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0135 古いオルゴール
オルゴール 古の調べ
幾百年の時を超え
今またメロディを奏でる
小さな爪が音板をはじき
澄んだ響きを繰り返す
ぜんまいがゆるんで
音が間延びしていき
いつしかはたと
途切れてしまう
歌うことをいったい何度
お前はやめたことだろう
長い時の流れの中で
何度最後の一つの音を
弾いてきたことだろう
残された響きも消えて
その静けさに耐えられなくなり
再びぜんまいをまくと
お前はまた歌い始める
昔と変わらぬ声で
ひたすら繰り返し歌い続ける
百年前お前の歌を聞いたのは
白い指をした少女か
二百年前お前の歌を聞いたのは
美しい顔の少年か
お前を作ったものも
お前の声を聞いたものも
みなほろんでいく中で
ただお前だけが残り
昔と変わらぬ調べを
かなでつづけている
何十年も、何百年も……
01-8.5-10.11




