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1281 夜想

僕はどこへ行くのだろう

どこへ行けばいいのだろう

僕を導いてきた道は

已に消えかかっている

後に残るのは

荒涼とした砂漠

どこを向いても同じ

呼びかけに答えるものもない

この不毛の地


月の光が

僕の影を床に落とす

満ちた月

窓から流れ込む

唯一の明かり

部屋の中で生ずるものは

全て闇の中へと

消えていってしまう

君の紡ぎ出す

音楽も、そして

僕の生み出す言葉も

みんな みんな


僕は君を縛り付けている

君の周りにはただ

がんじがらめの鎖

身動きできぬままに

虜になったままに

それでいて君は

何も言いはしない

ただ物語る目を

こちらに向けて……

僕は目を逸らすこともできず

ただ君のその姿を

じっと見続けている


時をきざむ音がする

長い針、短い針

そして細い針が

一廻りする間に

どれだけの物が生じ

また滅していくのだろう

どれだけの物が

変化していくのだろう


目を閉じれば

眠りに入れるのだろうか

何もかも忘れて

夢を、失われたものを

再び手にできるのだろうか

時が流し去ったものを

見つける事が出来るのだろうか

失われし想い

失われし夢

失われし感情

そして今

失われつつあるもの


廻る廻る

思考は廻って

再び同じ所へ帰る

大きな大きな

弧を描いて

次の日の夜には

また同じ所へ

戻ってきてしまっている

あの天上の

星々のように


虫の鳴く声

花の香り

ほんとにかすかなかすかな

いつもならば

見逃してしまうような

そんなものを見つけられる

感覚の研ぎ澄まされた

この一時


外界の全ての物が

働きかけてくる

この僕の心の内に

僕をどのように

しようというのだ

何を変え何を失わせるのだ

そう僕は

何一つ得はしなかった


何者かが

僕を追い立てる

僕が一つ所に

留まっている事を

僕が僕自身で

あるという事を

許さない何者かが


昔望んでいたことを

今は望みはしない

今望んでいるものは

明日も必要なのだろうか


今という一時は

二度と戻っては来ない

今持っている感情

今持っている全ての物が

一時後には

すべて失われてしまう

それらが僕の手の内に

留まっているのは

ほんの一時でしかない


僕はここに留まる

得ることは無いが

失う事もまたありはしない

僕はここに留まる

時という大河が

ついには僕を押し流すまで

僕はここに留まる

そして

僕は僕であり続ける


やがて夜も明け

日が昇る事だろう

全ての物は

普通の姿に戻り

月は光を失い

こんな僕の考えもまた

四散してしまうのだろう

日が昇ったら

全ての夢は破れてしまう

そしてもう一度

夢の続きを見たくても

それはけして叶いはしない

望みなのだ


11-7.23-8.6

タイトルは、オリジナル。

ぐるぐると廻る思考。どこへ行くのか、の自らの問いに、ここに留まると決意を述べる。

しかし、その想いもきっと夜明けとともに失われる。


夢の続きは見られない。

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