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1274 もう少しだけ / 最後の夜
もう少しもう少し
このままでいたかった
日に照らされた
この暖かい土の上で
静かにまどろんで
いたかった
色々な物が
いきている
その事がとてもよく
感じられる
だから心の底から
優しさがわき上がる
そんな気が
するほどに……
全てが愛しく思える
この一時
他の何物にも
代えがたい一時
それをもう少しだけ
味わっていたかった
44-2.3-3.13
※※※※
この家の近くで
今日と同じ夜を
幾度過ごしたろう
一日一日は他と変わらない
平凡な日々であり
平凡な夜であったけれど
そして今日この夜もまた
とてもとても平凡な
ものに違いないのだけれど
ああ、それでもなんと
悲しいほどに今日は
昨日と違って見える
やがて夜は明けて
街が明るくなり
全てのものの表情が
一変するのだ
そして最後の夜は
終わりを告げる
44-2.3-3.14
まあ、実際には家を出る、とか、その程度の話ではあったのですが。
些細な事なのですが。




