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 今さら戻れと言われてももう遅い。私を捨てたのはあなたでしょう?

作者: 朔々

これを悲恋と言い張る勇気


 私と彼はいつも一緒だった。


 彼が恐ろしい怪物達と対峙する時は、いつも私が傍らに居た。

 彼の得物は身の丈程もある大きな剣。だから私の出番はなかなか無かったわ。

 彼の役にたてない私。いつもそばに居られる私。そんな相反する感情にモヤモヤしながら、今日も私達は怪物に対峙する。


 まさか今日が運命の日だなんて、私は夢にも思わなかった。


 彼は珍しく剣以外を手に取ったの。それは弓。

 私は歓喜したわ。「これで私にも出番が!」「やっと彼の役にたてる!」って。

 だから私はいつにも増して、彼を応援したわ。


 誉められる事じゃないのは分かってる。でもあえて言うわ。

 私は、彼が弓を使う事じゃなく、慣れない得物のせいで苦戦する事にこそ、歓喜していたの。

 案の定、彼は苦戦していたわ。慣れない得物に、苦手な怪物。きっと彼なりの怪物対策だったのでしょうね。それで苦戦してるんだから墓穴掘っちゃってるじゃない。


 でもそれでこそ私の活躍が輝くってものじゃない?


 私はその時が来るのを待ち続けたわ。そして遂にその時が来た!

 どれだけ矢を射ろうと、怪物の強靭な尻尾は切れない。そんな事、彼は百も承知よ。

 だから彼は無言で私を見つめてきたの。私達の仲ですもの、言わなくても分かるわ。私の出番ね。


 いいわ、私があいつの尻尾を切ってあげる。


 彼が怪物の隙をつくり、私が尻尾を切断。そんな手筈のはずだった。


 最初に裏切ったのは彼よ。彼はあろうことか、私を投げ捨てた。


 彼の狙いは正確で、矢が何本も刺さっている部分に飛んでいく私。

 私は尻尾を切断したわ。予想と違ったけど、それが私の役割りだったから。


 それももうおしまい。長年の相棒を投げ捨てるような人とは一緒に居られないじゃない。


 彼との日々、悪くはなかったわ。


 最後にしっかり活躍できたもの。思い残す事なく、きれいに彼と別れられる。


 私は彼に投げ捨てられた勢いのまま、どこまでも飛んでいく。きっともう2度と会うことは無いでしょう。さようなら。



「ブーメランがっ!」


 思いつきで書きなぐった短編です。

 ブーメランを失った全ての人に捧げたりはしません。でもいつか、あなたのブーメランが戻ってこなかった時、思い出してもらえるとうれしいです。

 こんな与太話に最後までおつきあい頂きありがとうございました。

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