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0794 窓越しの風景
風がうなるのを聞き
雨が地面にたたきつけるのを
窓ガラスの内側から
眺めていた
曇ったガラスを
手で拭きながら
滴が下に垂れて
縞模様になっていて
一部からは真実が見え
他の一部からは
覆われたものが
そこに描き出されるのは
窓なしには現れない風景
枠の中に嵌った
動いていく風景
風はいつしかおさまり
雨も既に止み
通りを歩く人は
傘もさしていない
すっかり変わってしまった風景
それでも私は
外を眺めつづけて
そして私の指が書いた
彼のイニシャルも
まだ消えずに
残ったまま
窓ガラスの中から
外を眺めると
そこにある者とは
まったく違ったものが
現れてくる……
14-2.11-3.10
外界との間には、ガラスの壁が一枚。
直に接触することは無く。ゆえにそれは映像の様に。




