0602 はかないもの とフラグメントの2
夢の中で得ていたもの
夢の中で手に入れたもの
目を覚ますと全て
いずこにか消えてしまう
そして
二度と返っては来ない
夢も、夢の中のものも
みな同じようにはかないけれど
そのはかないものですら
思い通りには得られない
僕がどんなに望もうと
君を招き入れる事は
できない相談だし
ましてや君を
僕のものにすることなど
願うべくもないこと
ああ……
08-1.1-3.1
※※※※
"私より苦しんでいる人なんて誰もいませんわ
たとえ死期を宣告された人でさえ、私以上に生について悩んで
いるひとなんて、この世にはいませんね。
私にとって、滑ることは苦しみでしかないのです。笑顔など……
求めようもありませんわ"
"ではなんで君は滑るんだい?"
"なぜって? そう、その苦しみを私は選んだから。他の多くの
苦しみの中からね"
"君はいつも自分の苦しみばかり言うけどね。それじゃ他人の事は
どうなんだい。どうでもいいのかい。もしも君に僕の気持ちが
判るのなら、君は……"
"もしも? いいお言葉ですわね。そのお言葉一つで
解決できる問題もありますし、ますます厄介になることも
ありますわ。そう、もしも、あなたが私の立場で
私に起こったことが全てあなたに起こったのなら。
あなたにも全てが理解できますわ。そう、私の苦しみだって……"
"そう、もしも僕が君ならね。君のことが何でも判るだろうよ。
だけど今、僕は僕で君は君だ。これは事実だ。仮定じゃない"
"結構ですわ。私は私、あなたはあなた。私の苦しみは
あなたには判らないし、あなたの苦しみも私には判りませんわ。
これは事実。仮定ではなくってよ"
"ああ、じゃ一体何が君を苦しめるっていうんだ。いつも
そうやって君は逃げる。君の苦しみは君にしか判らないと。
そうして君はいつも全世界の苦しみを一人で担っているように
振舞っているのさ、ああ、言ってくれよ"
"私には自分の戒めを解く力はありませんわ"
08-番外
どれほど望んでも、君を夢に招き入れる事は出来ない。という悲しみ。
フラグメントは、まあ、そういうものを書いていたというだけの。
「そう、その苦しみを私は選んだから。他の多くの苦しみの中からね」とかちょっとだけ好き。




