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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

召還勇者の物語

かなり前に書いて放置していたもので、見直しをしていません。あと暗い内容です。

俺は椚木雅弘、勇者だ。

ここはどうやらファンタジーな世界で、お約束のように魔王の侵略に悩まされているらしい。

俺を召喚したゲルスト王国のアニス王女に頼まれ、俺は魔剣を携えて魔王討伐に向かっていた。

「勇者様、高位魔族です」

お約束の魔王討伐なら勇者ほか数人で旅立つのセオリーだが、そこは現実的で騎士団と魔法士団が同行している。

俺はそれらで対処できない高位魔族が主な相手だ。


高位魔族の魔力を乗せた攻撃は並の騎士では剣で受ける事さえも出来ない。

人と魔族では魔力量が絶対的に違うからだ。

「チェスト!」

俺の魔剣が高位魔族の剣を切り払う。

この世界では魔力量の差が絶対的な力の差になる。

高位魔族といえど俺の敵じゃ無い。

俺は倒した魔族から魔石を取り出し魔剣で触れる。

すると魔石が魔剣に吸い込まれ輝きを増す。

これによって本人と武器のレベルが上がる。

このあたりはファンタジーでよくあることなので驚く必要は無い。

「勇者様、参りましょう」

近衛騎士の声に応え俺は四天王がいる砦の奥へと進む。


=====================


俺の隣には四天王から取り出した魔石が置かれている。

「では、この勝利を女神フィーロラリアに捧げましょう」

アニス王女が神剣掲げて宣言し魔石に触れる。

ただレベル上げをしたようにしか見えないが、この手の世界では迷信が信じられていることも多いので突っ込んではいけないだろう。

士気高揚のための儀式も終わり、アニス王女が上目づかいで俺を見ながら手を握ってきた。

「アニス、どうかしたのですか」

「勇者様、召喚に応じてくださって本当にありがとうございます」

俺たちがいた世界は魔法は無かったけどすべての人が魔王並みの魔力を宿しておりこの世界の人間が召喚するには難しい相手だったらしい。

異世界召喚とかの小説が大好きだった俺は教室で魔方陣が光ったときに異世界に行きたいと願った。

そのため抵抗なく召喚できたらしい。

「いや、憧れていた魔法がある世界に召喚してくれてこちらの方がお礼を言わないといけないくらいだよ」

そう返事をするとアニスは嬉しそうに笑って呟いた。

「・・・・・・・・・・本当によかったですわ」



渓谷の通行を妨げていた砦を落とした俺たちは魔王城へ向かう部隊と周囲を平定する部隊に別れた。

俺たちは途中の集落や拠点は無視し一気に魔王城へ突き進む。

最後の決戦はもうすぐだ。


=====================


流石魔王城を守る魔族の精鋭だ。

前衛は片腕を失っても必死に立ち向かってくるし後衛の魔術師も魔力が切れても諦めたりしない。

しかし、魔族には大人になっても体が小さい種族もいるとは聞いていたが魔王城を守る兵にはその種族の者が多い。

俺と近衛騎士たちは先頭に立って切り込み魔王城の奥へと向かう。


重厚な扉を開くと大規模な魔方陣の上に屈強な男が立っていた。

こいつが魔王か。

俺は魔剣を構え疾風のごとく斬りかかった。



激しい戦いだった。

流石ラスボスの魔王だけあって強さは高位魔族の比では無かったが俺は勝利を収めた。

まあ、他の高位魔族を足止めしてくれた近衛騎士たちの助力があってこそではあるが。

魔王を倒した事により魔王城に張られていた魔族の力を強化する結界が解除され、その後の戦いはあっという間に終わった。

俺は最後まで抵抗した高位魔族から剣を引き抜いた。

振り返ると魔王の死体から魔石を吸収し終えたアニス王女も俺の方を見る。

「やりましたわね、勇者様」

「ああ・・・」

これでお決まりのハッピーエンドだ。

ゆっくりとした足取りで俺の前に来たアニス王女は頬を赤らめて微笑む。

これはお約束という奴だな。

アニス王女が俺に好意を寄せていることは分かっている。

ここはかっこよく決めなければ。

「愛しているよアニス」

アニスと結婚するということは俺は王様になるのか。

政治なんて全然分からないけど、王様なんて俺に務まるかな。

「ええ、わたくしもですわ・・・」

アニスの瞳が怪しげに輝いた。




「わたくしの大事な魔石ちゃん」

え・・・

「ぐはっ」

喉の奥から血が噴き出し床を真っ赤に染める。

俺は何が起こったの分からずにアニスを見た。

アニスは神剣を持って笑顔を浮かべている。

「ご先祖様が召喚したあの家畜どもが逃げだして、いつの間にか繁殖していたのにはほとほと苦労させられていたのです。魔石をおとなしく差し出せば良いものを、無駄に抵抗するものだからあなたを召喚する羽目になったのですよ。しかし、あなたみたいな単純な人が来てくれるなんて本当によかったですわ。ではさようなら」

魔王の魔石を取り込んだ神剣が俺の首と胴を切断した。



アニス王女は息絶えた勇者の体を切り刻み魔石をとりだす。

「ああ、初めましてかしら私の大事な魔石ちゃん」

王女はうっとりとした瞳で見つめながら血で染まった手で魔石をなでた。


=====================


魔族が滅びてから十六年の歳月が流れた。

私は女神フィーロラリアに選ばれし聖戦士ウィルズ

世界を我が物にしようと侵略を始めたゲルスト帝国皇帝アニスを倒すため戦っている。

分かっている、前半の女神に選ばれたという部分は嘘だ。

神官たちは隠しているが信託の間に集められた中で最高の魔力を有していた俺を聖戦士として祭り上げているだけである。

まあ、そんなことはどうでもいい。私は皇帝アニスを倒し世界を今よりか、ましな世界にしたいだけだ。


我々反帝国連合軍は少数だ。

まともに正面から渡り合っても勝算など無い。

それに現状では私の聖剣では皇帝アニスが持つ神剣に対抗できない。


「聖戦士様、帝国軍がオルドの街を占領、聖戦士様が来なければ街の住民を皆殺しにすると布告しております。直ちにオルドの街へ向かいましょう」

「・・・ならぬ!」

私の答えに皆が驚きの表情を浮かべている。

「なにゆえですか、帝国軍に我らの力を思い知らせてやりましょうぞ」

「そうだ、卑怯者の帝国軍など正義の剣の前には無力だ」

相変わらずこいつらの頭はお花畑だ。

我々の目的は皇帝アニスを倒すことであり、正義を行うことではない。

これは戦争なのだ。



どうしてもオルドの街に向かうという一部の将兵を送り出し、私は反対方向の中規模補給拠点に目標を定めた。

偵察の結果、通常時より兵力が減っている事が判明したからだ。

おそらくこの付近の帝国軍はオルドの街に集結して罠を張っているのだろう。


オルドの街に向かった馬鹿ども・・いや、死を覚悟して志願してくれた囮部隊のおかげで、敵の気取られる事無く補給拠点に接近しこれを攻略した。

「敵将ブルトーラスを討ち取ったり!」

私は敵の魔石を聖剣に吸収させる。

我々は拠点にあった物資の一部を周辺の村々に施した。

これは我々が解放軍であるという政治宣伝だ。

実際施した量は全体の一パーセントにも満たない。

まず我々の兵糧を確保することが最優先だ。

飢えた兵隊など役に立たない。

すべては皇帝アニスを倒すためである。


オルドの街に向かった囮部隊は帝国軍の待ち伏せに遭い全滅した。

彼らが帝国軍の注意を引いてくれたおかげで、我々は中規模補給拠点の他に三つの拠点を落とすことが出来た。

彼らの貴い犠牲により聖剣の強化、物資の調達、さらにはオルドの街を救援しようとした事実により反帝国連合軍の名誉まで守られた。

計画通りである。



その後も帝国軍との激しい戦いは続き八つの街と数知れない町や村が灰燼に帰した。

だが、そんなことは今日で最後だ。

ついに我々は皇帝アニスを追い詰めた。

最後の決戦である。


皇帝アニスとの戦いは熾烈を極めた。

数多の魔石を吸収して強化した聖剣ではあるが、魔王と勇者の魔石で強化された神剣の力はそれを上回っていた。

それでも神剣の力だけに頼り剣技を磨いていない皇帝の剣を、聖戦士は受け流しながら少しずつ相手にダメージを与えていく。

そして長い戦いの末に皇帝アニスの首と胴が聖剣によって切り離された。

皇帝が倒れたことにより魔王との戦いと同じく城に展開されていた強化の魔方陣が解除され勝敗は決した。

私は皇帝アニスの魔石を吸収し転がっていた神剣を粉々に破壊した。

そして皇帝の首を拾って皆のところへと向かった。


既に城内の掃討は終了しており、私は各部隊の長を招集した。

この者たちは魔石を吸収し人間の限界を超えて高位魔族並に強い。

私は皇帝の首を掲げて彼らに見せた後にそれを天高く放り投げた。

全員の視線が天に向かう。

私はそのすきに聖剣を一閃し各部隊長の首をはねた。

周囲から悲鳴が沸き起こる。

そして私は全員の魔石を吸収してその場から姿を消した。




眼下にはマグマという灼熱の海が広がっている。

やっと終わる。

皇帝アニスに勇者として召還され、更にこの身に生まれ変わってから色々なことがあった。

後は私がいなくなれば、この世界には高位の魔力を有する存在はいなくなる。

小さな魔石をいくら吸収してもレベルは上がらず、人は人外の存在にはなれない。

この世界に人外の力を持つ者など必要ないのだ。

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