表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

仮面騎士 第17話。

王国に侵攻をしようとする反逆者達を食い止めようと奮闘する王国と帝国の騎士達と冒険者達。

頑丈な肉体に鋭い五感に加えて厄介な呪術を使ってくる反逆者達相手に何とか食い下がろうとするが、状況は劣勢だ。

このままでは王国が攻め落とされるのは時間の問題。そんな考えが多くの人達の頭の中でよぎった時、恐れていた事態が起きた。


「大変だ! 魔族の何人かが街に向かったぞ!」


街に向かったのはラデスと数名の部下。その姿を彼も遠目で確認する事ができた。

このままラデスが王国の中枢まで行ってしまったら甚大な被害が出るのは目に見えていたが、彼はこの状況を好機と見た。この状況でラックが動くと彼は信じていたからだ。


「俺が行く!」


そしてラックは彼の期待通り、ラデス達の後を追おうとしている。


「待てラック!」

「えっ?」


彼はラデス達の後を追おうとするラックを呼び止めた。


「受け取れ。」

「えっ。これは?」


彼が足を止めたラックに渡したのは鞘に収まった剣だ。

差し出された剣を素直に受け取ったラックは彼の方を見る。


「それを使って街に入った魔族を倒してこい。遠目で見たが、街に入った奴らがこの集団の頭角だ。そいつらを倒せば戦況は大きく変わる。」

「…分かった。この剣、ありがたく使わせてもらうよ。」

「あぁ。行ってこい。魔族達を倒して、この街の英雄になってくれ!」

「ありがとう、ヴェイン!」


彼から剣を受け取ったラックは少し嬉しそうに頰を緩めたままラデス達の後を追った。

ラックが街に向かったのを見届けた彼はその場から離れアルト達と合流するために駆け出した。魔族の侵入を防ぐのに必死な騎士達と冒険者達はその事に気がついていないため、彼は難なくその場から離れる事ができた。


戦場から離れた彼はアルト達と合流した後、急いで声を元に戻す薬を飲み全身鎧を身につけてアルト達と共に戦場へと戻り冒険者と騎士達の加勢に入った。

アルト達は騎士団団長としての彼と同じように全身に防具を身につけ顔が隠れているためアルト達が魔族である事はまだバレていない。だが、何も知らない者達からすればアルト達は急にやって来た敵が味方かわからない謎の集団だ。誤解でアルト達が攻撃されないよう彼は皆に聞こえるよう大声で言う。


「彼らは私達の心強い味方だ! 我々も負けずに戦うぞ!」


彼の言葉を信じてくれたのか、まだ動ける騎士達と冒険者達はアルト達と共に戦ってくれた。彼とアルト達が加勢に入ったおかげで戦況は大きく変わり、戦いは彼らの優勢。反逆者達が全滅するのは時間の問題だった。


彼は今反逆者達と戦う事に集中しているためラデスとラックの動向を確認する事はできない。しかし彼はラックとラデスが今頃殺し合っていると分かっているためそちらに関しては何も心配していなかった。

ラックに渡したあの剣のおかげでラデスは必ずラックに襲いかかると分かっているからだ。


鞘と持ち手を変えているためラックが気が付いていないようだが、あの剣はラックがラデスの妹を殺した時に使用した剣だ。

彼は以前アルトからラデスは嗅覚が鋭く、血の臭いだけでそれが誰のものなのか分かると聞いた事がある。

彼はラデスの嗅覚も利用した。

ラックが妹の血の臭いが染み付いた剣を持っていれば妹思いのラデスはきっとラックを殺しにかかる。彼はそう確信していた。


ゆえに彼は街の外にいる反逆者達を倒す事に専念した。



◆◇◆◇◆



予想外の出来事が起き思わぬ危機に瀕したが、彼らの奮闘があって反逆者たちを全員倒す事ができた。

戦いが終わった事に皆が歓声をあげている中、騎士の1人が彼に近づき1つの質問を投げかけた。


「団長。彼らは一体何者なんですか?」


彼らとはもちろんアルト達の事だ。アルト達も全身鎧を身につけているため魔族である事はまだバレてはいない。だからこそ事情を知らない者達は心強い援軍が来てくれて良かったと素直に喜んでいる。


ここからが正念場だと覚悟を決めた彼は隣で兜を外すアルト達を見て今にも襲いかかって来そうな者達を言葉だけで制し、皆の前で大きな声ではっきりと演説をした。

皆彼の演説を聞いて戸惑う様子を見せるが、先ほどよりもアルト達に向ける敵意が薄くなっている事を感じ取った彼は良い方向に傾いていると思った、その時。


「それは素晴らしいお考えですね。」


突然、聞き覚えのない少女の声が話に割って入る。

彼は即座に声が聞こえてきた方に視線を向けると数人の従者らしき者達を連れている肌の露出がほとんどない白い服を着ている見目麗しい少女が立っていた。

突然現れた第3者に彼は困惑した。少女と従者らしき者達が着ている服を見て彼は少女達の正体に気が付いてしまったからだ。


「…もしや、公国に所属する聖女か?」

「はい。その通りです。帝国の騎士団団長である貴方様に知っていただき光栄です。」


自身を聖女である事を認めた少女は団長に向けて優雅な礼をする。


予期せぬ第3者の訪問に彼は体を強張らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ