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2 目覚めたら婚約者になっていた!?

 鏡に近づいていろんな角度から見てみてもジル様。

 前髪をかき上げてまじまじと見てみてもジル様。

 両頬を強めにつまんで伸ばしてみてもジル様。

 つまんだところがちょっとだけ痛い。

 痛みがあるということは夢ではありませんの!?


「どうして私がジル様に!?」


 どこからどう見ても私の婚約者だったジル様にしか見えない姿に、両頬に手を添えて鏡を凝視していると、再び勝手に口が動く。


「どうして僕のことを!? 貴方は一体? ――――それから、とりあえずその女々しいポーズをどうにかしてほしいのですが……」


 その姿も、声も、口調も全てがジル様で、私は思わぬ再会に胸が熱くなった。


「私ですわ! アリーシャです! ……ジル様はもう婚約者でなくなった私のことはお忘れですか?」


 自分で言って胸が苦しくなる。

 婚約破棄を言い渡された時の、ジル様の苦々しい顔が頭の中にしっかり焼き付いてしまっていて離れない。

 本当に忘れられていたらどうしよう。返事を聞くのが怖い。

 けれど、ジル様から返ってきたのは意外な言葉だった。


「アリーシャ!? そんな見え見えの嘘には惑わされませんよ!」

「そんな……私、嘘だなんて……」

「アリーシャとなら昨日会ったばかりです!」

「え? …………昨日、お会いになられたのですか?」


 私と?

 私は婚約破棄をされて以降、お会いしていないのですが?

 疑問符をたくさん浮かべる私に、ジル様は更に言い募る。


「ええ、会いましたよ。それになんですか、その『婚約者ではなくなった』というのは! 縁起でもない。彼女は僕の正式な婚約者ですよ!」

「え!?」


 信じられられない言葉に自分の耳を疑う。

 どういうこと?

 アリーシャは私で、私は婚約破棄されて、ジル様は子爵家のご令嬢と婚姻を結ばれたはず。


「コーデリア様じゃありませんの……?」

「?」

「ジル様の婚約者はコーデリア様ではありませんの?」

「何をおかしなことを。コーデリア嬢はただのクラスメイトではありませんか」

「!?」


 クラスメイトという言葉に引っかかりを覚える。

 私の記憶が正しければ、既にジル様は学園を卒業していたはずだけれど。

 しかも、ジル様はまだ私と婚約している……?

 私は一つの可能性に気づいて、ジル様に一つの質問を投げかけた。


「ジル様はまだ学園を卒業していらっしゃらないのですか?」

「これから卒業試験が始まるというのに、卒業しているわけないじゃないですか」


 卒業試験がこれから始まるということは、つまり最終学年になったばかりということ。

 それなら確かにまだ私が婚約者であってもおかしくはない。

 だって、婚約破棄されたのは学園の卒業パーティーが終わった次の日だったのだから。

 …………時間が、巻き戻ってる?

 あり得ない現実に愕然としていると、ジル様が口を開いた。


「それで? 話を戻しますが、貴女は一体なんなんです? 言葉遣いから女性とお見受けしますが……」

「ですから、私は貴方の婚約者のアリーシャですと申し上げているではありませんか!」

「アリーシャとは昨日会ったばかりだと言ったでしょう?」

「私がそのアリーシャですわ!」

「いいや、違いますね!」

「違いませんわ!」


 お互い譲らずに、話は平行線を辿った。

 不意に部屋をノックされて、ジル様も私もぴたりと口を閉じる。


「あのぉ……ジルベルト様……何かございましたでしょうか……?」


 閉められたドアの向こうから、控えめな男性の声が聞こえてくる。

 その時になって、私はジル様の体を借りてしゃべっていたことに気づいた。

 ジル様も同じようにしゃべっていたから、はたから見たらジル様が盛大な独り言を言っているようにしか見えなかっただろう。ドア越しでよかった。

 ジル様もそれに気づいたらしい。

 黙り込んだ私とは裏腹に、口が勝手に動いて返答する。


「い、いや。何でもありません! 少し寝ぼけていたようです。もう少ししたらダイニングに向かいますので、それまで誰も部屋に近づけないでください」

「かしこまりました」


 部屋の前から気配が去っていく。

 念には念を入れて、小さく開いたドアから廊下に誰もいないことを確認すると、二人で安堵の息をついた。


「それで、貴女は何者なんですか?」


 今度は周囲を気にしてか、声を抑えぎみにジル様がもう一度聞いてくる。

 まだ信じて下さらないの!?

 私はもう我慢がならなくなって、わなわなと口元を震わせて言い放った。


「私はアリーシャ・メイベルだと言っているではありませんか――――!!」

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