3話 ボッチーズ
今回は、1,2話で説明が多くなってしまったので、説明少なめになっています。
文字数も少なめになってしまいました。
楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
「ここだよ」小さい声でしかし、はっきりと悪戯っぽくその少女は俺に向かっていった。
声がした方を向くと俺のおでこに大きめのハンドガンの銃口があたった。彼女と一瞬目が合った。
その目は、とても冷静しかし情熱的な不思議な目だった。彼女は引き金に指を掛け引き金を1回引いた。
その瞬間俺は仰け反るように銃弾をかわしそのまま2,3回転ほどして倒れこむ。
一方彼女は空中で撃っていたらしく体勢を崩したが、華麗に1回転を決めるといともたやすく着地する。
俺は驚きすぎて軽いパニック状態になってしまった。落ち着こうとするが、
しっかりイメージできるほどにはならなかった。このままでは変身できない。上体を起こし、
剣を2本構えて時間を稼ぐことにした。どうか、攻撃してきませんように。しかし、神様に俺の願いは
届かなかったそうだ。彼女は、俺の心を読んだように俺にまっすぐ突撃してくる。
俺の目の前まで来ると右に1ステップフェイントを入れてから、左に跳ね左足でキックする。
それを俺は、辛うじて剣で上に弾き飛ばす。彼女は大きく体勢を崩した。わけではなかった、
軽く3回転しながら銃を3発撃って来る。1発が俺の右太ももを貫通した。
俺は透かさず腰のミニナイフを彼女に投げつける。見事腹部に命中した。彼女はミニナイフを抜くと、
俺に向かって走ってきた。俺はそれを横に切る。しかし、跳ねてよけられた。もう片方の剣で
縦にまっすぐ振り上げる。しかし、俺の目には驚くべき光景が映った。彼女は横に向けて銃を撃ち、
反動で剣をかわすという神業を見せた。そして後ろに大きく跳びながらもう一方の銃の照準を
俺に合わせた。発砲。銃弾が1発吐き出される。それをスライディングで潜り抜けながら、
彼女に向けて剣を突き出す。しかしそれは空を刺した。彼女は大きく後ろに跳ねるといったん距離をとり
キル数カウンターを見る。つられて俺も見る。全体の脱落者は197人。つまり残りは彼女と俺と
その他1名ということだ。彼女が巨木の端から下に飛び降りる。追いかけるように俺も跳び降りた。
彼女は、こちらに身を翻すと銃を撃つ。
それは俺の腹を貫いた。光が俺を包み始める。俺は最後の力を振り絞って剣を投げつける。
それは、彼女肩を切った。そして、光が彼女を包む。そのとき彼女は驚愕の表情を浮かべた。
彼女も光に包まれ、徐々に薄れていきそして消える、俺よりも少し後に。
目を開けるとそこはもうそこは、待機ロビーになっていた。彼女はいったい誰だったんだ。
戦いながらだったので、彼女のことはほとんど覚えていない。
ただ、1つだけ明確にわかったことがあった。それは、男子ではないことだ。
なぜなら、男子の待機ロビーには俺一人しかいなかったからだ。
奥のほうに『脱落した者から放課後活動に行くように』と書かれた張り紙があった。
この時代に張り紙をする人なんて杉田先生しかいない。せっかく生徒全員にスマホを配っているのだから
それを使えばいいのにと思うのは俺だけだろうか。スマホなんて昔からあるものなのに、
一向にそれに変わるものが出ない。昔は未来には便利なものがたくさんあると考えられていたが、
現実はそんなに甘くなかった。資源不足だの技術不足だのどで研究や開発が進まないのだ。
しかも、少子高齢化や研究職人口の減少などでさらに研究者、開発者も少ない状況だ。
そんな時に魔法が発見された。魔法は科学よりも簡単で自由に使えるのでとても便利だ。
そして、限界を感じた当時の人は科学から離れていった。
しかし、最近は両方を同時に使うハイブリットの研究が進められている。
最近はこれが研究の主なテーマらしい。
『テレン♪』スマホにメッセージが届いた。
【メッセージ】
from小宮 才子 to端下 拓斗
無題
食堂の1-A にケーキとココア奢るから来いください。
おそらくこれでも送り主は、丁寧に書いているつもりなんだろう。しかし、不完全な敬語のせいで
お願いされていることを一瞬忘れてしまいそうだ。というか、この人に1度も会ったことないし、
名前も知らない。こんなお願いいつもなら即NOと答える。しかも、女子だし、俺コミュ障だし。
しかし、ここにはケーキとココアを奢ると書いてある。いくべきかいかないべきか少しの間考えた末、
行くことにした。冷静に考えると話を聞けばケーキとココアをただでもらえるということだ。
断る理由が見つからなかった。俺は返信もせずに食堂へ今日2回目の全力ダッシュをした。
食堂に入ると一番奥の席に彼女は座っていた。茶髪のショートヘアで制服の上には空色のポンチョを
羽織っている。ポンチョからは先に宝石がついた紐を垂らしていた。ブレザーのスカートとリボンのみが
空色でその他は白を基調としている。頭には、布製のレモン色のカチューシャをつけている。
小柄で地面にやっと足がつくくらいだった。入学してきたばかりとはいえさすがにチビだ。
「おい、チビ。」なんと話しかけてよいのかわからず頭に思いついたのがこれだった。
これが、コミュ障の末路である。
「チビって何だよ、ぼくの事は才子って呼んでよ木偶の坊。」頬を膨らませて怒ったようにいう。
「サイコ?お前狂ってるのか?」少しふざけてさらに怒らせる発言をする。
「サイコパスじゃなくて、才子!天才の才に子供の子って書くの。」
「へぇ~」特に関心がないのでテキトウに返事をしておく。
「へぇ~って聞いてる?そんなことより本題!」思い出したように才子は言う。
「そういえば、話があるっていってたな。あと、奢るって…。」
「話が終わったら奢るからとりあえず座って」立ちながら話していた拓斗はあわてていすに座る。
「そんで、話って何だ?」座りなおして改めて聞く。
「ぼくとペアになってよ。」少し笑みを浮かべた自信満々な顔には、真剣さも感じられた。
「え?俺と、ペア?何言ってるの、やっぱりサイコ?」
「ちがう!本気、君とぼくでペアを作って、もっと人を集めて
団体競技全国で1番になるのどう、いいと思わない?」
こいつ、本当に俺と全国1番を目指すつもりなのか?初めてだな、こういうの。相手からチームに誘われるなんて、しかも自分を必要としてくれている。なんだか、うれしい。初めての感覚だ。
こいつとチーム組んで全国目指すのもいいかもな。
「わかった、その代わり本気で全国取りに行くぞ。」
「そうこなくっちゃ!」俺はこのとき何年ぶりに笑ったんだろう。
今、人生で1番楽しい、はっきりそういいきれる。
「それじゃあ、名前を決めようよ!」
「そうだな、どうしようか。とりあえず、ボッチとボッチだから。ボッチーズなんてどうだ?」
少しふざけて言ってみる。
「ボッチーズか、いいね。ぼくはいいと思うよ。」
ふざけていったつもりが意外と彼女は気に入ったようだ。まだ仮だしとりあえずはこれでいいか。
「そうだな、また人が増えてから変えてもいいしな。」
「そうだね、それじゃあこれからよろしく!」最高の笑顔で言う。
「あぁ!よろしく!」つられて俺も笑顔になる。
これから、先どんなことが待っているかはわからない。
だけど、根拠はないが彼女とならどんなことがあっても乗り越えていける気がする。
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≪今回の裏設定≫
蒼穹中学校の制服についてです。
男女共にブレザーで白を基調としたもので
女子はスカートとリボン、男子はネクタイが空色になっている。
空をモチーフにしている。
蒼穹中の飛行能力にちなんで空がテーマの制服になっています。