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0771 あの人
あの人は私より早く生まれ
私より長く世界を見てきた
私より多くの事を知っていた
私が追い付こうとする分だけ
あの人も逃げてしまった
まるで影を追いかけるように
私とあの人の間は
縮まることは無かった
随分時が過ぎた
あの人が逝ってしまってから
もうすぐ私はあの人に追いつき
あの人を追い越していくだろう
あの人が知らなかったことを知る
あの人が望んでいた事として
あの人との間は確かに縮まった
しかし、すぐにまた開いてしまう
今度は一方的に
あの日は時の中で
立ち止まっている ずうっと
ああ、私も時のはざまに
立ち入ることができたなら
10-5.16-7.7
あの人は、「私」にとってのなんなのでしょう。
あの人を追い越し、それでも「私」は歳を重ねていく。




