お兄ちゃんはちょーのーりょくを持ってる。
初めまして、レモンスノーです。
今回は本編ではなく、前回投稿した“発熱”の裏話のようなものを投稿しました。
いつもはどことなくシリアスっぽい感じですが、この話はコメディチックに仕上げたつもりです。
拙い文章ではありますが、楽しんで読んでいただけると幸いです。
お兄ちゃんが熱を出した。
朝はお兄ちゃんと一緒に学校に行けなくてさびしかったけど、その代りに見送ってもらっちゃった。たまには、こういうのも良いな~。いつもはわたしが見送ってる方だから。…でもお母さんに見つかっちゃったから、家に帰ったらお母さんに怒られちゃった。たまには良いじゃん、お母さんのケチ。
でも、今度は絶対に見つからないようにする。
今お母さんはお買いものしに行ったから今のうちにお兄ちゃんのところに遊びに行って、お母さんが帰って来る前に戻れば、ばれないよね。
「お兄ちゃん、起きてる?」
そぉーっと扉を開けて部屋を覗き込めば、お兄ちゃんは本を読んでた。わたしに気付いたお兄ちゃんは、どうしたの?と本をベッドの上に置いて起き上がった。
「ううん、お兄ちゃんひまかなって思って。」
そう言うとお兄ちゃんは笑った。
「沙知がひまだから来た、のまちがいじゃなくて?」
「…えへへ、ばれちゃった。」
そう言って頭をかくとお兄ちゃんは言った。
「沙知はうそが下手だよね。」
「お兄ちゃんが上手なだけでしょ!」
「えー、ひどいなぁ。」
と言いながら、お兄ちゃんはわたしを小突いた。全然いたくはなかったけど。
「いたっ。…うわーん、お兄ちゃん、ひどーいー。」
小突かれたところを手で撫でながら言ってみたらお兄ちゃんは笑顔で言った。
「うん?もうちょっと強くやって欲しかったって?」
こわいよ、お兄ちゃん。わたしはこの家で一番こわいのはお母さんじゃなくて、お父さんでもなくて、お兄ちゃんじゃかいかなって思ってるからね。言ったら笑顔で「僕を怒らせてみる?」って聞かれそうだから言わないけど。
「僕よりもお母さんのほうがこわいと思うけどな。」
「…お兄ちゃんって心読めるちょーのーりょくもってるの?」
「ははは、もってるのかも。」
え、
「ずるーいー!」
「え、」
大声でお兄ちゃんに言うとお兄ちゃんは目をぱちくりさせて首を傾げた。
「え、じゃないよ!わたしにもちょーだい!!お兄ちゃんだけずるいよー。沙知も心読みたい!!」
ガチャって音がなった気がするのは多分気のせい。
「そうね、お母さんも読みたいわぁ。」
「だよねっ、お母さん。ほら、お兄ちゃん、お母さんもそう言ってるんだからちょーだい!」
お母さんを味方にしたからわたしの勝ち!どうだっ!
「…お兄ちゃん?」
何も言わずにわたしにせを向けて、かたをふるわせてるお兄ちゃんに声をかけると口を手で押さえながらお兄ちゃんが言った。
「っ沙知、くくくっ、後ろ、っはははだめだ、たえられない。」
そのままお兄ちゃんは笑い始めた。うしろ?なにがあるの?そんなに面白いものがあるの?
「あら、こんにちは。こんなところでお会いするとは思ってませんでしたわ、お嬢様。」
にこり、とお兄ちゃんそっくりの笑顔でお母さんが後ろに立っていた。あの音、気のせいじゃなかったってこと!?
「っもう、お兄ちゃん言ってよ!!」
「はははっ、僕は関係ないもんね。」
「ひどいー!」
あのあとお母さんにおこられた。まだ、こりてなかったみたいね、と言われたけど、こりてなかったってどうことか分からなくて考えてたら、急にお母さんが笑い出したから笑いやむまでまたないといけなかった。…長かった。
「お兄ちゃんが教えてくれたらおこられなかったのに!」
「ごめん、ごめん。」
…ぜんぜんそう思ってなさそう、とお兄ちゃんをにらんでたら、前に座ってごはんを食べてるお父さんが呆れたように言った。
「…仲良いな、お前ら。」
「でしょ?」
お兄ちゃんがおかゆをにらみながら言った。…なんで、おかゆきらいなのかな?おいしいのに。ってか、いらないなら、沙知にちょうだい。
「沙知がキムチがきらいなのと同じよ。」
「…ねぇ、お母さんも心読めるの?ひどいよ!!あの時、お母さんも読みたいわぁって言ってたのにあれ嘘だったの!?」
ぶふぉっとお父さんが味噌汁をふきだした。
「うわっ、きたない。お父さん、僕の方向いてふきださないでよ。」
お兄ちゃんがしかめっ面をしながらお父さんに向かってタオルを投げた。お母さんは何も言わずにごはんを食べてる。
「なんだ、家には心を読める超人が2人もいるのか!?…沙知、諦めろ。お前は俺の血を引き継いでいるから、お母さんとか千遥みたいに心を読めるようにはなれないぞ。」
テーブルをふきながらお父さんは言った。
「だってさ、沙知。良かったじゃん、お父さんといっしょで。」
あぁ、もう!なんなの、結局わたしはずっと心を読めないままなの?
「かもねぇー。」
となりからのんびりとわたしの心を読んだかのようにお兄ちゃんが言う。
「ぜーーったいにいつか心を読んで見せる!!」
そして、ぜったいにお兄ちゃんの心を読んでやる!おはしを持っている手をにぎりしめてわたしはお兄ちゃんにせんげんした。
「んで、結局心を読むってただ単に沙知が呟いていることを利用してるだけだろ?」
沙知が部屋に戻ったのを見て、俺は言った。そうそう、と千遥とお母さんは笑いながら頷いた。ほんとに、
「性格悪いな、2人揃って。」
呆れて肩をすくめる。
「「楽しいから良いの。」」
声をそろえて言った目の前の我が家の悪魔たちは顔を合わせて笑った。
「沙知、お前も大変だなぁ。頑張れよ。」
俺はもう諦めたよ…。
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