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きっかけ。

とある日。

ラックとヴェイン。そして新たな仲間として迎えられたミリー。この3人は今日、人気のない野原にやってきた。


「改めて確認するが今日は訓練みたいなものだ。お互い何ができて何ができないのか確認し合うのが目的だ。」


ヴェインの言葉にラックとミリーは頷く。


「まずは俺からだな。俺は牽制や時間稼ぎをする盾役だな。剣も使える。」


そう言いながら小盾をミリーに見せる。


「ミリーは何ができるんだ?」

「私は魔法を少し。」

「おぉ。俺と同じだ。」

「ラックさんもですか。」

「あぁ。俺は剣と魔法を使って敵を倒す、魔法剣士ってやつだ!」

「ミリーがどんな魔法を使えるか見せてくれるか?」

「はい。」

「じゃあ、そうだな。あそこにある岩に向けて魔法を使ってくれ。」

「分かりました。」


魔法を使う時に使用される専用の短い杖を取り出し、ヴェインが指さした岩に向けて杖を向ける。


「ファイア!」


岩に向かってミリーが使える中で一番威力がある魔法を発動させる。杖から拳大の炎の塊が飛び出し、真っ直ぐと岩に着弾した。


「どうですか?」


自信があったのか期待をもった目でラックを見るミリー。


「んー。」


しかしラックの反応はミリーが期待していたものではなかった。


「ちょっと弱いかな。」

「えっ?」

「次は俺のを見せるな。」


そう言ってラックは剣を抜き切っ先を先ほどのミリーが魔法をぶつけた岩に向ける。


「ファイア!」


ミリーが放ったものよりも数倍の大きさの火球が剣の先に集中し、勢いよく岩に向かっていき火球にぶつかった岩はあっさりと砕け散った。


「す、すごいです! さすがラックさん!」

「いやいや。これくらい普通だよ。練習すればミリーだってすぐに使えるようになるって。」

「本当、ですか?」

「あぁ。一緒に練習しよう。」

「は、はい。」


それからミリーはラックに教えられながら何回も火の魔法を使ったが、最初に見せてくれたものよりも威力のある火球は出せなかった。それどころかやればやるほど威力は弱まっていく。やればやるほどミリーの息は上がっていく。


「…そろそろ休憩にしよう。」

「えっ。でも」

「このままじゃ魔力切れを起こす。そうなったら危ないだろ。」


魔法を使うのに必要な魔力が体内から無くなれば身体に悪影響を及ぼす事を知っているヴェインは魔法の使いすぎで疲労している様子のミリーを見かねやや強引に休憩させる。


「…すみません。」

「大丈夫。練習すればいつかきっと上手くなるさ。」

「はい。ありがとうございます。」


申し訳なさそうな様子のミリーを励ましながらラックは剣を収めようとする。

すると何かが壊れる音が聞こえた。3人揃って音が鳴った方を見ると剣の刃の部分だけが地面に落ちていた。それを見た3人は今度はラックの手元を見るとラックが手にしているのは刃が折れた剣だった物が握られていた。


「折れたぁぁぁぁぁ!!」

「あー。折れたな。まぁそれ中古品だったしこの短期間で相当使い込んでいたからな。」


自分の剣が折れた事にラックは少なからず落ち込む。それを見かねたヴェインは一つ提案を出す。


「まだ時間あるし昼飯食ったら新しいのを買いに行くか?」

「行く!」


ヴェインの提案にラックはいきおいよく頷いた。



◆◇◆◇◆



というわけで。

ラックの新しい剣を手に入れるため3人は武器屋へと向かっていた。その道中で様々な店が立ち並んでおり目の引く商品が並んでいるため3人は歩きながらウィンドショッピングを楽しんでいた。


「ん? あの店はなんだ? なんだか怪しい雰囲気だけど。」

「あぁ。あそこは確かイタズラグッズが売られている店だ。」

「イタズラグッズ?」

「変な音が鳴るクッションとか声が変わる薬とか食べ物の色を変える調味料。そういった変わった物を色々と取り扱っている店だ。安全性は確認されているから商品には問題ないぞ。」

「へー。なんだか面白そうだな!」

「今日は剣を買いに行くんだからな。無駄遣いするなよ。」


珍しい商品を物珍しそうに見るラックとそれを嗜めるヴェインの2人の後ろを少し距離を置いた状態でついていくミリー。

やがて3人は武器屋にたどり着く。


「じゃあ剣を見てくるから少し待ってて。」


そう言ってラックは早々に武器屋へと入っていく。

ラックの付き添いとして来たミリーとヴェインは武器屋に用はないので店の外でラックが出てくるのを待つ事にした。


「・・・・。」

「・・・・。」


互いに口を開かない。

ラックが店に入ってから少し時間が経っても2人は何も話さずただただ時間が過ぎていく。沈黙に耐えかねたヴェインは何か話そうとミリーに話しかける。


「なぁミリー。1つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「は、はい。なんでしょう?」


ヴェインに声をかけられ思わず身構えてしまうミリー。まだまだ信頼関係を築けていない事を感じつつもヴェインはある事を聞き出そうとする。


「ミリーはどうして冒険者になろうとしたんだ?」


気が弱く、それでいて人を疑う事をあまりしない。

それがヴェインが感じたミリーの人物像だ。そんな彼女がどうして冒険者になったのかヴェインは不思議に思っていた。


ヴェインに問いかけられたミリーは口ごもりながらも冒険者になった理由を話してくれた。


「その。昔の父はすごい冒険者だったんです。今は引退しちゃってますけど。そんな父がかっこよくて。父は私が小さい頃からの憧れだったんです。」

「それで自分も冒険者になりたくなった。というわけか?」

「はい。まだまだ未熟者ですがいつか父のような立派な冒険者になってみせます。」

「そうか。応援しているぞ。」


この話がきっかけでミリーとヴェインは他愛のない話をしながらラックを待っていた。だが、しばらく待ってもラックは出てこない。いくらなんでも時間がかかりすぎると思った2人は店内に入る。

剣の売り場の方を見ればラックはすぐに見つかった。ラックは上を見上げたままそこに立ち尽くしていた。何を見ているのだと思い2人も見上げるとラックの視線の先には壁にかけられている透明なケースに入った両刃の剣が飾られていた。

ヴェインは剣を見ているラックに声をかけながら肩を軽くたたく。


「そんなに熱心に見てどうしたんだ?」

「うわっ!? あっ。ヴェイン。ミリー。」


驚いた様子のラックだったが2人の姿を見てすぐに落ち着く。


「もしかして待たせちゃった? ごめん。あの剣を見るのに夢中で時間を忘れてた。」

「まったくお前は。まぁ確かにあれはいい剣だな。」


ラックが見ていた剣は有名な武器職人が作り上げた物でとてもいい物であることはヴェインもすぐに気がついた。


「いいなぁ。欲しいなぁ。」


うっとりとした目で剣を見つめるラックにヴェインは容赦なく現実を教える。


「だが、高いぞ。」

「…うん。」


値札には膨大な額が記入されている。ラック達の待ち合わせではとても買える値段ではない。もちろんラックはそれを重々承知だが、それでもその剣が欲しかった。


「…決めた。俺、節約する!」

「節約? いきなりどうした。」

「依頼を成功させて節約してお金を貯めていつかこの剣を買うんだ。」

「そんなに欲しいのか。」

「うん! …でも節約って何をどうすればいいのか。」

「…節約か。」


決心はしたものの節約とは具体的に何をどうすればいいのかわからないラックは頭を悩ませる。


「なぁラック。お前確か宿屋暮らしだったよな。」

「え、うん。そうだけど。」

「宿代が結構かさむだろ。」

「あっ確かに。どうしようかな。もっと安いところを探そうかな。」

「なら俺から1つ提案を出していいか?」

「提案?」


金策に悩むラックにヴェインははっきりと告げる。


「俺とルームシェアしないか?」

「えっ。」

「部屋代として生活費を入れてもらうがそれでも毎日の宿代に比べたら安いと思うぞ。」

「…確かに悪くない話だと思うけど、ヴェインの部屋が狭くならないか?」

「部屋が1つ余っているからそこは問題ない。」


ヴェインからの提案を受けて考え込むラック。しばらくして、ラックはヴェインに一つ質問を投げかける。


「…試しにやるのはあり?」

「もちろんいいぞ。数日ほど試してみるか?」

「…ぜひ、お願いします。」


こうして今日からラックはヴェインとのルームシェアをする事になった。

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