誰かの会話が聞こえ、ラックとミリーは何かあったのだろうかと思いながらも2人は次の店に向かおうと歩く。しかし歩いても街中のざわめきが聞こえてくる。いや、それどころかどんどん大きくなっていく。


「ラック!」


自分の名前を呼ばれ、思わず振り返るラック。その先にはドレスを着ている少女が走っている姿をはっきりと確認できた。


「えっ?! え?! 何ですかあの子!?」

「…まさか。」


事態を飲み込めないミリーだったが、どうやらラックには少女の事を知っている様子だ。

少女はラックに向かって走り寄りその勢いのままラックに抱きつく。ラックは避ける事をせず少女を抱き止める。


「見つけた! 会いたかったよラック!」

「リリー!? どうしてここに?」

「えへへー。実はね。」


少女が言いかけた時、金属音が混じった足音が近づいてくる。足音が大きく聞こえるにつれて音の正体がはっきりと目視する事ができた。

王国の騎士数名がラック達に、というよりもラックにくっついている少女に慌てた様子で駆け寄る。


「やっと見つけましたよリリエラ様!」

「さぁ、城に戻りますよ!」

「いーやー!」

「あっこら! すみませんすぐに離しますので。」

「離れたくなーい!」

「リリエラ様! 一般市民の方に迷惑をかけてはいけません!」


騎士達がラックにくっついて離れない少女を痛くしないようできる限りラックから引き離そうと頑張っている横でミリーは呆然とその様子を上の空で見ながら、リリエラという名前に聞き覚えがある事に気がつく。


ミリーはあらためて今もラックの腕にしがみつき離れる様子のない少女をもう1度見る。

少女の着ているドレスはとても質の良さそうなものでドレスで隠せない手や首の真っ白でありながら健康的な肌。この2つの要素だけでも少女がとても裕福な暮らしをしている事がよく分かる。

それに加えて騎士達が少女に向ける態度。


それを見てリリエラという名前をどこで聞いたのかと記憶を探るとすぐに思い出す事ができた。

リリエラは王国の同盟国である帝国の第二王女の名前だ。

ミリーは目の前にいる少女が正真正銘、帝国にいるはずの第二王女、リリエラである事に気がつき


「…え。えっ? ええええええええぇぇぇぇっ!?」


それはもう驚きでミリーは大きな声が出てしまった。

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