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0769 君が見るもの
風にかすかにそよぐ
栗色の豊かな髪を
片手で押さえながら
君は見つめている
ずっとずっと遠くを
指さしながら
僕には何も見えはしない
いや、他の誰にだって
君が見ているものは
君にしか見えないのだ
僕に判るのは沈んでいく夕日
そして、その中に
君が何を見ているのかは
誰にも判りはしない
決して! そう僕にさえも
いつしか風は止んで
縛りを解かれた君の髪は
静かに下へと垂れ下がる
君の指はどこか遠くを指し
涙を浮かべながら
それが何に対しての物なのか
誰も判りはしない
君は君以外の
何物でもありはしないから
10-5.16-6.30
僕ではなく、はるか遠くを見つめる君。何も語らず。0592とは、似て非なる。




