異世界で料理に挑戦!
小説って難しい!
「よっし、こんなもんだろ!」
ボクの目の前には、手足を縛られていまだに気を失っている兵士が3人
山道の道端に転がっていた。全裸で。
これでボクと同じ裸族が増えたわけだ。
おっと、今はちゃんと服を着ているよ?
このおじさん達からましな服と装備を拝借したのでね。
「ウヒヒ…オレ…ナカマ…フヤス…なんちゃって。」
悪いことした人たちはこんな目にあってもしょうがないと思う。
せめてもの情けに、山道の真ん中に放置してあげたんだ。
「誰かがここを通れば、縄を解いてくれるかもしれない。あとは知らない。」
ボクはあの後、少女を運んでいたのであろう兵士の馬車を発見した。
馬車は素人のボクから見てもかなり立派なものだった。
中の荷物や金品などを見るに貴族かお金持ちから馬車ごと盗んできたのかもしれない。
「すぅ…すぅ……」
ボクは馬車の中を覗いてみた。
さっき助けた少女は馬車の中で眠っている。
出血部分はできるだけ清潔な布を裂いて止血。
酷い打身やアザには水で冷やした布を当ててある。
「ちゃんとしたお医者さんに見せてあげたいけど…ごめんよ。今はこれで我慢してね…。」
馬車にあったシーツと毛布で簡単な寝床を作ってあげた。
振り向いて後ろの山道を見ると
3人の山賊と一緒に、少女が入れられていたのだろう檻が捨ててある。
「あんなところに…閉じ込めていたのか。どうせなら檻に詰め込んで鍵かけるか。」
ボクは兵士を無理やり檻に詰め込んで扉を縄でこれでもかときつく結んでおいた。
元から鍵はなかったみたいだ。恐らく鎖で繋がれていたからだろう。
「さて…そろそろ移動したほうがいいな。さっき逃げた山賊が戻ってくるかもしんないし。」
ボクは馬車なんて運転したことがないので馬のたずなを引っ張って移動することにした。
「この子…死んじゃわないよね…。お願いだから…生きてくれ…。」
馬のたずなを少し引くと、馬は素直に言うことを聞いてくれた。
毛並みは美しく、色はつやのある漆黒。
とてもあの兵士達の馬とは思えないので、この馬も盗んできたのだろう。
「いい子だお馬さん。これから長い付き合いになるかもしれない。よろしくね。」
ボクは自分の出現した場所のことを思い返した。
ボクが現れた時、爆発みたいなことが起きて兵士のおじさんたちを吹っ飛ばしたみたいだった。
「そうだ、馬に名前をつけてあげよう…。よし、君は今日からエルビスだ!」
そういえば、ボクの現れたときの衝撃で地面には小さなクレーターが出来ていた。
しかもボクは全裸で現れてるから…
「そう考えると、ター〇ネーターみたいだな…。」
それにしても、さすがのボクも薄々気が付いているんだけど。
いろいろと変だ。
まず、鎧の兵士なんていつの時代だって驚いたし、
それに助けた女の子…人間じゃないんだ。
本物の猫の耳と尻尾がついていたから…。
「・・・い、異世界とかかな?あはは…。モンスターとかもいるのかな…まいったな。」
なんてことをつぶやいていたら山道の先に表札のようなものと分かれ道が見えてきた。
「どれどれ…やっぱり日本語じゃないな…これ。言葉はわかるのに…文字は読めないってことか。それにこんな文字…みたことないよ。インドとかの文字みたいだけど、ちょっと違うし…。」
ボクは分かれ道のあまり草が生えていないほうに進むことにした。
そっちの方が人が多く通っているのなら町とか村とかがあるかもしれない。
ボクはその後もずっと歩き続けた。
「ここらへんで一度休憩しよう。…モンスターとか出ないといいんだけど。」
頑張って歩いた甲斐あってか今は山から出て一面の原っぱの中を進んでいた。
今のところ、まったくモンスターを見ていない。
道ははるか向こうへと続いている。
「山から出るときに枯れ木を集めておいて正解だったな。」
ボクは手ごろな原っぱで野宿の準備を始めた。
まずは火をおこしたい。
幸いなことに山賊の持ち物の中に火打石的なものや水と食料に酒やカンテラ
その他旅に必要になりそうなものがかなり入っていた。
そりゃ男4人の装備ともなればこれくらいはあるか。
「あれから結構時間がたったな…。あの子の様子を見よう。」
ボクは横になっている少女の手をそっと持ち脈を測った。
大丈夫だ。最初の頃よりは脈が大きいから回復しているんだ。
ボクは止血の包帯を新しく代え、もう一度水で冷やした布を打身とアザにあてて布で巻いた。
「すぅ…すぅ…」
ボクにもっと、医学の知識があれば…
それか、魔法でも何でもいいから
この子の痛みを消してあげられるような力が欲しい。
「お腹すいたなぁ。あの子が起きた時のために…なにか作ってみようか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
手を水で荒い、頭に布を鉢巻のように巻きつけた男が仁王立ちで立っていた。
準備はOKだ。
「さぁ…始めるとするか…。お料理タイムの…始まりだぁ…!」
まず火を起こさなければならない。
「大丈夫だ…ディスカ〇リーチャンネルを思い出すんだ!」
ボクは火打石っぽいやつで枯葉と枝に火をつけた。
よかった…やれば案外できるもんだな。
「これは匂いも味もバターっぽいな。うん…君は今日からバターだ。…えぃっ。」
焚き火で熱したフライパンにバターっぽいやつを敷く。
そこへあらかじめ切り分けておいたパンを置いて
両面がパリッとするまで焼く!
香ばしいバターの香りがする。間違いない…バターだ!
「そろそろかな。」
焼いたパンを皿に置く。
次はベーコンだ。
おそらく、これはベーコンだと思われる。
なんならさっきのも多分パンだと思う。
ベーコンはパンに3枚ずつ載せることにする。最後は卵だ。
「これ…卵ですよね?うん、卵だ!なんかちょっと殻が水玉模様だけどね!」
殻を割ってみると中からはごく普通の白身と黄身が出てきた!
これで中身も水玉模様だったらどうしようかと思った。
「とろっと半熟に仕上げる…!」
弱火で少しずつ火を通し、黄身は若干半熟で仕上げる。
最後はこれをパンの上に載せる。
完成だ!気分は焼きたてジャ〇ンだ。
「で…できた…!ラピュ〇パンの出来上がりジャン!」
味付けはしていない。
塩のようなものはあったが
さすがに塩かどうか舐めるのはためらわれた。
もしこれが
「ペロ、…!これは!青酸カリ!」てきな展開になったら目も当てられん。
「ベーコンがしっかり味を出してるからな、バターも使っているから味はちょうどいいはずだ。」
ちゃんと味見をしなければなるまい。
何せ未知の食材から作り出したのだから。
「はむ…っぅ”!…うますぎるぅ!」
完璧だった。お店に出せるレベルでうまい!
飲み物は水だ。ただしこの水はかなり冷えていた。
原理は不明だけど、山賊の持ち物の中に皮の水筒のようなものがあって
この中に入れた水はしばらくするとキンキンに冷えているのだ。
不思議アイテムだ。
「あの子食べてくれるかな?」
ボクは作った料理を持ってそのまま馬車の中に入った。
少女はすやすやと眠っている。
「すぅ…すぅ…」
きっと何も食べてないはずだ。
回復を早めるためにも何か食べさせないと。
「おほん…ごはんだよ~。おきなさ~い。」
なんと起こしたものかちょっと戸惑いつつ声をかけた。
「んん…。ごはん…?…!いい匂い…」
お。いい反応だ。匂いに反応した。
「うん!ごはんだよ!一緒に食べよ!」
そうしてボクたちは一緒にご飯を食べることにした。
少女はとてもお腹がすいていたようで
無我夢中でボクの作ったご飯を食べてくれた。
「はむ…!はむ…ぅ!?」
途中で喉を詰まらせたりもしたが。
用意しておいた冷えたお水を飲ませてあげた。
なかなかいい食べっぷりだ。
「おいしい?」
「うん!はふはふ!」
「よかった。ゆっくりお食べ。いきなり食べたらお腹が痛くなるよ?」
少女は結局ラピュ〇パンを3枚も食べてしまった。
そんなにお腹がすいていたのか…。
少女はいっぱい食べて満足したのか、
今はボクと向かい合う形で三角座りで焚火を静かに見つめている。
「じー…。」
「ん?」
「ぁぅ…。」
時々ボクの方を「じー」と見て、目があうと恥ずかしそうに膝の後ろに顔を隠してしまう。
そのたびに頭の上の猫耳的なやつもぺたんとなる…。
そう、猫耳だ。ちなみに尻尾もあって最初に馬車で寝かせた時に気づいていた。
「あ…ありがとう…ございます…かみさま…。」
少女はボクのことをそう呼んだ。
「あはは。神様じゃないよ。あ、そういえば名前まだ言ってなかったね。」
ボクは自己紹介をすることにした。
そういえばまだ互いに名前を知らないんだった。
「ボクはリュウジ。よろしくね。」
「リュウ…リュゥヂィ?…りゅぅ…あぅ」
幼い子には日本語だとちょっと、発音が難しいのかもしれない。
「うん。リュウでいいよ。昔もよくそう呼ばれてたから。」
「リュウさん…ありがとうございます。たすけてくれて…。」
「ううん。たまたまだよ。でも…よかった。」
あのままだとこの子は死んでしまっていたかもしれない。
本当によかった。
「…ミアです…」
「ミアっていうんだね。可愛くて素敵な名前だ。」
「ぁぅ…。////」
ミアは見た目からして10歳前後だろうか。
瞳は大きく吸い込まれそうなほど奇麗な赤色をしていて、
将来はとても美人になりそうな顔をしている。
黒猫っぽくて髪や尻尾は真っ黒で耳の先端と尻尾の先っちょだけ白い。
耳は恥ずかしそうに倒れているけど尻尾は嬉しそうに振られている。
あれやっぱ本物なんだ…。
「ミアはどうして、あそこにいたの?」
ボクはとりあえずミアのことを教えてもらうことにした。
できるかわからないけど、この子を両親のもとへ返してあげたい。
「こわい人たちにつかまって…どれいにされてました…。」
「…。」
ボクは言葉が出てこなかった。
奴隷なんて、ボクのいた国では考えられないことだ。
こんな少女を奴隷にするなんて、どうかしている。
「せんそうにまきこまれて。ママもパパもどこにいるのか…わからない…。」
ミアの話では村に攻め込んできたのが魔術師や兵士の軍隊だったという話から
まず間違いなくここはボクの知る時代でも、世界でもない。
なんてこったい。異世界に来ちゃったのか。
「やっぱり、ここは異世界なのか…。」
そして、現在ここは【シルト大陸】。
人族もいるけど獣人や魔族の方がたくさんいる大陸だそうだ。
この世界にはもう一つの大陸【ヴァルド大陸】があり、
その大陸は獣人や魔族を嫌う人族が多く今はこのシルト大陸を侵略しているとのこと。
この混乱に乗じて人族の兵士が獣人をさらい奴隷にしているのだそうだ。
「そうか…ミア、ボクは人族だ。その…一緒にいても大丈夫?」
「…うん。人族も悪い人ばかりじゃないって、ママもパパも言ってたから。」
「そっか…ミアは偉いね。」
「ん…。////」
「ねぇミア。よかったらボクと一緒に旅をしない?君のお母さんとお父さんを探すの、手伝いたいんだ。」
ボクは一つの目的ができた。
この子を親の元に送り届けること。
その旅の中で元の世界に帰る方法とか探せばいいかな。
「…!い…いいの!?」
「うん!お母さんとお父さんのとこに帰ろう。」
ミアは表情をパっと明るくして驚いた。
尻尾がすごい勢いで嬉しさを表現している。
「ママとパパに…会いたい…!」
ミアのこんな表情を見たら何が何でも合わせてあげたくなるじゃないか。
主人公のプルフィール。
龍志
23歳 ♂ 人族
容姿も声もかなり中性的で、ボーイッシュな女性とよく間違えられる。
眠そうな瞳をしており、肩まであるショートヘアと頭の上のアホ毛が特徴。
身長170cm
体重52kg
父親が漢らしく育ってほしいという思いから。
龍のごとく。高みを目指す志。龍志と名付けた。
皮肉なことに見た目はすっかり美人に育ってしまった。男である。
性格は父の影響故か、正義感が強く、そこそこ精神力が強い。
だが母親に似た部分もあり、容姿はもちろん
喧嘩や争いごとが苦手で怖がりなところがそっくりだそうだ。
家族は父と母、姉が2人と妹が2人いる。
高校を卒業後、家を出て音楽だけで食べていこうとする。
しかし挫折しフリーターとなり、東京で一人バイト暮らしをしていた。
ミア
7歳 ♀ 猫耳族
身長110cm
体重18kg
黒い髪のショートヘアに黒い猫耳と尻尾。
耳と尻尾の毛は先端だけ白い。
容姿は可愛らしく、瞳は吸い込まれそうなほど奇麗な赤色をしている。
初対面の相手には恥ずかしがり屋で警戒心が強いが、警戒を解けば元気で好奇心旺盛な女の子。